ゴルフトーナメントがなければ、ゴルフカメラマンの仕事もない
先月末、2020年の「マスターズ」のプレス駐車券がアメリカから届きました。既に大会延期のアナウンスがされていて、追って11月12日に初日が開催されるという予定が出されました。国内男子ツアーの「三井住友VISA太平洋マスターズ」の週、「ダンロップフェニックス」の前週です。この日程も、まだどうなるか予断を許しません。
改めて、新型コロナウイルスの蔓延がここまで私たちゴルフカメラマンにも影響が及ぶとは、考えてもみませんでした。国内のみならず海外も含めたすべてのゴルフトーナメントが中止や延期に追い込まれていて、それはゴルフカメラマンの仕事が失われることを意味していたのです。
ゴルフトーナメントに限らず、感染を防ぐため、人と会わない、会ってはいけないという事態は被写体を撮ることを生業としている身としては、どうにもこうにも手も足も出ない状態です。現場に立つ、その場にいることが絶対条件のカメラマンは、盛んに推奨されているテレワークともっとも距離のある仕事のうちのひとつでしょう。
そんななか、4月第2週、つまり例年ならばマスターズウィークと呼ばれる1週間が終わり、月曜日を迎えました。去年まではマスターズ最終日を撮り終えて、一年で一番ホッとできる日です。
この月曜日は、起きたらまず宿舎の周り2マイル位(アメリカにいる時は道路標識に従ってマイルで距離を考えてます。なんてね。1マイル=1,6km)ジョギングし、それから荷造りを始めます。オーガスタからアトランタのホテルまでは150マイル余り。10日前、今年はどんな展開になるのか期待と不安な気持ちで逆光眩しい20号線を西へ西へとオーガスタの街に向かっていたのと真逆で、ずっと順光の日差しの中どこまでも真っすぐな道をひた走ります。そして翌朝レンタカーを返してアトランタ空港から帰国の途につくのです。新型コロナウイルスがなければ今頃は……と思わず考えてしまいます。
例年、マスターズ から帰ってくると桜は葉桜になっていて、冬の気配も遠くなって春本番。ゴルフツアーは国内男子初戦「東建コーポレーションカップ」が始まります。女子ツアーは7戦目、熊本の「KKT杯バンテリンレディス」です。それらの試合も、今年はずいぶん前に中止が決まっています。
我々同様にゴルフの現場でしか仕事が成り立たない多くのプロゴルファー、プロキャディ、小規模な運営会社など、大変な人は多いと思います。気が滅入ってしまいがちですし、今が夜中の何時かは分からないのが問題ですが、明けない夜はない。ともに生き抜きましょう。そう伝えたいと思います。
先月末送られてきたマスターズの駐車券。11月のその週がやってくるまで、しっかりとデスクの引き出しに保存しておきたいと思います。
写真/姉崎正