自宅で過ごしながらも研究は怠らず
緊急事態宣言が解除となりましたが、新型コロナウィルス感染症の拡大は、スポーツの世界に大きな影響を及ぼしました。ゴルフ界でもプロ・アマを問わず、さまざまな大会が中止・延期され、試合が再開された韓国ツアーでも、無観客での開催となっています。
また、日本では屋内練習場など、多くのゴルフ関連施設が休業要請の対象となりました。コンペが中止となり、練習にも行けず、寂しい思いをしているアマチュアも多いことでしょう。私たちコーチも、このような状態ではどうすることもできず、自宅でできる練習方法をご紹介したり、最新の理論について勉強したりしながら、感染症拡大が収まる日が一日も早く訪れるよう願うばかりです。そんな中、ほかの人たちはどのような日々を送っているのだろうかと、旧知のヤン・フー・クォン教授と、コーチのクリス・コモに近況を尋ねてみました。
米国でも、規制は徐々に緩和されているようですが、外出に関して制限のある生活を強いられています。クォン教授が勤務するテキサス女子大学も休校になっていて、長い時間を自宅で過ごしています。しかし、スウィングについての研究は怠らず、オンラインを通じてインストラクターらとバイオメカニクスなどについて議論を行っているそうです。
さすがはバイオメカニクス第一人者のクォン教授。どんな状況に置かれていても、探究心が衰えることはありません。
さらにすごいのは、クリス・コモ。タイガー・ウッズの前コーチで、最近ではブライソン・デシャンボーを指導しています。アメリカで新型コロナウィルスの蔓延がピークだった4月中旬頃、クリス・コモからメールが来ました。コモはゴルフ場や練習場に行くことができないため、自粛生活期間中に自宅のリビングに打席を作り、4台のハイスピードカメラと地面反力を測定できる高価なスウィング分析の機器まで設置したというのです。つまり、自宅をスイング研究施設に改造したというわけです。アメリカの住宅が広いことは知っていますが、まさかリビングにスイング研究室まで設置するとは想像以上でした。
コモは自粛生活中に、オンラインでブッチ・ハーモンと対談したり、マスターズチャンピオンのトレバー・イメルマンにオンラインで指導するなど、新型コロナウィルス後の新たな生活様式に向けて様々な試みを行っています。常に進化を続けるクリス・コモらしい取り組みだと思いました。
師弟でありパートナーであるクォン教授とクリス・コモ
ご存じの方も多いと思いますが、クォン教授とコモは大学院の教授と生徒という師弟の間柄であり、バイオメカニクスを用いた反力打法を編み出したパートナーです。
コモはクォン教授からバイオメカニクスについて学び、コモは研究に協力してくれるPGAツアー選手をクォン教授に紹介しました。そうやって、2人がたどりついたのが反力打法なのです。
私は、初めてクォン教授に反力打法について教わったときのことが忘れられません。
反力打法では地面を強く踏み込むことで地面からの反力(地面反力)を受け、それをスウィングに活用します。私は当時、自分の経験から左足を強く踏み込めばボールの飛距離が伸びることは知っていました。しかし、どうして左足を踏み込むことでスウィングスピードが上がるのか、その理由までは見当がつきませんでした。
しかし、クォン教授からスウィングにおける回転運動は垂直軸と前後軸を組み合わせたものであることを学び、疑問は氷解しました。縦の地面反力は前後軸の回転を速め、腕を振る回転力に転換されます。しかも、支点となる重心から離れた左足を踏み込むことで、力は増幅されます。力点と支点の間の長さが長いほど、小さな力で大きな力を生み出せることは、みなさんも理科の「てこの原理」で習ったことでしょう。
このようにクォン教授は選手やコーチが培ってきた経験を、科学的に証明してきました。指導者はエビデンスのある指導方法で、選手、アマチュアを指導しなければならないと再認識させられたのもクォン教授のおかげでした。アマチュアも「なぜそうなるのか」ということを理解し、ゴルフスウィングIQを高めることが上達に近づくために必要なことなのです。
「反力打法」無料のオンラインセミナーを開催
今、コロナウイルス感染症の拡大で、私たちも心からゴルフを楽しめる状況にはありません。いずれ、ゴルフ練習場やゴルフ場も通常営業が再開され、ゴルフツアーも開催されるようになることでしょう。しかし、不安を払拭し、以前のようにプレーや観戦を楽しめるようになるには、まだ時間が必要なはずです。
そのような環境が続けば、世の中のゴルフへの関心が低くなり、ゴルフ人気に陰りがでてくるかもしれません。そこで、私は多くの人にゴルフを楽しむ気持ちを呼び起こしてもらおうと、オンラインによるゴルフセミナーを企画することにしました。
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