ミケルソンとステンソンの死闘の舞台
2016年の「全英オープン」といえば、最終日の最終組でプレーしたフィル・ミケルソンとヘンリク・ステンソンの死闘。最後までどちらに女神が微笑むかわからない二人のデッドヒートを覚えている方も多いのではないだろうか。
ミケルソンは1イーグル4バーディと追い上げるなか、ステンソンが10バーディ2ボギーの63と振り切り、メジャー初優勝を手に。そのロイヤルトゥルーンGCの難ホールで有名な8番パー3。123ヤードと短いながらも小さなグリーンとポットバンカー、風次第では難易度は計り知れない。
ホールを見てみると、グリーン奥には海が見え、起伏はあるものの風をさえぎるような地形ではない。軽い打ち下ろしで右手前、左横と左奥にはポットバンカーが見え、右サイドはグリーンを外すと高低差がありその下には深いラフが待っている。
当時出場した宮里優作は初日にこのホールで風の読みを間違えて「7」を叩き、それが響いて予選落ちを喫した。現地で取材した週刊ゴルフダイジェストの特派記者に話を聞くと、名手たちの放ったボールが3つのバンカーに吸い込まれるように入るのを間近で見て、その難しさを感じたという。
さて、距離は123ヤードで打ち下ろしは5ヤード、ピンは真ん中左サイド。風は軽いアゲンストとします。果たしてこのホール、どう攻めるのが正解だろうかか?
ピンまで123ヤード写真の状況をどう攻める?
正解は、「大きめのクラブを持ちセンター狙いで123ヤード打つ」。
なぜこの答えが正解なのか。出題したプロゴルファー・中村修は、「この状況で気をつけなくてはならないのは“スピン量”です」という。
「重要なのは風に影響されにくい弾道を打つことです。123ヤードと距離は短くショートアイアンを選択する場合は、しっかり打てば打つほどスピンが入り過ぎてキャリーが足りなくなったり大きく風の影響を受けることにつながります。いかにスピン量をコントロールするかが風のあるコンディションでは大切になります。従って大きめの番手でセンター狙いで123ヤード打つが正解になります」(中村)
また、ピン奥や左には難しいバンカーが持ち構えており、飛び過ぎるとパーは難しくなる。風が軽くアゲンストだが、打ち下ろしなので相殺されると考え、センター狙いでピン手前でもOKと割り切り、ピンよりも奥には行かないように打っていくのがセオリーだ。とはいえ、「大きめの番手で軽く打つ」は難しいような気がするが……。
「軽く打つとダフったり引っかけたりする人は、常にフルショットで狙うことがクセになっているのではないでしょうか。短く持って振る、スタンスを狭くするなど自分なりの距離の調整方法を身につけておくと風の吹くコンディションでのスコアメークに役立ちますよ」(中村)
風のある状況では、大きめの番手で打てばそれだけで打ち出しは低く、スピンは少なくなる。その上で飛びすぎないように軽く打つテクニックは、様々な状況で有効だ。普段の練習から、軽く打つ練習をしておくのはいいことだろう。
風のあるコンディションほどクラブ選択を含めたマネジメントが肝心だ。新型コロナウイルスの影響で、開催が危ぶまれる「全英女子オープン」だが、無事に開催されて、ディフェンディングチャンピオンの渋野日向子が難ホール「ポステージスタンプ」を攻略する姿を見せてもらいたいものだ。