スピードゾーン、TR20、オノフAKA RD5900も“フレーム型ボディ”を採用
新型コロナウィルス禍で大変な状況ではあるが、プロギアから「エッグ エクストリーム」という新しいドライバーが発売になる。昨年発売された「エッグ 5500」の追加モデルで、左右MOI5750g・cm2、上下MOI3950g・cm2と、慣性モーメントを市場最大級に大きく拡大。“エクストリーム”という名にふさわしい、特徴のある性能に仕上がっている。
注目したいのは、その性能を実現するために採用された複雑なヘッド構造だ。ボディ部分は大きく軽量化され、前後に軽量のCFRP素材、後方にはタングステン合金のウェイトを採用し、フェース部は溶接で作られる5ピース構造になっている。ボディ部は、ボディというよりもフレームとよんだほうが良さそうだ。骨組みのように空間を大きく設ける形状になっている。
実は2020年新モデルの多くが、こうした構造を採用している。ボディとなるフレーム部分は面積が小さくなり、各部を構成するパーツ数が非常に多いヘッドだ。このところ発売されたモデルだけで、コブラ「スピードゾーン」、本間「TR20」、グローブライド「オノフ赤 RD5900」といくつものドライバーが、それぞれ違いはあるにせよ、こうした特徴を持っている。
改めて、ドライバーのヘッド構造をおさらいしておくと、現在のほとんどのモデルが、ボディは鋳造、フェースは圧延で作って、溶接して製造されている。ボディとフェースで製法が違う理由は、ボディ部は精度が上がり削り代がすくなくなるため、フェースは反発を向上させるためで、同じチタンでも異なる材質を使うことも少なくない。
フェースの製法としては、設計に近い精度で作りやすいカップフェースのほうが有利と言われている。一時はかなり流行したカップフェースだが、最近では「ゼクシオ」など、一部のモデルを除くと、あまり採用されなくなってしまった。
これは、他の方法で反発性能を上げることが出来ていることもあるが、クラウン等にカーボン素材を使うヘッドが増えたからだろう。カーボンを接合するには、接着するためボディ部分に受けの部分を設ける必要がある。一方、カップフェースの場合は、フェース部分がクラウンやソールまであるので、それら両方を採用すると、溶接や接着しろを設けるのに、設計がシビアになるのだ。そんなわけで、現在はフェースの打面部分を溶接して、カップフェースを採用しないのがポピュラーだ。これは今後変わることもありえるだろう。
さて、「エッグ エクストリーム」のような複雑なヘッド構造にすると、どういう特徴があるだろうか。まず、比重の軽いカーボンやタングステンなどの重いウェイトをより大きく使うことができる。そのため、重量配分をより大胆に出来るのがメリットだ。2020年モデルは、より後方に重量を配分して、慣性モーメントを大きく、寛容性を高めているケースが多いようだ。
かつては、カーボンなどの異素材を採用すると、打感・打音が悪くなっていたが、現代のドライバーはどれもさほど気にならず、いい手応えがある。フルチタンで作られたヘッドとは違う、異素材の混じった打感が感じられるものもあるが、これは良し悪しの話ではなく、それぞれの特徴と理解したほうが良さそうだ。
プロや有識者は、見た目の形状とヘッドの特性が一致しないのを嫌う傾向がある。彼らのレベルになると、ヘッドを見た瞬間に重心の位置を感じ取り、クラブの性能もなんとなく予測できてしまう。それがこれだけ大胆なヘッド構造になると、今まで以上に、見た目と性能が合致しない場合が今後出てくる可能性もありそうだ。現に、史上最長レベルに重心距離が長く、重心距離が深いモデルも登場してきていて、今までの常識で測れないことも起きそうな気配がある。
数年前から、カーボンクラウンを採用したドライバーが大流行し、カーボンクラウンにあらずんばドライバーにあらず、といえるほどだったが、今後は、こうした「多パーツ複合ヘッド」が流行するだろう。メーカーからすれば、開発の自由度が高まり、いろいろな性能を出しやすくなるからだ。一方、トータルのクラブとしてまとめ上げるのが、今よりも難しくなることもあるだろう。