七色の球筋は操らないが、40通り以上の「縦の距離感」を持っている
メジャーハンターとして知られるブルックス・ケプカですが、日本でもダンロップフェニックスを2017、2018と連覇しています。とくに、2017年大会で3日目にドライバーを封印して3番ウッドだけで「64」のスコアで回って見せたのは印象的でした。
その年の練習場で、ケプカが練習場で計測したトラックマンの数値を見たことがありますが、ドライバーではヘッドスピード55m/sでキャリー316.3ヤード。9番アイアンではヘッドスピード41.3でキャリー165.8ヤードという数値でした。
9番でキャリー165ヤードの飛距離にも驚かされますが、ケプカがすごいのはアイアンショットでの縦の距離感。どんな状況下でも距離を合わせてくる技術には目を見張るものがあります。
ケプカは、3番ウッドからピッチングウェッジまでの番手すべてで、3つの距離を正確に打ち分けることが可能で、キャディが持つヤーデージブックには、番手ごとに3つの数字が書かれています。さらに、ピッチングウェッジより短い3本のウェッジでは、なんと5つのスウィングで距離を打ち分けているんです。
もちろん、前後の番手で距離が重なっていることもありますが、ライや風の状況でスピンの量、高さなどでクラブを選んでいるのでしょう。たとえば、残り170ヤードであれば、状況次第で「8番の4分の3」か「9番のマックス」か、といったようにキャディと会話して決めているんだと思います。
飛ばそうと思えばいくらでも飛ばせるポテンシャルを持ちながら、縦の距離感を番手ごとに3つから5つ持っている。そうすれば、全部で40通り以上の距離を正確に打ち分けられることになります。この高いショット力こそがケプカの強さの秘密でもあります。
では、どうやって打ち分けているのかといえば、タイガーのようにスライス、フック、スティンガー(ローボール)と七色の弾道を打ち分けているのかというとそうではありません。
ストロンググリップでフェースを開かずに上げる、インパクト付近でのフェースの開閉を抑えたスウィングのメリットを生かし、フェースの開閉で飛距離や弾道をコントロールするのではなく、ヘッドスピードとクラブ軌道で飛距離や弾道をコントロールしています。つまり、非常にシンプル。シンプルだからこそ、メジャーのタフなセッティングでも大きな狂いが生じにくいのでしょう。
チャールズシュワブチャレンジの開催コース、コロニアルCCは比較的フラットでグリーンもアンジュレーションが少なめ。メジャーにめっぽう強い一方で、「メジャー以外はやる気がない」などと揶揄されることもあるケプカですが、ひざのケガが完治し、本人も出られる試合はすべて出たいと意欲を燃やしているようです。
メジャー“以外”でも強いケプカを見せてくれることは、間違いないでしょう。