4月25日にオンラインで開催された「スポーツパフォーマンス オンラインサミット」は、トレーナーや医療従事者に向けたオンラインセミナーで、その一コマを受け持った宮崎太暉はゴルフの上達には3つの要素が大切だと発表した。それが、以下だ。
1.地面の同じところを叩く能力
2.ボールを遠くに飛ばす
3.予測できる曲がりの球を打つ
これは一体どういうことか。まず「地面の同じところを叩く能力」とはなにかから教えてもらおう。
横方向のブレがないほど「地面の同じ所を叩く」ことができる
「ゴルフは叩くボールが他のスポーツに比べて小さいし、体から遠いので頭が左右に大きく動いてしまうと地面の同じところを叩くのが難しくなります。とくに横方向のブレが小さいほうがショットの安定性は上がりますという、シンプルな話です」(宮崎)
右足に大きく体重移動するなど、横方向へのブレがスウィング中に大きくなると「地面の同じところ叩く」というゴルフの基本中の基本の部分はやりにくくなるようだ。
ボールを遠くに飛ばすには?
続いては「2.ボールを遠くに飛ばす」について。ボールを遠くに飛ばすことができればゴルフはカンタンなのは間違いがないが、ではどうすれば遠くに飛ばせるのだろうか。
「飛ばすにはいろいろな方法がありますが、たとえば体重移動に重きを置いたスウィングと比べると体の使い方によって体重の移動ではなく”圧”の移動を行うことで腰と肩が大きく回るようになります」(宮崎)
圧の移動とはなにか? テークバックで右に移動し下半身を止めて上半身をねじるように使う画像A左と比べて、左の画像は左ひざを伸ばしながらその場で腰を回転させ、左の側屈も入れている。それだけ“圧”をかけているということで、それにより上半身の回転量が多くなり、腰と肩の捻転差も大きく作られている。
次に切り返しの動作だ。
「(画像B)左の画像では切り返しで右に体重が残り過ぎることで左サイドが早めに開いてしまい上半身と下半身の捻転差がなくなり、パワーをボールに伝えらないスウィングになっています。対して右の画像は切り返しで左サイドにしっかりと加重されていることで、このあとに続くパワーの出力にも有利に働きます」(宮崎)
右サイドに体重を移動することで、右サイドに体重が残り、飛ばしにはかえって不利になってしまうというわけだ。フォローでも同様で、右サイドに体重が残ったままではスピードを上げることが難しくなってしまうのだという。
最後に「3.予測できる曲がりの球を打つ」だ。なるほど、どれだけ曲がるかをコントロールできたらゴルフは簡単だろう。
「弾道のコントロールは、上級者やプロでも活躍できる人とそうでない人を分けるものです。一般的には『ターゲットのほうにボールよ、飛んでくれ』と思って打っている人がほとんどですが、理屈やメカニズムが理解できると右から左に曲がる球、高い球低い球など打ち分けるのは簡単にコントロールできるものです。そうするとミスの範囲が格段に狭くなりストロークを失うことが少なくなります」(宮崎)
ここではそのやり方にまでは踏み込まないが、「つねに曲がる球を打つ」ことを普段から心がけたい。上手くできなくても、いつか必ずスコアにつながってくるはずだ。
そして、これら技術の前提として、体の可動域の制限や体のケアの視点を忘れるとケガのリスクが高まるばかりでなく上達のスピードも遅くなると宮崎は警笛を鳴らす。その逆の例として、はじめてゴルフをした女性の例が挙げられた。
「(レッスン後に)右の股関節だったり、ひざの動き、肩の可動域などに硬さや制限を感じたので、所属している治療院で施術してもらったところ、ビフォーとアフターを比べるとかなり肩の回転量や左右のブレも減ったスウィングに落ち着いてきました。体の動きが改善されることで、ミート率や飛距離もアップしてきました」(宮崎)
以上のような事例からも、ゴルフを指導する上で解剖学や運動生理学、運動化学など体の仕組みをよく知ることが大切だと感じていると話す。
「ゴルフインストラクターが体の仕組みを知らないことでケガのリスクを上げることはやってはいけないこと。トレーナーや理学療法士などとチームを組んでサポートできるようになることがこれからの課題だと思っています」(宮崎)
自分の体にマッチしたスウィングをすることでケガがなく長くプレーし続けられることにつながると宮崎。ゴルフ上達に欠かせない「3つの要素」を高めるためにも、一度自分の体と自分のゴルフを見つめ直すのが近道かもしれない。
取材協力/Sports Performance Online Summit