ゴルファーの強い味方としてすっかり定着したユーティリティクラブ。その成り立ちを見ていくと、一言でユーティリティといっても、男子プロ型と女子プロ型に分類できるとギアライター・高梨祥明は言う。それを見分ける方法は?

ロングアイアンでボールが上がらない!そんなシニアのために生まれた元祖UT

お助けクラブのイメージが強いユーティリティクラブ(以下UT)だが、意外にも苦手意識を持っているアマチュアゴルファーは多い。その“打ちこなせない理由”について今日は考えてみたい。

まず、UTとはどんなクラブなのか。おさらいしてみよう。

現在のようなUTが誕生したのは、日本市場である。90年代後半にリョービの「ビガロスメディア」や、キャスコの「パワートルネード」が登場したのがそのルーツで、もともとはロングアイアン(3番〜5番)を打ちこなすことができないアマチュアのために開発された、新ジャンルのクラブだった。故に“お助けクラブ”と呼ばれた。

2000年に入ると、米シニアツアーで「パワートルネード」の海外バージョン「K2K」がブレイク。アダムスゴルフなど日本メーカー以外でもUTに力を入れるブランドが登場した。そして03年にテーラーメイドの「レスキューMID」が発売されると完全に市民権を得て、UTをバッグに入れるのが当たり前のスタイルとなって今に至るのだ。

【ここまでのポイントを整理】

・ロングアイアンではボールが上がらない日本のシニア層に向け開発
・米国のシニアツアーで人気が出て海外ブランドが参入
・レスキューMIDが登場し男子トッププロも使う

画像: シャフト先端が細いウッドタイプ(左)なのか、太いアイアンタイプ(右)なのかで、同じロフトでも上がりやすいか、抑えやすいかが判別できる

シャフト先端が細いウッドタイプ(左)なのか、太いアイアンタイプ(右)なのかで、同じロフトでも上がりやすいか、抑えやすいかが判別できる

この流れだけを追うと、シニア向けに誕生したお助けクラブを男子レギュラープロも使うようになった。そのように読めてしまうかもしれない。しかし、ここに注意すべきポイントが隠されている。シニアに人気が出たそもそものUTと、レスキューMIDでは同じカテゴリーとして括ってはならないほどの大きな違いがあるからである。

ショートウッドの機能をもったUT。ロングアイアンの代用としてのUT

お助けクラブと呼ばれるUTだが、そもそものUTはロングアイアンではボールが上がりにくいゴルファーのために開発されたものだったことは前述の通りだ。このため、以下のような特徴があった。

・ウッド型ヘッドでアイアンよりも許容性が高い
・ショートウッドに比べシャフトが短い
・ショートウッドのようにフェースプログレッションが大きい(編注:フェースプログレッション=シャフト軸線とリーディングエッジがどれだけ離れているか=ターゲット方向に出ているかを示す値)
・シャフトの先端径が細いカーボンシャフト(ウッド用を採用)
・重心深度が深め

簡単に言えば、ウッドの上がりやすさを備えた、アイアンのように振れる長さのクラブだと言える(フェアウェイウッドは苦手な人向け)。

一方、レスキューMIDは下記のような特徴があった。

・ウッド型ヘッドでアイアンよりも許容性が高い
・ショートウッドに比べシャフトが短い
・アイアンのようにフェースプログレッションが小さい
・主に先端径が太いスチールシャフト(アイアン用を採用)
・重心深度が浅め

そもそものUTと共通するのはミスに対する許容性とシャフトがウッドに比べて短いこと。その他は完全に逆になっていると言える。レスキューMIDは高弾道ではなく、どちらかと言えば、高さを抑えていきやすいクラブだった。だからこそ、アイアンと同じように使えるミスにやさしいクラブとして、男子ツアープロにも人気が出たのである。

“お助けクラブ”といっても、助ける対象、要素が違うのである。

ツアーで人気のUTほど、いまだに弾道を“抑えやすい”という特徴を確実に有している。今はスチールシャフトではなくカーボンシャフトが主流だが、ツアーで人気のUT用シャフトは“えっ?”と思うほどズシリと重たく硬い。これでボールが上がるのだろうか? と不安になってしまうこともある。

しかし、これこそがUTに求める機能性の違いだ。ツアープロは我々アマチュアのように、UTにボールの上げやすさは求めていないのである。男子ツアープロはこうした抑えやすいUTを2番、3番アイアンの代わりにバッグに入れている。

それを踏まえて、女子プロに人気のUTを見てみるとその違いがさらによくわかっていただけると思う。たとえば、「ゼクシオ」のUTは、ヘッドがウッドのように大きめでフェースプログレッションが大きめ。そしてシャフト先端が細いしなやかな軽量カーボンが装着されている。まさしく“上がりやすいUT”の特徴そのままである。女子プロの多くはこうしたUTを5番アイアン、6番アイアンの代わりとして使っている。ロフトが20度前後のロングアイアン領域はUTではなくショートウッド(FW)にしているケースが多いのも特徴だ。

さて、それでは今回もご自宅で愛用のUTをチェックしていただきたい。シャフトの特徴、フェースの出方(フェースプログレッション)は、ボールを上げやすいUTだろうか? それともボールを抑えやすい男子プロ型UTだろうか? まずはそこを見極めていただきたい。

画像: 男子プロに人気の高さを抑えていきやすいUTでもロフト25度以上なら、大いなるやさしさを感じることができる

男子プロに人気の高さを抑えていきやすいUTでもロフト25度以上なら、大いなるやさしさを感じることができる

その上で、UT選びのポイントをもうひとつ。

男子プロが使用する弾道を抑えやすいUTの場合でも、ロフトが25度以上あるヘッドなら一般アマチュアでも十分に“やさしさ”を感じることが可能。UTを買う時にロフト21度、23度を選んでしまうゴルファーが多いと思うが、そのロフト帯で打ちやすさを感じたいなら、ボールが上がりやすい女子プロに人気のUTがオススメ。その下の番手もUT化したいならば、男子プロも使う抑えやすいUTのハイロフトを選ぶ。そうすることでUT本来のお助け機能を存分に体感することができるはずである。

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