ゲーリー・プレーヤーは始球式でドライバーを1球打つためにパターまで練習する
「マスターズが延期になって、3つ恋しいものがあります。それはマグノリアレーンをドライブできないこと、チャンピオンズディナー、パー3コンテスト」
人生で初めてマグノリアレーンをドライブして、クラブハウスに到着した時はとても特別だったというが、それは99年にアマチュアで出場した時のこと。それ以来、何度ドライブしてもその特別感は変わらないのだという。
また、2008年にマスターズで優勝したイメルマンは、かれこれ10年以上、火曜日の夜にクラブハウスで行われるチャンピオンズディナーに出席しているが、「僕が5歳で南アフリカでゴルフを始めた時にアイドルやヒーローだった人たちと、とてもフランクな雰囲気でその場を共有できるということは何にも変えがたい喜び」だという。
南アの英雄であり、世界のパイオニアゴルファーであるゲーリー・プレーヤーとは幼い頃から面識があり、一緒にゴルフもした仲で、彼にとって最も人生にインパクトを与えた人物だそうだが、チャンピオンズディナーの中でも重要な役割を果たしているという。
彼は世界各国を飛び回って転戦し、グランドスラムを達成した第一人者であり、転戦中のエピソードに事欠かない。私も彼の過去のエピソードなどは何度も聞かせてもらったことがあるが、話題も豊富で話がつきない楽しい人である。もちろん私はチャンピオンズディナーには出席したことはないが、おそらく彼はディナー会場のムードメーカーとなって、おかしな昔話などを披露し、皆で爆笑しているのだろう。そんな彼を祖国の師匠に持ち、さぞかしイメルマンも居心地がいいに違いない。プレーヤーのようなレジェンドがひとたび何かを語り始めると、皆、シーンと静まり返ってレジェンドの話に耳を傾けるのだという。
ゲーリー・プレーヤーといえば、木曜日の早朝にジャック・ニクラスと始球式をするのが恒例となっているが、イメルマンはこのレジェンド二人の練習風景にもそれぞれの性格が表れているという。
「ゲーリーは、たった1発のティショットを打つだけなのに、キャディバッグごと持ってきて、ウェッジ、ショートアイアン、ミドルアイアン……とすべてのクラブを打つんですよ。しかもパットまでやりますからね。きっと彼は競技モードにスイッチが入って、昔やっていたルーティーン通りにしないと気が済まないんでしょうね。僕にしてみたら、そういう姿をまた見ることができてすごく特別な思いがするんだけど、ワールドクラスのアスリートのマインドにギアが入ると年齢は関係なく、こうして競技モードに戻れるってことなんですね」
一方、ジャック・ニクラスはとてもリラックスしながら、他の選手たちとおしゃべりしたり、すごく気楽にやっているのだという。
「5〜6球打ったらティに向かうんです。僕は自分のスタートに備えて練習しながら、彼らの動きを見てましたけど、そういうシーンを見るのも、そして始球式を見るのも最高ですね」
マスターズは、こうしたレジェンドたちがパー3コンテストや始球式でショットする姿を見ることができる唯一の大会。11月に延期が決まったが、コロナウイルスがそれまでに終息し、予定通りに開催されることを世界中のゴルファーが待ち望んでいる。