リランキングは? シードは? 先が見えない中、トレーニングを重ねる
「いつ開催できるかわからないことや、収入に対しての不安はあります。ただ開催したとしても最初のほうの試合は選手の人数も100人近くいるだろうし、キャディさんも入れたらその倍ですし、なかなか難しいのかなと思いますね。今すぐ試合というよりはこの状況が回復してから安全な状態で落ち着いて試合がしたいです」
そう自身の心境を話してくれた田中瑞希。田中は渋野日向子と同じ1998年生まれの、いわゆる黄金世代。昨年プロテスト合格を果たし、年末のQTを上位に通過して、2020年はリランキング(シーズン途中の成績で、その後の出場権を決める制度。シード権を持たない選手が対象となる)上位突破、シード獲得、初優勝を目指すシーズンとなる……はずだった。
スポーツ選手だから成績の浮き沈みはつきもの。しかし、試合そのものが開催されないことなど、誰も想定に入れるわけがない。完全なる想定外の状況を強いられるなか、それでもいつか開催される試合に向けて練習を積み重ねているわけだが、トーナメントは次々と中止が決まり、開幕時期はいまも不透明。
「今は正直、あまりモチベーションがないですね。練習場やゴルフ場に行ってもただ球を打っているだけ、ラウンドするだけになっているんです。状況的にもどこかに行って練習もできないので、今はオフとかにやってきたことを落ちないように地道にトレーニングや走ったりして保って、自分の弱い部分をこの期間に極めて、いつから開催ってわかったときにモチベーションを持っていけるようにしたいです」
試合のない日々、それもいつ始まるかわからない中で、モチベーションを高く保ち続けるのは難しい。だからこそ、ただひたすら地道なトレーニングをこなしているという。田中の地元・熊本県には緊急事態宣言が発令されていないが、やはり自粛モードとなっており、自宅で過ごす時間が増えているのを「家で料理してストレス発散している」という。
いつから試合がはじまるか。それは本当にわからない。ツアープロたちへの試合中止のアナウンスも、試合中止のネットニュースが流れる直前に協会からメールが届くそうで、ギリギリにならないと試合があるのかどうかもわからない状況だ。
また田中の場合、試合がいつ開幕するのかわからないこと以外にも不安を抱えている。そのひとつがQTで得た出場権は一体どうなってしまうのかということだ。
「本当に出場権がどうなるのかが全然わかんないんですよね。リランキングもなくなるのか、シード権もどうなるのか知りたいです。QT組の自分としては(QTで得た)出場権が1年持ち越しになってくれたり、何らかの特権? みたいなのがあると嬉しいですよね」
疑問があれば協会とは連絡がとれるようになっているようだが、正式な発表はまだないそうだ。新型コロナウイルスの影響がどこまで拡大し、どこで収束するのかが分からないなかでは、なにかを決めるのも難しいに違いない。田中自身、今年は試合ができないかもしれない、そんな気にもなっているようだ。ただ、いつになるかは分からないが、仮にシーズンが開幕した場合は通常より短いシーズンとなる。それについて田中は「チャンスがある」と語る。
「短いシーズンだからこそ、誰でもチャンスがあるのかなと思います。去年も初優勝者がいたように、初優勝したら可能性あるんじゃないかなと思うので頑張りたいです。そこはワクワクするし短期決戦なら短期決戦で面白いなと思いますし、チャンスがあるとしか思っていないです!」
試合が少なくなるのは寂しいものの、短いシーズンとなったら「そこに集中できる」のだという。
「ファンの方が元気を貰えるようなプレーできるように、少しでも上達した姿を見せれるように頑張りたい」と再び練習へ向かった田中瑞希。開幕された女子ツアーで輝くプレーする彼女を見れるの心待ちにしている。
すでに12試合少なくなることが決まっている女子ツアー。果たして2020年シーズンはいつ開幕するのか。そもそも、開幕できるのか。女子プロたちは、不安な日々の中にも希望を忘れず、開幕の日を虎視眈々と待っている。
写真/大澤進二