検査は? 移動は? 宿泊は?
PGAツアー再開予定の第1戦「チャールズ・シュワブ・チャレンジ」まで1ヶ月を切った。
現在、PGAツアーは大会を安全に実施できるよう、開催地のテキサス州フォートワース市やゴルフ場(コロニアルCC)、医療機関など、各所と電話会議などでさまざまな取り組みを検討しているが、最大の懸案事項は選手やキャディ、関係者に対して行われる「コロナウイルス検査」をいつ、どこでどう実施するか、についてであろう。
PGAツアー政策委員会により「健康と安全のプラン」が承認され、ツアーオペレーションの主任タイラー・デニス氏より先週の金曜日、選手たちにツアーを再開するにあたっての方法が通達されたという。
「選手やキャディ、そして安全に試合を開催するために必要な人々にとって、きちんと競技を実施するためのあらゆる面をこれまで検討してきた」
その通達によれば、まずは自宅で自分でできる検査を行い、トーナメント会場に到着した時にも検査を実施。そしてトーナメントウィーク中にもう一度検査を行うという3段階方式なのだという。
今季2勝を挙げているブレンダン・トッドは近頃、在米記者たちとの記者会見で次のように語っている。
「ツアーが検査に関して、こうして真剣に取り組んでくれているのでホッとしている。ウォーキングスコアラーや競技委員たちも一人一人検査して、コロナウイルスの危険性なく健康にプレーできるというのを確かめることができるのはいいね。またツアーでプレーできるのを本当に楽しみにしているよ」
また、間接接触により感染拡大が心配される「ピンフラッグ」と「バンカーレーキ」の取り扱いに関しては、「キャディも検査を受けて陰性なら、キャディがいつも通りピンを抜き、バンカーレーキで砂をならすのは気にならない」とし、「できるだけキャディとも6フィート(ソーシャルディスタンス)離れようとは思うが、いつも離れられるわけではない。マスクしながらのプレーもおそらくしないだろう。たぶんコロナウイルス対策で推奨されているルールを破ることになるだろうね」と語っている。
フォートワース市長のベッツィ・プライス氏の弁によれば、選手やキャディが宿泊するホテルはできれば1ヶ所、あるいは必要なら2ヶ所に指定するようだ。また、ウイルス検査はトーナメント会場ではなく、ホテルで実施することになるかもしれない。しかもできれば毎日、である。どのような方法で検査するかについては、まだ明らかにされていないが、PGAツアーコミッショナーのジェイ・モナハン氏も検査については「広く、大人数でもできる方法でやることが大事だ」と強調しており、その最善の方法を探っているところだろう。
無観客とはいえ、選手やキャディ、ツアー関係者の他に、ボランティアやメディアもいる。ボランティアの数も通常の3分の1程度に減らし、しかも地元の住民だけで行うという方法をとるにせよ、検査は必須だ。人数も多いだけに、どのような方法が取られるのか、メディアの私自身もとても興味深い。
あとはトーナメント会場に到着するまでに、いかに安全に移動するかが課題だ。プライベートジェットを飛ばして1回の乗り継ぎもなく現地に到着できるトッププレーヤーたちはいいが、民間機で何度か乗り継ぎの末、移動してくる選手たちの感染リスクはどのようなものなのか。現在、全米の航空会社も感染防止のために乗客同士の座席を離し、機内でもソーシャルディスタンスを確保できるようにしたり、通常機内で提供されている食事や飲み物のサービスを中止したりしているが、自宅で行なった検査で陰性だったとしても、移動中に感染する可能性もあり、目に見えない敵と戦うのは難しい。
全米のメジャースポーツに先駆けて、NASCAR(ナスカー)が5月17日からレースの再開を決定しているが、野球やNBAは開幕・再開の目処はたっていない。だから6月半ばのゴルフの再開は、人と人の接触があり得るスポーツとして、大いに注目が集まることだろう。
「まだウイルスが収束したとは言い難い状況で、ツアーを再開しても大丈夫なのか?」
「ウイルス感染防止のため、どんな方法が取られているのか?」
「選手たちはどの程度マスクを着用したり、ソーシャルディスタンスを取るのだろうか?」
「関係者やメディアなど、選手以外の人たちのコントロールはどのように行なっているのか?」
……各スポーツのコミッショナーたちは、チャールズ・シュワブ・チャレンジを一つのケーススタディとして捉え、自分たちのスポーツに置き換えながら安全に実施できる方法を検討するはずである。
トランプ大統領がアメリカの主要スポーツのコミッショナーと電話会議を行なった際、「8月か9月にはスタジアムとアリーナにファンが戻ってこられるようにしたい」と伝えた。それが実際に可能かどうかは、ゴルフの実施結果がカギとなる。コロナ感染者を出すことなくトーナメントを開催することができれば、他のスポーツ開催の指針を与えることにもなり、スポーツ界の動きを再開させる大きな原動力となる。