存続か閉鎖かで揺れた「茅ヶ崎ゴルフクラブ」が再開したと聞いてとにかく行ってプレーしてみた

1957年開場、名設計家・上田治設計の味わい深い9ホール

2013年12月から、長く存続問題に揺れていた神奈川県の茅ヶ崎ゴルフクラブ。昨年9月、ゴルフダイジェスト・オンライン（以下GDO）を中心とするグループが、ゴルフ場利活用に関する優先交渉権を獲得したのは記憶に新しいところだが、新体制での暫定オープンが5月7日からスタートしている。神奈川在住の筆者も当日、早速行ってみた。

茅ヶ崎ゴルフクラブは、名匠、上田治設計で、1957年開場とその歴史は古い。湘南の海風が心地良いシーサイドコースで、9ホールパー35でありながら、独特の風格と趣を感じさせるゴルフ場だ。

高額な賃借料などが原因で、経営状況が悪化し、一時は2015年3月での閉場が決まっていたものの、災害時の広域避難場所としての有用性などから、地元を中心に存続運動が起き、短期間で2万人以上の署名を集める大きな問題になった。

その後、敷地をショッピングセンターにする案などもあったが頓挫するなど、状況が二転三転した。もともとは地代の値上げ交渉が存続問題の発端だが、神奈川県や茅ヶ崎市、地権者や運営会社、そして地元住民など、関係者が多いことも問題が複雑化している要因だ。

GDOもまだ各所との調整を行っている段階だが、一日も早くプレーしたいという声が多く、暫定的に運営を開始したという。本格的なオープンはもう少し先になりそうだ。

とはいえ、実際に行ってみると、いくつかの点で大きく変わっていた。一番の変更点は、バック4本が積める電動手引きカートから、手引きカートへの変更だろう。ゴルファーは、自分でバックを運んで、カートに積み下ろしする必要がある。料金はプレー前の事前精算で、9ホールで平日5,900円税込、土日は7,600円税込。これは近隣のゴルフ場に比べると、まずまず安価だと言えそうだ。

コロナウイルス対策のためか、ゴミ箱やトイレのタオルの設置もない。思った以上にシンプルな運営だった。レストラン、お風呂等も今のところ使えない。興味深いのは、ゴルフ場にはお決まりのドレスコードを設けていないこと。「周囲のプレーヤーへ不快感を与える服装でのプレー、来場はご遠慮ください」との但し書きはあるものの、ドレスコードはないとあえて謳っているところに、新体制の主張を感じる。

手引きカートになったものの、コースにはルートなどの案内もほとんどないし、ホールごとのレイアウト図もなかった。迷うことはないだろうが、戸惑うゴルファーは一定数いるだろう。筆者は何度か来たことがあるので、どうすれば効率よく移動できるか、手引きカートのルートを考えながらプレーしてみたが、思わぬ遠回りを強いられたホールもあった。

コースは林にセパレートされ、比較的平坦ではあるが、適度なアップダウンやグリーン周りに強い傾斜があり、プレー当日は3〜5ｍ程度の風が吹いていて、アゲンストの風ではなかなか前に進まない。正直、手引きカートだと、少しキツい箇所がいくつかあった。このスタイルは年配層にはなかなか厳しいだろう。

コースは、パー3が3つある9ホールで3025ｙと距離はないものの、湘南の海風は予想以上にボールに影響を与え、距離感や方向性を狂わせる。名物のアゴの高いバンカー群は巧みに配置され、初見だとなかなか歯ごたえがあるのではないだろうか。初心者が気軽に楽しむには、やや気合が必要だ。

プレー後は、「GDOがゴルフ場運営するなら、どんなサービスになるんだろう」と厚遇を期待していた自分が少し恥ずかしい気持ちになった。新生、茅ヶ崎ゴルフクラブは、自分のことは自分でやり、自然の理不尽に抗うことなく、歩き、そして打つ。自主性を重んじた、大人の遊びの提案なのだ。これは、接待や過剰サービスが長く続いた、これまでの日本のゴルフ文化にはあまりなかったスタイルだと言えそうだ。

最後に、このコースの隠れた見どころを紹介しよう。それは富士山だ。折り返してからの5番、7番、9番ホールでは、天気が良ければ富士山に向かってのショットが堪能できる。夕暮れ時なら、赤く染まった空に映る富士山の影が美しくそびえるだろう。神奈川県は、名門メンバーコースが多く、気軽に行けるところはそれほど多くない。近隣のゴルファーは、9ホールセルフプレーを試してみてはどうだろうか。