メジャー4勝、欧州ツアーで2度の賞金王と世界中で活躍した南アフリカ出身のアーニー・エルス。ゆったり振っている印象なのに300ヤードを超える飛距離で「ビッグイージー」と呼ばれたそのスウィングを、プロゴルファー・中村修が振り返る。

動きの順序が整っているから中心はゆっくりでも末端は高速で動く

1969年生まれのアーニー・エルスは、1992年に南アフリカでプロ転向し1994年の「全米オープン」で25歳にしてメジャー初勝利を挙げました。当時のランキングを見てみると、グレッグ・ノーマン、ニック・ファルド、ベルンハルト・ランガー、ホセ・マリア・オラサバルなどそうそうたる面々に割って入るアーニー・エルスの活躍は、新時代の幕開けを感じさせました。

1993年には「ダンロップフェニックス」に出場し優勝、1995年の「ANAオープン」では優勝した尾崎将司に次いで3打差の2位になるなど、日本ツアーでもプレーしました。

画像: ビッグイージーと呼ばれメジャー4勝を挙げたアーニー・エルス(写真は2002年の全英オープン 写真/田辺安啓)

ビッグイージーと呼ばれメジャー4勝を挙げたアーニー・エルス(写真は2002年の全英オープン 写真/田辺安啓)

ニック・プライスやニック・ファルドと同じデビッド・レッドベターに師事し、1992年に発売されたレッドベターの著書「ザ・アスレチックスウィング」で提唱したボディーターンの申し子として注目されました。そのスウィングをお手本として、多くのゴルファーが参考にしたのではないでしょうか。かくいう私もアーリーコックと左腕がピンと伸びた感じを真似してました。懐かしいですね。

ではスウィングを見てみましょう。オーソドックスなスクェアグリップで握り(画像A左)、テークバックの左腕が地面と平行になる位置で腕とクラブが90度になるアーリーコックが特徴です(画像A右)。写真は1995年のものですが当時は肩の可動域が広くて顔が正面を向いたまま肩のラインが90度回って早い段階で背中がターゲットに向いていることが見て取れます。こうすることで再現性も高く手打ちにならずに腕と体の運動量がマッチしていて、当時は”腕と体の同調”と表現されました。

画像: 画像A 左腕が地面と平行になる位置で腕とクラブが90度になるアーリーコック(写真は95年のANAオープン)

画像A 左腕が地面と平行になる位置で腕とクラブが90度になるアーリーコック(写真は95年のANAオープン) 

トップからの切り返しで左腕がピンと伸びています。力を入れて伸ばしているわけではありませんが、腕が体から遠くを通ることでクラブヘッドが描く円の半径が大きくなることで、加速するための距離がしっかり確保されますし、入射角が鋭角になり過ぎずにミート率も安定します。

そして、画像B左のトップで近づいた左肩とあごが画像B右では離れています。こうすることで体の回転にクラブが引っ張られて正しい軌道に下りてきます。

画像: 画像B 伸びた左腕がクラブが描く円の半径を大きくしヘッドスピードを上げ入射角を緩やかにする(写真は95年のANAオープン)

画像B 伸びた左腕がクラブが描く円の半径を大きくしヘッドスピードを上げ入射角を緩やかにする(写真は95年のANAオープン)

下半身の回転が上半身に伝わり肩が回り、腕がしっかり振れています。頭の位置が変わらずに体の中心部がしっかり回転してターンしているからこそ、エルスの特徴であるゆっくり振っているように見えて飛距離が出るスウィングの根源になっています。体の動きの順番が整っていて中心部はゆっくりでも末端部は高速で動くという非常に効率のいいスウィングが特徴でした。

画像: 画像C インパクト前後で頭の位置が変わらず、体の中心部はゆっくり回転し末端部は高速で動く高効率なスウィング(写真は95年のANAオープン)

画像C インパクト前後で頭の位置が変わらず、体の中心部はゆっくり回転し末端部は高速で動く高効率なスウィング(写真は95年のANAオープン)

1969年生まれのエルスにとって1975年生まれのタイガーの出現はエルスのキャリアに大きく影響したことでしょう。しかし一足先に50歳になった今季は米シニアのチャンピオンズツアーに参戦し速くも初優勝を挙げています。ビッグイージーの雰囲気のままプレーを続けるアーニー・エルスのスウィングは同年代のお手本になるスウィングであることは変わりありません。

画像: 1995年のANAオープンでは、優勝したジャンボ尾崎(左)に次いで3打差の2位になった

1995年のANAオープンでは、優勝したジャンボ尾崎(左)に次いで3打差の2位になった

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