ゴルフの科学者とも呼ばれ、“奇人”として紹介されることも多いブライソン・デシャンボーだが、実は肉体改造を行い中止中のPGAツアーで現在飛距離ランク1位に位置している。いったいなにがあった!? 在米ゴルフジャーナリストアンディ和田のレポートをお届け。

“科学者”から“飛ばし屋”に変身

今シーズンのPGAツアードライビングディスタンス部門に異変が起きています。昨年秋からスタートしてまだ22試合が成立していませんが、トップにいるのは「ゴルフの科学者」と呼ばれるブライソン・デシャンボーです。

画像: 2020シーズンのPGAツアーで飛距離ナンバー1に躍り出たB・デシャンボー(写真は2020年WGCメキシコ選手権 写真/姉崎正)

2020シーズンのPGAツアーで飛距離ナンバー1に躍り出たB・デシャンボー(写真は2020年WGCメキシコ選手権 写真/姉崎正)

今シーズンは平均321.3ヤードでロリー・マキロイ(320.2Y)やキャメロン・チャンプ(319.8Y)を上回っています。デシャンボーの過去の飛距離ランクの順位と平均飛距離は以下のようになっています。

2019年 34位(302.5ヤード)
2018年 25位(305.7ヤード)
2017年 45位(299.4ヤード)
2016年 63位(294.6ヤード)

デシャンボーというとPGAツアー通のゴルフファンならご存じの通り個性派の選手。ワンレングスのアイアンを駆使してノーコック&ワンプレーン打法でツアー5勝してる26歳。 これまではスウィングの再現性を高め、正しい距離を打つ事によってスコアをまとめてくるタイプでしたが、今シーズンになって「飛ばし」を追求するようになってきています。

中東開催でディフェンディングチャンピオンとして臨んだ欧州ツアー「オメガデザートクラシック」では375ヤードドライブを放ちヘンリク・ステンソンを70ヤードアウトドライブ。タイガー・ウッズがホストを務めた「ジャネシスインビテーショナル」でも350ヤード級のティショットを放ち5位フィニッシュを果たしています。

ヘッドスピード、ボール初速の数値だと2015年PGAツアーデビュー「FEDEXセントジュードクラシック」での平均ヘッドスピード/ボールスピードは 51.6 / 75.5 (メートル/秒)でしたが、今シーズンのツアー競技では55.5 / 82.1( メートル/秒)まで伸ばしています。また先週自宅でマン振りをしたところ61.8 / 90.2 (メートル/秒)を記録したと自分のSNSで発表していました。

Bryson DeChambeau on Instagram: “203 ball speed if spin rate was 2000, it would fly around 360 yds. Haha. Thanks everyone who joined tonight for the stream. With my…”

www.instagram.com

デシャンボーの驚異の肉体改造

急激なドライバー距離アップの理由として挙げられる点は3つあります。

【1】20キロの体重アップ

まずは昨秋肉体改造宣言をしてからで体重が増加したこと。 ツアーデビュー時は84キロ(185ポンド)、2019年1月は88キロだった体重は今年の2月に102キロ、現在は更に増えていてなんと108キロになっているとのこと。柔軟性を失わなければ270ポンド(122キロ)まで増やすかも? という発言も出ています。

自分でも「少しやり過ぎ?」と話していたジムワークの筋トレは1日に2回。連日合計3時間半のメニューをこなし、腕や肩、そして体幹を主に意識しているということです。もちろん体重を増やすのが目的ですから食事は6000キロカロリーもの摂取をしているそうです。

先日、米紙「ニューヨークポスト」とスポーツ雑誌「スポーツイラストレテッド」の「スポーツ界でもっとも身体が引き締まったベスト25人」に選ばれるという評価をされたぐらいですから増えた体重の多くは無駄な脂肪では無いことは確かですね。

画像: 2019年のWGCメキシコ選手権(左)と2020年のメキシコ選手権(右)を比べてみると、肉体改造の成果がよくわかる(撮影/姉崎正)

2019年のWGCメキシコ選手権(左)と2020年のメキシコ選手権(右)を比べてみると、肉体改造の成果がよくわかる(撮影/姉崎正)

【2】アメフト選手を始動するカリスマトレーナーの存在

デシャンボーにはジュニア時代からスウィングを教えてもらっている「ザ・ゴルフィングマシーン(ホーマー・ケリー著)」理論信奉者のマイク・シェイ氏、そしてバイオメカニックの知識が豊富なクリス・コモ氏の二人のインストラクターがいます。コモ氏とは、地面反力を取り入れたスウィング改造も実践しています。

加えてもう1人重要な人物がいるんです。 グレッグ・ロスコフというトレーナーの存在です。 本人曰く飛距離のアップの一番の影響はロスコフ氏のおかげだと説明しています。コロラド州デンバー在住で「MAT マッスル・アクティベーション・テクニック」というスポーツ医学のトレーナーをするロスコフ氏はNFLデンバーブロンコスのトレーナーを20年以上務めています。

これまで持病だった右背中の痛みで苦しんでいたデシャンボーを回復させるだけでなく、伸筋バランスを評価し、抑制されている筋肉本来の働きを取り戻していくことで捻転の可動域を増やす事ができるようになったそうです。 「MATに行くと蓄積した疲労がすぐに消えて回復するので多くの練習を続けながら連戦を戦うことも問題ないよ」とデシャンボーは語っていました。

【3】ドライバーのロフトは4.8度? 道具の試行錯誤は続く

昨年末オーストラリアでは契約先のコブラ 「KING SPEEDZONE」 ドライバーで実質ロフト4.8度を試していたデシャンボー。 6.5度ではロフトが多すぎてスピン量3000rpmを越えてしまうと言うのが理由だったようです。

飛距離アップについてデシャンボー自らは「これまで考えていた限界を突破することができ新しい世界が広がっています。まだコントロールという視点では操ることは学んでいるところです。勝負がかかったプレッシャーの中でどうなるか、左右からの風にどう対応していくかなど慣れていかなれければいけない点はたくさんありますが、攻めるチャンスは広がると感じているので楽しみです」と語っています。

パワーアップしたデシャンボーがどこまでメジャー大会で優勝争いに絡んでくるか楽しみですね。

月刊ゴルフダイジェスト6月号でデシャンボー特集掲載。詳しくはそちらもチェック!

画像: 「腰からねじる」は正しくない!? ヘッドスピードが上がる“捻転差”の作り方 youtu.be

「腰からねじる」は正しくない!? ヘッドスピードが上がる“捻転差”の作り方

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