たくさんは売れないが確実なニーズのあるものが「追加モデル」となる
「SIM」シリーズが好評のテーラーメイドから、追加モデル「SIM MAX-D」のドライバーとFWが、セレクトフィットストア限定で発売になった。「D」とはドローバイアス(=左にいきやすい)のことで、現行モデルの「SIM MAX」よりもつかまりがよく、よりスライサー向けという位置づけだ。
とはいえ、テーラーメイドのツアー向けラインナップは、市場ではつかまりを抑えた部類に入るので、相対的にはこの「SIM MAX-D」がちょうどニュートラルなつかまり挙動だといっても良いだろう。スライサー向けのモデルには、もっとドローバイアスの強いクラブがいくつも存在する。
実は、「SIM」以前の「M」シリーズの時代から、海外では「Dタイプ」と名付けられたドローバイアスモデルがラインナップされている。「M2」、「M4」、「M6」と歴代モデル全てに「Dタイプ」があり、海外のスライサーに支持されてきた。日本のスライサーのなかにも、並行輸入品で「Dタイプ」を購入するひとがいるほど、一定のニーズがあるのだ。
これらの「Dタイプ」は、日本では発売されておらず、今回の「SIM MAX-D」がひさびさのドローモデルの登場となる。ひさびさというのは、かつてはテーラーメイドも「R7 ドロー」や「バーナー ドロー」などのドローバイアスのラインナップがあったからだ。残念ながらこれらのクラブは、あまり人気を得ることがなかったようだ。
試打計測を行っているメーカーやショップの話を聞くと、ゴルファーの大多数がアウトサイドイン軌道のスライサーなのだという。したがって、本来はドローバイアスのクラブのニーズは高いはずなのだが、同社がここ数年、「Dタイプ」を発売しなかったのは、過去の経験から、大きなニーズが見込めなかったからではないだろうか。合う人が多いからといって、そのクラブが売れるかどうかはまた別の問題なのだ。
最近は、この「SIM MAX-D」のように、マジョリティではないものの一定のニーズがありそうなモデルを、ショップ限定やWEB限定などで、小規模に発売しているケースが増えてきた。先だって発表された、キャロウェイエクスクルーシブ限定の「マーベリック440」と「マーベリックサブゼロ◆◆◆」はその代表格だといえるだろう。
キャロウェイは昨年、石川遼が愛用して復活優勝に貢献した「エピックフラッシュサブゼロ◆◆◆」や「APEX MBアイアンツアーバージョンCE」などをキャロウェイエクスクルーシブ数量限定で発売し、大きな話題になった。プロが使用しているという話題性と限定発売という希少性が人気を高め、オークションで高額取引された例もある。たとえ少量であっても、こうしたレアアイテムが入手できるのは、ファンにとっては嬉しい試みだ。
タイトリストでは、小ぶりヘッドのドライバー「TS4」や中上級者向けアイアン「620MB」や「620CB」が、カスタムモデル専用やショップ限定などで、販売チャネルを絞っている。これも少量ながら、確実にニーズがあるモデルの例といえるだろう。在庫などのコストとリスクを抑えつつ、大々的かつ広範に売り出さないからこそ、これらの製品が存在出来るのだ。
昨今、ゴルファーのニーズはますまず細分化され、それによりマッチするモデルが必要となる反面、世界的にもゴルフクラブ市場は好調とはいえず、高コストになりがちながら、売上はそれほど見込めないという厳しい状況にある。これらカスタム専用モデルのような、マスではないニーズが狙えるのは、上記のような海外大手メーカー以外では、なかなか難しいだろう。