6月2週再開は「すべての理想的条件が整ったら」
井上透(以下、井上):PGAツアーが6月第2週の再開に向けて取り組んでいるという情報が入ってきました。現地では、前向きな情報ととらえていますか?
レックス倉本(以下、倉本):前向きにとらえようとみんなしていますけど、冷めた目で見ながら、厳しいのではという見方をする人が大半ですね。3月のザ・プレーヤーズ選手権の2日目に中止になったじゃないですか。その後すぐPGAツアーのその後の試合がキャンセルになって、チャールズシュワブチャレンジ(5月21日開幕)での再開を目処にスケジュール作りましたよね。そうすると今が4月の17日なので、1か月前。1か月前になったら(米国籍以外の)インターナショナルプレーヤーを世界中からアメリカに呼び戻して、2週間は自宅待機しなきゃいけないじゃないですか。それで、2週間で選手たちが練習して、(感染防止を確認して)試合に臨むことを考えたら1か月必要なんですよ。1か月っていうのが次のトーナメントの開催を決めるデッドライン。
ちょうど昨日、1カ月後(5月)に試合が始まる予定だったけど、今度また1カ月、4週間後(6月)に伸ばして、新しいスケジュールを発表したという事情なんですね。チャールズシュワブは6月の第2週かな。その4週間前ぐらいに本当に試合が再開できると判断できればそれはいいとして、厳しいとなったら新しいトーナメントのスケジュールを発表するんじゃないのかなっていうのが、僕の私見ですし、僕の周りのエキスパートの私見でもあるっていう感じでしょうか。
井上:インターナショナルプレーヤーに対してそれだけの猶予を与えないと、アンフェアというか、ツアーが開催できないということを含めての対応ということですね。
倉本:それが一番です。PGAツアーはオペレーション(運営)側がいたり、営業マンもいたり、チームワークでします。スケジュールを管理するのはオペレーション側になると思うんですけど、できる限り最高のシナリオのスケジュールを発表するのが彼等の仕事だと思うんですよね。
発表した後にその試合ができるできないっていうのを決めるのも、また違う立場の人が決めると思いますし、そういう意味でも、自分たちが置かれてる責任の下でこのスケジュールが今だったら最善です、ということを発表しているだけのことじゃないんでしょうかね。
井上:なるほど。記事によるとPCR検査に関して、前向きに取り組んでいるとありました。アメリカのPCR検査は、身の回りで一般的に行われてるのでしょうか? たとえば倉本さんの身の回りで検査は簡単に受けられるものなのですか?
倉本:そうですね。近くの大きな病院で受けられるところもありますし、近くの会議場の駐車場を利用して(検査場を)作ってるとこもあります。ドライブスルーで問診を受けてから、必要であれば検査することになります。
井上:なるほど、そういった検査体制なんですね。ツアー再開に向けて、検査体制がしっかりしていないと、簡単にはできないかもしれないですよね
倉本:そうなんですよ。たとえばメジャーリーガーの球団すべてをアリゾナのウィンターキャンプをやる場所に集めて、無観客で試合を始めようかっていう話も一瞬出たんですよね。どうして一つの場所に集めたかっていうのは、ひとつの場所にみんなが集まったら、試合会場を移動しなくて済むでしょ。感染する・されるリスクも少なくなるから。
(ゴルフでも)そこにいる人だけの検査をして健康な人だけが集まって、無観客でやったらできるんじゃないのかって言う意見も一瞬出たんですよ。ちょっと厳しいみたいでダメだったんですけどね……。それの大きな要因はPGAツアーの場合は、各地を転々とするじゃないですか。その大きなハードルが、他のスポーツに比べてPGAツアーの場合は僕はあると思うんですよね。
だから今は、すべての理想的な条件が整ったらこの時期に再開できるかな、というスケジュールを組んでると思うんですけどね。(実際は、6月第2週の再開は)厳しいんじゃないのかなと思いますね。
井上:やっぱり厳しい状況だと分かりました。しかし、PGAツアーが6月2週に再開を目標に動いていると聞いて僕らはすごく頼もしく、嬉しく思っていました。どこかでメドをつけて、日本ゴルフ界も動かなければいけないし、PGAツアーが方法論を示してくれると、日本ツアーも再開に向けて舵を切りやすいのかなと。応援したい気持ちでいっぱいですね。
倉本:そうですよね。どこかで決断して、試合を再開しましょうというタイミングが来るとは思います。先日発表した(6月2週目再開の)スケジュールも、すべての好条件が整ったときには決行されますし、暫定的なプランですけど、しかし再開できるように準備だけはして収束するのを待っています。
(インタビューは、井上の公式YouTubeチャンネル『井上透ゴルフ大学』で実施したものを採録)