ラフに寄りかかるように止まったボールのアプローチ
グリーン周りにある芝を短く刈られたカラーは、グリーンをこぼれたボールがラフまで転がらないようにするため、水はけを良くするため、芝刈り機などメンテナンス機械が通るため……など様々な理由で設置されているが、ほんの少しボールに勢いがあるとラフとの境目に止まってしまうことがある。
その場合ボールとフェースの間に芝が挟まりバックスピンがかかりにくいこと、ラフに負けないような力加減と距離感のバランスが難しくなることで難易度が上がってしまう。この状況を苦手とする人は少なくないはずだ。
画像Aの状況は、ボールがグリーン奥のラフによりかかるように止まっており、ボールからエッジまでは3ヤード、エッジからピンまで12ヤードの傾斜はやや下り。
下りを意識するとラフの抵抗に負けてショートし、しっかり打つとピンをオーバーしてしまうような状況だ。この状況から寄せワンは難しいが、なんとか乗せて2パットのボギーでは切り抜けたいところ。というわけでここで問題。この状況から、どんなクラブでどんな打ち方を選択するのがもっとも怪我が少ないだろうか?
こんなときどう打つのが正解?
正解は「ピッチングウェッジ(PW)を吊るように構えてトウ側でヒットする」。なぜこの答えが正解なのか。出題したプロゴルファー・中村修が重視したのは「ラフの抵抗を少なくして距離感が合う打ち方」だという。
「SWのようなロフトの寝ている番手でのミスになる要因は大きく二つ。インパクトで”ゆるむ”か、思ったよりも”強く入る”ことの二つです。ラフとの境目にある状況だとラフの抵抗を無意識のうちに感じているために思っているよりも強く入りやすくピンをオーバーする傾向にあります。それを嫌がってゆるむと大ショートしてしまいます。そこでPWを使ったランニンググアプローチであればテークバックを小さくすることができるためミスの要因になる”ゆるむ”と”強く入る”ことを防げます。パターよりも距離感も出しやすいはずですよ」(中村)
ランニングアプローチであれば8番や9番を選択するのでは? という疑問が残るが、なぜPWを勧めるのだろうか?
「もちろん、普段から8番などで転がすアプローチを多用し使い慣れているのではれば距離感や転がりの強さが身についていると思いますのでそれで構いません。PWを選ぶ理由は適度なキャリーと転がりでボールが強く出すぎないというメリットがあるからです」(中村)
それでは実際にPWを使った画像を見てみよう。ダフリやトップを防ぎやさしく打てるポイントはハンドアップに構えることだと中村からのアドバイス。
「ポイントは一つだけ。トウ側でヒットする意識で打つことです。フェースの芯で打つ必要はありません。トウ側で打つことで球が強く出る心配がなく、ラフの抵抗も弱まります。そのためにはヘッドのヒール側が浮くくらいハンドアップに構えます。そうすることでトウヒットしやすくなり、手首の動きも制限されることで、ゆるんだり強く入ることを防げるんです」(中村)
オーバーすることを嫌がってSWやAWなどのロフトの寝た番手を選ぶのが普通の選択だろう。しかしラフとの境目のボールを打つならPWを吊るのが正解。ハンドアップに構えてトウ側で打つことで“飛びすぎる”心配も軽減される。
グリーン周りではよくあるこのような状況に出くわした際は思い出したいテクニックだ。
撮影/小林司 撮影協力/佐倉カントリー倶楽部