なにが一番好きかって、やっぱり戦うことなんだ
舞台のコロニアルCCのメンバーでコースからほど近いテキサス州在住のライアン・パーマーが第一組のオナーを務めた。すると彼は「少し緊張したけれどこの場に立ててとても興奮した」と 喜色満面で感想を口にした。
当たり前にあったツアーがなくなり戦いの場を失った選手たちにとって思いはパーマーと同じ。
「ゴルフは大好きだし、ゴルフが自分にさまざまなチャンスをくれた。でもなにが一番好きかって、やっぱり戦うことなんだ。ここ数カ月ゴルフというよりいかに競技に飢えていたかに気づかされた」というのは世界ランク1位のロリー・マキロイだ。
ツアーが中断してしばらくはクラブを触らずに過ごす開放感に浸っていたというが、それもつかの間。「次第に戦いたくて仕方なくなってきた。永遠とも思えた中断だけれど、トンネルの先に灯が見え始めたときようやく気づいたんだ。この瞬間(戦いの舞台に戻る瞬間)のために練習して準備をしているんだ、と。競技の醍醐味を味わえるのがなにより幸せ」
予選ラウンドは世界ランク2位のジョン・ラーム、3位のブルックス・ケプカとのラウンド。風が吹いた午後の組ということもありマキロイとケプカが2アンダーの39位タイ、ラームは57位タイとスタートダッシュはならなかった。それでも普段ならメジャーでしか見られない豪華な顔合わせに世界
中のゴルフファンはテレビの前で歓声を挙げていたことだろう。
しかし会場はシーンと静まり返っていた。無観客の戦いをダスティン・ジョンソンは「ジュニアゴルフの時代に戻ったようだ」といい、ラームは「カレッジゴルフ以来だね」、ブライソン・デシャンボーは「まるで全米オープンの予選会みたい」とつぶやいた。
たとえば16番パー3。初日7アンダーでトップタイの好発進を切ったジャスティン・ローズとジョンソン、デシャンボーの3人全員がナイスショットでバーディを奪ったのだが、そこには隣のホールのティショットの音が聞こえるほど完璧な静寂が漂っていた。
フィル・ミケルソンと同組で回った全米オープンチャンピオンの飛ばし屋ゲーリー・ウッドランドは「ミケルソンと一緒だとギャラリーがもの凄いことになる。自然とアドレナリンが出て球が飛ぶんだけれど、今日はまったく飛ばなかった。無観客はアドレナリンを抑える効果があるんだね(苦笑)」。
ニューノーマルの時代が始まった。どんな形であれ戦いたいという選手がいてそれを観たいというファンがいる。いつの日か両者の思いが一体となり会場に歓声がこだまする日が訪れることを願ってやまない。