PGAツアー34勝、メジャー3勝、3度の賞金王を達成し2005年には世界ゴルフ殿堂入りを果たしたビジェイ・シン。40代で18勝を挙げる大活躍をした“21世紀のレジェンド”のスウィングをプロゴルファー・中村修が改めて解説する。

タイガーを引きずり下ろし世界ランク1位を達成

フィジー出身のビジェイ・シンは、下積み時代をアジアンツアー、豪州・欧州ツアーで過ごし93年にPGAツアーに本格参戦。同年に初優勝を挙げ、98年には「全米プロ選手権」を制しメジャー初優勝を挙げます。2000年にはマスターズを制覇し、2001、2002年と2年連続で賞金王に輝いています。

キャリアハイとなるのは2004年で、41歳にしてメジャー1勝を含め年間9勝。絶対王者だったタイガー・ウッズを引きずり下ろし世界ランク1位に輝きます。とくにスタート前後の練習量の多さはツアーでは有名で、ついたあだ名は「練習の虫」。世界中を移動しながら連戦し練習量をキープする体力には驚かされました。

その、体に巻き付くようなダウンから大きく振り抜くスウィングを見てみましょう。

まず画像Aをご覧ください。グリップはオーソドックスなスクェアグリップ。テークバックでは頭の位置がやや右に動きながら背中がターゲットに向くように深くねじられています。画像は2013年のものなので50歳のスウィングとは思えないほどの柔軟性です。フェースの向きはトップでやや空を向く開かないタイプです。トップでの左腰の位置を後ろの木で確認すると木の幹が見えていますが、この位置を覚えていていただき次の画像Bを確認します。

画像: 画像A アドレスでは両わきがしっかりと締まり頭をやや右に動かしながら深いバックスウィングをとる(写真は2013年のアーノルドパーマー招待 写真/大原裕子)

画像A アドレスでは両わきがしっかりと締まり頭をやや右に動かしながら深いバックスウィングをとる(写真は2013年のアーノルドパーマー招待 写真/大原裕子)

画像B左の切り返しで左の腰の位置に注目します。画像Aのトップの腰の位置と比べるとターゲット方向への移動がよくわかります。水平方向の力を多く使いながら回転を加えていることがわかります。そしてインパクトでも左のひざに余裕が見られることから、縦の地面反力はそれほど多く使っていないことも見えてきます。

もう一つ注目すべきは腕が体から離れない点です。画像Aのアドレスで作った両わきの締まりをスウィング中ずっとキープしています。そのことで体から腕が離れずに再現性が高くエネルギーのロスも少なく振れています。

画像: 画像B 両わきが締まり腕が体から離れないことで回転力をロスなくクラブに伝えられる(写真は2013年のアーノルドパーマー招待 写真/大原裕子)

画像B 両わきが締まり腕が体から離れないことで回転力をロスなくクラブに伝えられる(写真は2013年のアーノルドパーマー招待 写真/大原裕子)

それと最も特徴的なのはフォローで右手の平がクラブから離れているところではないでしょうか。これは指先で握った右手をリリースする力が加わるものの、しっかりと締まった左腕がクラブをフリップ(手首を支点にボールをすくい上げる動き)させないことで無意識のうちに右手の平がクラブから離れていいるのだと思います。ダウンスウィングの回転力を左のわきをしっかりと締めることでクラブに伝えるているからこそ、フリップせずにハンドファーストでインパクトできています。

2002年頃に見に行ったツアー会場で、左わきにグローブを挟んで打つ練習を延々と続ける姿が目に焼き付いています。左のわきを締めることで手元が浮くことを防ぎ、再現性の高いスウィングにつながっていたのでしょう。左わきにグローブやヘッドカバーを挟むドリルはフリップしてしまう人、左ひじが引けてしまう人には効果抜群のドリルです。

画像: インパクト後に右手のひらが離れる特徴あるフォロー(写真は2004年のフナイクラシック 写真/田辺安啓)

インパクト後に右手のひらが離れる特徴あるフォロー(写真は2004年のフナイクラシック 写真/田辺安啓)

SNSでは年齢を感じさせないトレーニング姿も披露していますが、57歳になる現在もPGAとチャンピオンズ(米シニア)の二足のわらじを履き、現役プレーヤーとして活躍するビジェイ・シン。ゴルフへのモチベーションを長く持ち続けられるところも、彼の強さの秘訣ではないでしょうか。

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