米国選抜と世界選抜のチーム戦「プレジデンツカップ」。その2021年大会の世界選抜キャプテンが、2008年のマスターズ覇者トレバー・イメルマンに決まった。丸山茂樹が大活躍して勝利を収めて以来、21年間勝ちのない世界選抜を勝利に導くためにイメルマンがやろうとしていることを、昨年のプレジデンツカップを取材したエディター・大泉英子がレポート。

トレバー・イメルマンがエルスからのバトンを受け取った

2021年9月、クエールホローで開催されるプレジデンツカップの世界選抜チームのキャプテンが決定した。南アフリカ出身で、2008年のマスターズチャンピオンのトレバー・イメルマンだ。彼は昨年末に40歳を迎えたばかりで、史上最年少のプレジデンツカップ・キャプテンとなるが、2019年12月にロイヤル・メルボルンで行われたプレジデンツカップでは、尊敬する先輩であり、親友のアーニー・エルスキャプテンを支えるアシスタントキャプテンを務めた。

画像: トレバー・イメルマンがエルスからのバトンを受け取った

「言葉に言い表せないほど、嬉しいですね。今回キャプテンに就任したことはとても光栄であり、ワクワクしています。2017年にはジュニア・プレジデンツカップのキャプテンも務め、2019年にはアーニー(・エルス)のリーダーシップの下、チームの一員になりましたが、アーニーがチームのために作り上げ、残してくれたものやプラットフォームを受け継いで、21年のクエールホローで優勝争いができるようにしたいですね」

昨年末にオーストラリアのロイヤル・メルボルンGCで行われたプレジデンツカップでは、世界選抜チームのキャプテンをアーニー・エルスが務めたが、3日目までは米国選抜を抑えてリードするという、今までにない展開に持ち込むことができた。同じ国籍同士とか、仲良し同士を組ませるという曖昧なものではなく、徹底的に選手たちのデータを重視して、組み合わせや対戦相手を誰にするかを割り出していたのだ。

画像: 2019年に開催されたプレジデンツカップでは世界選抜チームのキャプテンを務めたアーニー・エルス(写真は2019年の全米オープン 撮影/有原裕晶)

2019年に開催されたプレジデンツカップでは世界選抜チームのキャプテンを務めたアーニー・エルス(写真は2019年の全米オープン 撮影/有原裕晶)

そしてもう一つ、今までの世界選抜には欠けていた大事な部分をエルスは埋めようと努力した。チーム内の雰囲気作りである。

同じ言語を話す者同士が団結し、国の威信をかけて戦う米国選抜に対し、世界選抜はオーストラリア、南アフリカ、アジア、カナダ、南米など5カ国以上の、言語も違えば文化も違う選手たちがたった1週間だけ行動を共にして、チーム一丸となって戦わなければならないという大きなハンデがある。しかも米国はライダーカップもあるので、こうした戦いを毎年経験し、フォーマットに慣れている、という点も有利だ。それでもたった1度だけ、98年にロイヤル・メルボルンで行われたプレジデンツカップだけは丸山茂樹の5戦5勝という大活躍もあり、優勝することができたが、あれから21年経っても、いまだ2勝目を挙げることができていない。そこでエルスが苦心して前回作り出したのが、「家族のふれあい」のようなものだった。

「アーニーは、自分たちが同じ家族であるというような雰囲気を作り出す必要があると決意したんです。僕たちも何年にも渡って、何かが欠けているなとは感じてたんですが、7〜9カ国という文化、言語の違う選手たちが克服するにはとても大きすぎるハードルでした。しかもこのプレジデンツカップの1週間だけですからね。だから、前回大会ではお互いをよく知り、なじめるよう、時間をかけて努力したんです。彼は本当に彼なりのやり方で1つのグループにしようと頑張っていました」

イメルマンたちはそういうエルスの姿ややり方を見て学び、自分たち自身、個々の選手たちをもっと理解することができるようになったという。

確かに前回の世界選抜チームは、取材者の私が見ていても今までの雰囲気とは違うものが感じられた。一方の米国選抜はタイガー・ウッズがプレーイングキャプテンで、自分のプレー中はスティーブ・ストリッカーらアシスタントキャプテンたちがキャプテン代理を務めていたので、さほどタイガーのキャプテンらしい行動を見ることはなかったが、エルスはチームメンバーに積極的に声をかけ、励まし、若手揃いの世界選抜チームの父親的な存在としてチームをまとめていた。

イム・ソンジェ、CT・パンら初出場の選手たちも、エルスのアドバイスや指示に従い、自分の仕事をきっちりこなすことに集中していたからこそ、3日目までのリードが可能だったのだろう。エルスの決意を皆が真剣に理解し、一丸となって次々にポイントを獲得できていくプロセスの中で、21年間勝利のない世界選抜チームも「自分たちもやれる、勝てる」という自信を取り戻していけたのかもしれない。

画像: 世界選抜チームのエルス主将らが見つめるなか、アイアンショットを放つ松山英樹。

世界選抜チームのエルス主将らが見つめるなか、アイアンショットを放つ松山英樹。

イメルマンはこれを「アメイジング・ケミストリー」と表現し、チームのみんなも感じていたはずだ、と語った。エルスはチームに必要なこのケミストリーを作り出すため、米国のような1つの国旗がない代わりに自分たちのアイデンティティを示すロゴマークを自分たちで作るなど、手本を示したわけである。

「僕はアーニーからたくさんのことを学びました。彼がやったことを僕が同じようにできるかと言われれば、たぶんできないと思うけど….彼は普段あまり多くを語らないタイプで、その場の雰囲気に任せるようなところがありますが、彼が皆に話したことはとてもインパクトがあった。背の高い彼のオーラ、存在感から皆も彼の強さや感情を感じとったと思います。彼の後釜として、期待に応えないといけませんね」

「選手やキャディ、チームに関わる皆にとって、もっとも大事なことは、いつでも僕がついているということを知ってもらうこと」だとイメルマン。エルスほどのカリスマ性やオーラはないかもしれないが、ここ最近、TV解説で培った客観的に物事を見る力や、親しみやすさ、データ解析力、そしてエルスが示してくれた教えを武器に世界選抜を勝利に導いてもらいたいと願う。

画像: ラウンド前の5分で飛距離が伸びる!足首と股関節の使いかた【原田修平プロ×秋山真凜】 www.youtube.com

ラウンド前の5分で飛距離が伸びる!足首と股関節の使いかた【原田修平プロ×秋山真凜】

www.youtube.com

This article is a sponsored article by
''.