キャメロン本人のエースパターは? 歴代お気に入りベストワンはどれ?
編集部:昨年のメジャー4つのうち3つをスコッティ・キャメロンのパターを手にした選手が制しています。改めて、ご自身のパターはなぜこれほど結果を出せるのか、考えを教えてください。
キャメロン:ツアー全体として、非常に多くの選手がスコッティ・キャメロンパターを使用しています。プレーヤーの使用数が増えるほど、勝利数も多くなります。より優れたパターをデザインすれば、より優秀なプレーヤーに使ってもらえます。トッププレーヤーが使えば、他のプレーヤーも使いたくなります。つまり、すべては優れたプロダクトをつくることから始まります。プレーヤーは、製品のクラフトマンシップ(技術力)に惹かれ、サウンドとフィールに惹かれます。優れた製品は優秀な選手が使い、そういった選手が多くなればなるほど、優勝する確率も高まるのです。「トッププレーヤーのために最高のパターを創ること」。これに尽きると思います。
編集部:スペシャルセレクトパターに関して。インサートを廃し、削り出しにした意図は?
スコッティ・キャメロン(以下、キャメロン):近年のトレンドとして、ゴルフボールがよりソフトな打感と打音をもつようになってきました。フェースインサートによってパターのフィーリングがソフトになり過ぎないように、今回、インサートではなく、ソリッドな削り出しパターヘッドのもつサウンドとフィーリングを重視してデザインしました。
編集部:ネック形状やトップラインにも変化がありますが、その意図は? それにより、プレーヤーのフィーリングやストロークにどのような影響があるのでしょうか?
キャメロン:スペシャルセレクトパターのデザインには、ジャスティン・トーマスやブラッド・ファクソンをはじめとしたトップツアープロの意見が反映されています。自分が「こうしたらどうだろう?」と感じたことを彼らが確認してくれるのです。ヘッドが少し大きくぼやけた・もたついた印象になってきたところもあると感じ、ルックスの改良を目指しました。サイズダウンを施し、シリーズ最高のラインアップが実現できたと確信しています。「なぜ4年前にこれをしなかったんだろう?」とも思いますが、過去の積み重ねがあってこその学びかなと感じています。ヘッドサイズをコンパクトにした分、トウ・ヒールにタングステンのウェイトを入れて適正重量に戻しましたが、それによりストロークの安定性とパフォーマンスの向上も実現することができました。
編集部:スペシャルセレクトパターの8 モデルのなかで、あなたの1 番のお気に入りはどれ?また、オールタイムでのお気に入りベスト1 は存在しますか?
キャメロン:個人的にはスペシャルセレクトのフローバック5.5が好みで、現在使用しています。スイング時のニューポート2 のような動き、地面に溶け込むデザイン、ワイドボディによるアドレス時の安定した見た目、フランジまで伸びる幅のあるラインなど、ブレードとマレットの良さを融合したモデルだと思います。自信作という意味では、今回のニューポート2も気に入っています。このモデルは過去に幾度となく製作してきましたが、市販パターとしては過去最高のニューポート2に仕上がっていると思います。オールタイムでは、2018年にリリースした”コンセプトX”パターが、パフォーマンス、サウンドにおいて優れたモデルだと思います。ウイング部分のデザインが個性的だったので一部のプレーヤーには見過ごされましたが、少し型破りなことをしないと、新しいものを発見できないこともあります。実験的なモデルで、学ぶこともありました。個人的には、エレガンス(上品さ)、サウンド、パフォーマンスを持ち合わせているモデルだと思います。
編集部:モノづくりにインスピレーションを与えるものはゴルフ以外だとなんですか?
キャメロン:最近注目している人物は、フランク・ゲーリーです。斬新な角度やカーブのついた建物をデザインしているすばらしい建築家です。現在、ジャスティン・トーマス向けの新しいパターをデザインしている最中なのですが、フランク・ゲーリーの作品からインスピレーションを得たアイデアも少し入っています。あと、私は大のクルマ好きなので、スポーツカーからヒントを得ることもあります。かたち、色、素材など……パターデザインのアイデアに取り入れています。たとえば、おなじみのチェリードット(赤いドット)は私の幼少期に父親がよく連れて行ってくれた地元カリフォルニアのレース場でみた、レースカーのキャブレターからインスピレーションを得たものです。