PGAツアーのトップ選手の多くが「浮かせる派」
PGAツアー会場で取材を続けていると選手達のパワーやスピード、そして職人技となるグリーン周りにはいつも驚かされています。 解説者という目線でトッププロ達の細かい部分に注目していくとショットを放つまでの動作にはそれぞれの個性的な動きがあり面白いです。
案外注目されませんが、多くのメジャー優勝者、世界ランク上位者が実践しているクラブヘッドを浮かせて構える「ホバー」についてレポートします。
英単語で「HOVER」という言葉があります。 ホバーを辞書で調べると「空中に停止する」という訳が出てきます。 英語のゴルフ用語で「ホバーする」とはクラブヘッドのソールを宙に浮かせて構えることを指します。選手を観察したところ「ホバー」には2タイプあることがわかりました。
タイプ1は「上げ待ち」タイプ
ドライバーヘッドを浮かせた状態からテークバックを始動します。
タイプ2は「クィックモーション」タイプ
テークバック始動の動きの中で後ろに引く動作ではなく、浮かせる動作から始めます。
タイプ別に「ホバー」を採用する選手を表にしたものが下記です。
タイプ1 | タイプ2 |
ジャスティン・トーマス | ローリー・マキロイ |
トニー・フィナウ | ダスティン・ジョンソン |
リッキー・ファウラー | フィル・ミケルソン |
マット・クーチャー | ジェイソン・デイ |
バッバ・ワトソン | ブライソン・デシャンボー |
ジャック・ニクラス | |
グレッグ・ノーマン | |
ニック・ファルド |
PGAツアーでCBSテレビのラウンドレポーターを務めるマーク・イメルマン氏にこのドライバーヘッドを浮かせて構えるホバーについて尋ねたところ、下記の様な解説をしてくれました。
「そうですね、最近はホバーする選手が目立ちます。浮かせる利点としてはまず全体の姿勢と手の位置が高くなります。これは総合的にティショットの安定度が高い選手の共通点といえるでしょう。次にヘッドを浮かせることによって、体の捻転も向上し、スウィングアークがフラットになりダウンスウィングで入射角がシャローに入りやすくなるでしょう。 あとはテークバックのスピードが一定でアークも大きな弧を描きやすいという利点があると感じます」(マーク・イメルマン)
メジャー18勝のジャック・ニクラスは以前ゴルフ雑誌のインタビューで「ソールを地面につけたままだとグリップの握り方がゆるめでも大丈夫なのでテークバックと同時に強く握り締めることが
あるが、浮かせていると一定の握り方を保つ事ができる」とコメントしていましたし、合計331週間世界ランク1位に君臨していたグレッグ・ノーマンもホバー派です。ノーマンは利点としてニクラスと同じようにグリップの握りを一定にする理由を挙げていました。
「テークバッグでクラブヘッドの流れを真っすぐスムーズに引きやすくなる。 ホバーするのは簡単ではありません、自分の動きとしてマスター(習得)するのは時間がかかると思いますが、しっかりできるようになると有利な点になるでしょう」(グレッグ・ノーマン)
一方でタイガー・ウッズや松山英樹などホバーせずにドライバーヘッドをソールにつけたままテークバックを始動するプレーヤーも存在します。私のリサーチだと米ツアー選手の中では約3割ほどの選手がティショットでドライバーヘッドを「ホバー」します。しかし、世界ランキング上位でホバーする選手が多いことは、その効果があるということの現れだと感じています。
ドライバーショットでテークバックの始動が力んだり、ぎこちなくなかなか上手くいかないと感じる人はクラブヘッドを浮かせて「ホバー」してみて下さい。 これまでとは違う感触でスウィングの流れが向上するかもしれません。