「腰に棒をつけるプロ」が増加中
昨年から試合会場の練習場でよく見かけるのが、プロが腰に棒をつけて練習する姿。アメリカのツアーでいえば、パドレイグ・ハリントンやダニー・リーなどがやっていて、日本のツアーでは石川遼や宮本勝昌、藤田寛之、中西直人らが練習に取り入れているのはおなじみだ。
みなパンツのベルトループに細い棒を差して、棒の先を見ながらシャドースウィングし、体の細かい動きをチェックしているのだ。いったいどのようにチェックしているのか?そしてどんな効果があるのか?
2月にメキシコで行われたWGCメキシコ選手権の試合会場で石川遼がまさにその棒を腰につけて練習していたので、本人にやり方や効能を聞いてみました。
「棒を付けてスウィングするドリルは昨シーズンより試していて、実際にこれをやってから調子が上がってきています。腰が止まって手先で打ってしまうのが僕の悪い癖なんですが、本来はしっかりバックスウィングで腰を右に回し、切り返し以降は腰を目いっぱい左に回していきたい。腰の動きを使って下半身の動きで球をつかまえることで、ヘッドの入りが安定してくるというイメージです。やっぱり手先で球をつかまえているうちは再現性が低いですからね」(石川)
なるほど。では棒をどのタイミングで見ているんですか?
「特にトップの位置で見ていますね。腰の回転量の目安になっていて、バックスウィングで右腰が回っていれば、腰につけた棒が体の左側に見えますから」(石川)
そうか、フォローだけでなく、バックスウィングでも腰の棒の向きもチェックしていたのか。では、続けて切り返し以降の下半身の動きを、もう少し具体的に教えてもらいましょう。
「バックスウィングで腰を右に回したら、切り返しで左足をグッと踏み込んで、腰を回転させ、左足を回し上げます。僕はその〝踏む動き〟が課題で、腰の棒が切り返しで下向きなるようなイメージで練習しています。腰をただ後ろ側に回すのではなく、一瞬沈み込むような動きが入る。この動きがあるとないとでは、パワーの伝わり方も、スウィングの再現性も大違いなんです」(石川)
本人が言及するように、実際に腰に棒をつけたままの石川遼のスウィングを見てみると、切り返しでいったん棒が左下向きになって沈み込んでいるのがよくわかる。ただ単に、腰を回すだけではダメなのか。以前、同じような練習をしていたパドレイグ・ハリントンに話を聞いたときも、ダウンスウィングではベルトのバックルを下向きに保ったまま腰を回転すると言っていたのを思い出した。
いま、世界の主流のスウィングは、左足で踏んで、そのあと腰を回し上げる感覚なんだろうなぁ…。
なんでも棒をつけていると、切り返しでうまく踏めなかったり、スウェイしたりすると、棒が早くから浮いてきたり、棒が飛球線に流れたりしてミスの傾向がいち早くわかるみたい。
下半身で球をつかまえるというこの感覚、なかなか難しそうだけど、僕らアマチュアは手打ちになりやすいから、一度試す価値はありそうだよね。腰に棒をつけたシャドースウィングなら家の中でもできそうだし、皆さんも鏡を見ながら腰の動きをチェックしてみてはいかがですか?
撮影/姉﨑正
*2020年月刊ゴルフダイジェスト5月号より抜粋