この40年、重さはほとんど変わらず、300ccもラージ化したドライバーヘッド
今日はゴルフクラブ好きに“閑話休題”ともいえる話題を一つ。写真1に示したのは小さいステンレスのキューブを量りに載せて計測したものである。ぴったり200グラムあった。
では次に、メタルヘッドの元祖ともいえるテーラーメイド のピッツバーグパーシモンメタル(1980年製/体積160cc台)を量りに載せてみる。重量は198グラムとなった。
さらに、大型メタルヘッドの元祖、キャロウェイのビッグバーサメタル(90年製/体積190cc程度)を量ってみる。重量は、199グラムだった。最後に最近の大型ドライバーヘッド(16年製/体積)460ccを量りに載せてみた。その重量はやはり199グラムだった。
1980年代初めは体積160cc台半ばだったドライバーヘッドは、40年経って300cc近く大きくなった。大型化の理由は、やさしさの向上。いわゆる慣性モーメントのアップである。ゴルフクラブメーカーは、40年もの間、次々に新しい素材、製法を開発し、ヘッドを風船のように大きく膨らましつつ、重量が重たくならないように努力してきたのだ。おそらくこれが、最も簡単な“ドライバーヘッドの進化”についての説明となる。
ヘッド重量は同じで、ヘッドが大型化し、シャフトが長尺化し、それをハイスピードで振り抜くためにシャフトがどんどん軽量化されていった。これがこの40年の歩みである。
ドライバーの開発は最近、各社の足並みが完全に揃っており、新しい方向性を出せずにいるようにも見える。足並みが揃う、ということはこれまでの取り組み(大型ヘッド+長尺による合理的な飛距離アップ)については、ゴール付近までたどり着いたということになるだろう。では、次に進むとしたら、どういう方向が考えられるだろうか?
ひとつあるのは、ヘッド重量のバリエーションを持つことだ。ここまで確認してきたように、時代は変わっても、ヘッド重量は200グラム前後で統一されてきたのがここまで。だとしたら、もっと軽量(180グラム台)にしたヘッドの選択肢があっていいように思う。現在でもシニア向け、レディス向けに190グラムを切る軽量ヘッドを採用しているブランドもあるが、ヘッドを軽くすれば振りやすさが向上するのである。つまり、複数のヘッド重量を選択肢として持つことで、ゴルファーは振りやすさを選べるようになるのである(クラブを短く持って振ると振りやすさが変わって感じたりするのと同じこと)。
ドライバーのヘッドの「重さ」を選べる時代はやってくるか?
これによってクラブを構成するパーツの組み合わせも変わってくる可能性がある。200グラムの大型ヘッドならば、超軽量50グラムのシャフトでなければならなかったかもしれないが、185グラムのヘッドなら70グラム台のシャフトでも振りやすく感じるかもしれない。シャフトの重さ、長さ、硬さの選択も、これまでと違ってくる可能性が高いのである。
問題があるとすれば、ゴルファー側にクラブスペックへのこだわりがあることだ。とくにスウィングバランス(あるいはスウィングウェイト)にこだわってしまうと、いくら軽量ヘッドを選択してもバランスを合わせるためにシャフト先端にウェイトを仕込んだりすることになる。これでは、振り心地が変わらず、選択肢の意味がなくなってしまうのである。
本来はヘッドを軽くしたらしただけの、シャフトを短くしたなら短くしただけの明確な違い(振りやすさ/扱いやすさ)が出なければいけないが、現状はスウィングウェイトを合わせるために、先端を軽いままにしておけない雰囲気があるのが残念なところ。実際、これもドライバーの画一化の大きな要因であるように思う。
振りやすさ、扱いやすさという道具にとって最も大事にすべき点に大きく関わっているのが「ヘッドの重さ」である。この重さを選べるようにすることで、もっと多くのゴルファーが、もっと軽快に、もっと長くゴルフを楽しめるようになる。もちろん、ヘッドが軽ければいい!というわけではなく、あくまでも「選択肢の一つ」としてどうだろうか? という話である。