2013年からPGAツアーに本格参戦し、現在も活躍を続ける松山英樹。そんな松山が試合を通じて切磋琢磨しあう、いわゆる「ライバル」にあたる選手を、PGAツアー在米ゴルフジャーナリストのアンディ和田が、年齢・デビュー時期・成績から3名選出。様々なデータを比較してみた。

年齢・デビュー時期・成績で考えるとスピース、トーマス、フィナウの3名

最近は頻繁に米ゴルフ専門誌の記者とメールやビデオチャットで情報交換をしているのですが、先日「松山英樹のライバルは誰だと思う?」と聞かれ、うーん、ずばり誰にしたらいいのだろうかと悩みました。

そのときは「同じ1992年生まれという視点だとマスターズでローアマ争いをしたパトリック・カントレーになるけど、1993年生まれのジャスティン・トーマスやジョーダン・スピースは似たような時期にPGAツアーフル参戦を始めたので意識はしているのでは?」と返答しました。

画像: PGAツアーを主戦場とする松山英樹(写真はWGCメキシコ選手権 撮影/姉崎正)

PGAツアーを主戦場とする松山英樹(写真はWGCメキシコ選手権 撮影/姉崎正)

その後また考えてみたのですが、タイガーやアダム・スコットはキャリアを考えるとライバルではなく憧れ的な存在でしょうし、リッキー・ファウラーは2016年優勝時のフェニックスでプレーオフをしていたりして意識はしているでしょうが、年齢もPGAツアーデビュー年も4年ほど差があります。

やはり「ライバル」という関係は似たような年齢、またはPGAツアーデビュー時期が近い、そして現在もPGAツアートップレベルで活躍している、という条件になるでしょうか。

この視点で検討すると松山のライバルに相当する選手はジョーダン・スピース、ジャスティン・トーマス、そしてトニー・フィナウの3人という結論に至りました。

もちろん、米ツアー通のファンの方でしたらもうご存じだと思いますが、この4人はそれぞれプレースタイルが異なりますよね。

ジャスティン・トーマスはロースコアを叩き出す力が凄まじい選手。今シーズンもバーディ率ツアー2位の成績が示すように、ミスを怖がらずに攻めるプレースタイルは健在です。

画像: 2017年の「全米プロゴルフ選手権」で松山とメジャー制覇を争ったジャスティン・トーマス(写真はWGCメキシコ選手権 撮影/姉崎正)

2017年の「全米プロゴルフ選手権」で松山とメジャー制覇を争ったジャスティン・トーマス(写真はWGCメキシコ選手権 撮影/姉崎正)

フロリダ州ジュピターではタイガー・ウッズのスパーリングパートナーとして一緒に練習をする機会が多く、タイガーから王者の哲学を学び、巧みなボールコントロールの技を身につけているようです。

トニー・フィナウは南太平洋トンガとサモアのルーツを持つ選手です。身体能力的にはダスティン・ジョンソンと共にツアートップレベルと高く評価され、左から右に曲がるフェードボールは見た目6割ぐらいのテークバックの大きさでも楽々320ヤード飛ばしてきます。

画像: トニー・フィナウ。2019年のプレジデンツカップ米国代表に選抜され、シングルス戦で世界選抜の松山と戦った(写真は2019年のマスターズ 撮影/姉崎正)

トニー・フィナウ。2019年のプレジデンツカップ米国代表に選抜され、シングルス戦で世界選抜の松山と戦った(写真は2019年のマスターズ 撮影/姉崎正)

人柄の良さが逆に勝負の詰めが甘いと指摘されるケースも多く、まだツアーでは1勝のみです。今年もアリゾナ州で開催された「フェニックスオープン」ではウェブ・シンプソンに土壇場で逆転され優勝を逃がしました。しかし勝負どころでもセルフコントロールの壁を越えてくれば年間複数優勝どころかメジャー複数優勝を実現できる力を秘めていると感じます。

今回の4人の中で現在世界ランキングが56位と低迷しているのがジョーダン・スピースです。2017年に23歳でメジャー3勝目を挙げたスピースの持ち味はバンカーやパッティングなど小技のイマジネーションで粘り強いゴルフをするところです。

画像: メジャー3勝のジョーダン・スピース。昨シーズンからショットの不調が続いている(写真は2019年の全英オープン 撮影/姉崎正)

メジャー3勝のジョーダン・スピース。昨シーズンからショットの不調が続いている(写真は2019年の全英オープン 撮影/姉崎正)

昨年と今年のデータを調べてみると、やはり気になるのはフェアウェイキープ率の低さ。昨年は53.12%で181位、今シーズンは更に悪く47.95%はツアー227位です。スピースはツアー年間平均飛距離ランクで一度も50位以内に入ったことはありません。つまりティショットが「飛んでいないのに曲がっている」という苦しい展開が続いているのが現状なので、持ち前のパッティングやグリーン周りが冴えてもロースコアにつながる感じではありません。今後どのように修正してくるかに注目です。

そして、みなさんご存じの通り松山は米ツアー屈指のショットメーカー。ストロークゲインド(SG:ショットのスコアに対する貢献度を表す指標)の「SG Tee to Green(注:ショット全般のスコアに対する貢献度)」部門でツアートップ3にいるのが松山のショット力の証明です。ティショットでは昨年から左へのミスが減ってきていて、キレ味のあるアイアンショットでピンに絡めてきます。

(勝手にですが)ライバルとしたので、まずは4人の基本的なデータとこれまでの通算成績から比較してみましょう。

名前年齢フル参戦年世界ランク過去ベストWR試合数予選落ち獲得賞金(ドル)
ジャスティン・トーマス272014秋411412934,419,108
トニー・フィナウ302014秋1691533518,170,309
松山英樹282013秋2221561728,613,030
ジョーダン・スピース2620135611732740,790,716

4人の中でツアー参戦試合数が多いのはジョーダン・スピース。大学1年半で中退しプロ転向。2012年秋の予選会2次予選でまさかの落選だったスピースは、2013年のスタート時にはツアー出場資格はありませんでしたが、スポット参戦のチャンスで成績を残し新人王に輝く活躍を見せました。

松山は2013年全米オープン(10位)でプロとして米ツアーデビュー。参戦6試合で翌年の出場権を獲得。ここまでの獲得賞金は2800万ドルを越えていますから日本円でなんと約30億円(FEDEXカップボーナスは別)。4人の中では松山の予選落ちの回数が少ない(156試合中17試合、突破率89.1%)という点が光ります。

スピースと同じ年齢でジュニア時代から仲が良いジャスティン・トーマスは2014年の下部ツアーから昇格してツアー参戦。2017年にはFEDEXカップ年間王者、賞金王に輝いています。

4人の中で最年長はトニー・フィナウで30歳。大学には進学せず17歳でプロ転向したフィナウはミニツアー時代の下積みが長かったです。プロ転向6年後にやっとカナダツアーに合格、翌年ジャスティン・トーマスと同時期に下部ツアーから昇格を果たし2014年秋からPGAツアー参戦しています。

続いて、4人の過去7年間の世界ランク100位の変動をグラフにすると下記画像のようになります。

画像: トーマス、フィナウ、松山、スピースの4名の過去7年間の世界ランクの変動を示すグラフ

トーマス、フィナウ、松山、スピースの4名の過去7年間の世界ランクの変動を示すグラフ

スピース(2015年)とトーマス(2018年)は世界ランク1位に君臨しました。松山の過去最高順位は2017年8月の2位。その後松山のランキングは32位まで下がる時期もありましたが、昨年後半から上昇してきていて現在は22位です。

次は優勝数、メジャー制覇数、上位成績、そして最終戦参加数の表です。

名前優勝数メジャー優勝3位以内トップ10トップ25最終戦参加
ジャスティン・トーマス1212349804
トニー・フィナウ10935733
松山英樹501745986
ジョーダン・スピース11331631065

今シーズン2勝を挙げているトーマスが勝利数で「12」、メジャー優勝数ではマスターズ、全米オープン、全英オープンを制覇したスピースが「3」。松山はツアー5勝(世界ゴルフ選手権2勝)に加えてタイガー・ウッズがホストを務める「ヒーローワールドチャレンジ」を2016年末に制しています(ツアー公認、公式優勝数には含まれない)。

この表では松山が毎年30人のみが参加できる「ツアー選手権」の最終戦にもっとも多く参戦しているのがわかります。年間を通しての安定度とプレーオフになってからの勝負強さの証明でもありますね。

松山にとっては3人ともこれまで因縁深い戦いを経験しています。プロになってツアー初戦となる2013年の全米オープンで松山が予選ラウンドで一緒に回ったのはジョーダン・スピースでした。年下でもあるスピースが既にメジャー3勝しています。

ジャスティン・トーマスとは2017年全米プロの最終日での死闘を経験し無念の惜敗。トニー・フィナウとは昨年豪州開催のプレジデンツカップ最終日、シングルス戦で無念ドロー。松山にとってはこのようなライバルの出現、そして活躍がモチベーションとなり今後も更に切磋琢磨していくことになるでしょう。

今シーズンは夏以降に大きな試合が続いてあるようなので、この4人の活躍には注目したいですね。

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