「とくに緊急事態宣言が出された自治体にお住いのゴルファーに質問。今後、ゴールデンウィークにかけてゴルフ場に行く予定がありますか?」
そう問いかけたアンケートには、付随して他にいくつかの問いを重ねていた。そのうちのひとつが、
「ゴルフに行く場合、プレースタイルは?」というものだ。選択肢は3つ。「普段通り」「スループレー中心にする」「9ホールなど短縮プレー中心にする」だった。
そのうち、もっとも回答が多かったのはスループレー中心にする、というもので、本記事執筆時点で6752人が選択し、全体の51.1%を占めた。
これはもちろんコース側がプレーヤー間の接触や施設利用が減る、すなわち感染リスクが減ることが期待されるスループレーを推奨しているということも大きな理由だろう(ちなみに『普段通り』という回答は6108票で全体の46.2%)。それでも、過半数のゴルファーがスループレーを中心にするという回答をしていることは、コロナ禍をきっかけに日本のゴルファーのプレースタイルが変化することを予感させる。
昼休憩のある18ホールのプレーを好むと言われる日本人ゴルファーだが、昼休憩のない(あるいは、あっても茶店やカートで軽食を取る程度の)スループレーへの抵抗感は少ないことがこのことからある程度見える。ネットの声を見ても、「今回のコロナ禍以降、スループレーがもっと広まってほしい」という意見が多くあった。北海道や沖縄、あるいは海外では一般的なように、スループレーのゴルフを待ち望む声は確実にある。
一方で、もうひとつの選択肢、「9ホールなどの短縮プレー中心にする」という回答は極めて少なく、わずか339票、全体の2.5%に過ぎなかった。
昨年日本で開催された全米ゴルフ協会(USGA)主催のシンポジウムでは、「高い・遠い・時間がかかる」が日本に限らず世界中でゴルフへの参入障壁になっているとされ、その対策が論じられた。「
何万円もするゴルフギアを購入しなければならない」「ツアープロのような服装をしなければならない」「行くのに時間がかかる」ゴルフをしない理由をそう挙げたのが日本の若者ではなくスコット
ランドの若者だという話は非常に印象的だ。
シンポジウムでは、「高い・遠い・時間がかかる」の反対、すなわち「安・近・短」を実現する切り札として期待されるのが9ホールプレーだとし、それを推奨するべくUSGAでは「PLAY9」という、要するにもっと9ホールプレーしようよ! という呼びかけをしているし、フランスではゴルフ協会が旗を振ってショートコースを10年間で100コース建設するという目標を立てているという事例が紹介されていた。ゴルフの総本山、R&Aは残念ながら今年は新型コロナウイルスの影響で中止となってしまったが9ホールの試合を実施している。
もちろん昼休憩のある18ホールプレーが悪いということはない。ゴルフ場は工夫を凝らしておいしい食事を提供してくれるし、その味の記憶がゴルフの大切な思い出になることは多い。そして、初対面の人とプレーすることもあるゴルフでは、昼休憩の時間は親交を深めるのに一役買うケースが多い。仲間内ならば楽しい談笑の時間となる。
ただ一方で、それは時間がかかるし、ランチ代もかかる。スループレーであれば昼休み分の時間と昼食分の費用が削減でき、9ホールのプレーならばさらに9ホール分のプレーフィと時間を節約できる。なんでもかんでも節約できればいいというものではもちろんないが、そのほうがライフスタイルにフィットするというゴルファーもいるはず。とはいえ一方で、とくに都市部のゴルファーが早起きして100キロ運転して9ホールで帰るのはもったいないと思うのも無理はない。
とはいえ、新型コロナウイルスの影響が拡大するなかで、18ホールのスループレーは過半数のゴルファーにすんなりと受け入れられていることがアンケートからは見えている。今のこの状況下でも9ホールのプレーを中心にするという人は2.5%に過ぎないが、それはより気軽で、よりカジュアルにゴルフを楽しむ選択肢となり得る。
今回のコロナ禍が過ぎ去ったあと、日本のゴルフ環境にはなにか変化が起きるのか。引き続き、状況を注視したい。
写真/三木崇徳