デビューから3年半でトップ選手の仲間入りを果たしたザンダー・シャウフェレ。彼の好調なパッティングを支えるパッティングコーチ、デレック・ウエダを在米ゴルフアナリストのアンディ和田が直撃取材! アマチュアにも役立つパット練習の秘密を取材した。

ストロークよりも目のキャリブレーション(調整)が重要

トッププロの仲間入りを果たしたシャウフェレですが、大学/アマチュア時代当時を振り返り、「僕のパッティングは本当に酷かった」と語っています。 スコアは「66」でも一番長い沈めたパットは2メートル……ということが頻繁にあったそうで、ショットは良いけど、パットは苦手。

画像: PGAツアーのトッププロ、ザンダー・シャウフェレ。アマチュア時代は「パッティングだけ見たらハンデ18のボギーゴルファー」とパッティングコーチのデレック・ウエダ氏が評するほど、パットが苦手だったという(写真は2019年のフェニックスオープン 撮影/姉崎正)

PGAツアーのトッププロ、ザンダー・シャウフェレ。アマチュア時代は「パッティングだけ見たらハンデ18のボギーゴルファー」とパッティングコーチのデレック・ウエダ氏が評するほど、パットが苦手だったという(写真は2019年のフェニックスオープン 撮影/姉崎正)

「貧乏大学生だったからレッスンフィーは払えないけど、上手くなりたいから教えて下さい」と藁にもすがる思いでウエダ氏に指導をお願いしたそうです。それから6年経った今もウエダ氏はシャウフェレのコーチを続けています。

「パッティングコーチ」というとみなさんが想像されるのは、パターがどのように動くかを確認したり、使っているパターが軌道やフェースコントロールにマッチしているかなどをチェックするといったことでしょうか。

しかし、驚くことにウエダ氏は当時大学3年生だったショフレのパッティングストロークに関しては最初の1年半は何も変えずに、パターに関してもなにも助言をしなかったそうです。ウエダ氏はいいます。

「パターヘッドの動き、ストロークは一番最後に確認する作業です。 他にしっかりと習得しなければいけない大事な要素はたくさんあります」(ウエダ氏)

当時のシャウフェレは真っすぐなラインがスライスラインに見えてしまうという難点があり、矯正はストロークではなく「目」から始まったということでした。

「目のキャリブレーション(調整)」でチェックするポイントは2つ。ひとつは真っすぐなストレートラインを見て、しっかり真っすぐと感じとれるか。もう一つは構えたときにしっかりと目線が狙いと一致しているか。この2点をチェックします。

このチェックには3つのボールを使います。完璧に真っすぐな約6メートルのラインを探し、ひとつ目のボールに構え、 ふたつ目は3歩先に置きます。 そしてみっつ目はまた3歩先。構えたときにこの3つのボールがカップまでしっかりと一直線に見えるかどうかをチェックします。

この方法はシンプルで簡単だと思われがちですが、なかなか一直線に見えるのは難しいことです。 構えたボールを見てから、残りの2つのボールを見たときに一直線に見えるようにするためには、頭の傾き、目線をどのように動かしていくかが重要なんだとか。

シャウフェレは、オープンウィークに練習するときに、この作業を今でも徹底的にするということです。移動や体の疲労があるときにはなかなか修正が上手くいかず、友人からラウンドに誘われていても、まずは「目の修正」を優先し数時間このトレーニングをするそうです。

画像: コーチのデレック・ウエダ(中)とパッティンググリーンで練習するザンダー・シャウフェレ(右)(写真は2020年のファーマーズインシュランスオープン 撮影/アンディ和田)

コーチのデレック・ウエダ(中)とパッティンググリーンで練習するザンダー・シャウフェレ(右)(写真は2020年のファーマーズインシュランスオープン 撮影/アンディ和田)

目のキャリブレーション(調整)がしっかりできたら、次はボールの転がりのチェックです。高速カメラを使うのが理想ですが、スマートフォンのスローモーション機能で録画するのもOKです。実際にインパクトしたときのボールはどのように転がっているか。転がりは、インパクト地点から約20センチ先から順回転していくのが理想です。

インパクト時点でパターのロフトが多すぎるとボールが浮いてジャンプし、ボールにはバックスピンがかかり、正しく転がるまで35〜40センチかかってしまいます。逆にロフトが少なかったり、マイナスロフトだとボールは順回転しますが、その後地面にめり込みバウンドするような動きをしてしまうので正しい転がりとは言えません。

適切な転がりを得るにはアドレス時のボール位置、シャフトの傾きをチェックすること。上りや下りのパット時には、この転がりが重要な要素となり、転がりが悪いとタッチを合わせるのが難しくなります。この転がりを、入念にチェックするのです。

スタート前の練習は40分以上

そして、シャウフェレは試合会場では練習器具を使って練習しています。「パッティングプレート」という鉄製の板で、ウエダ氏自身が友人に頼んで作ってもらったということでした。

毎朝プレー前に3メートルのストレート、フック、スライスと3つのラインをキャディにセッティングしてもらいウォームアップの一環にしています。一球一球を丁寧に合わせて訓練する作業はまさに職人。スタート前にパッティンググリーンで練習するツアー選手の時間を平均すると30分以下が多いと感じますが、シャフレはパッティンググリーンで通常40〜45分を費やします。

画像: 練習器具「パッティングプレート」を使って練習するザンダー・シャウフェレ(2019年全米オープン)

練習器具「パッティングプレート」を使って練習するザンダー・シャウフェレ(2019年全米オープン)

シャウフェレは練習時に「Blast」というストロークリズムを確認できる器具を使っているそうですが、みなさんもスマートフォンにメトロノームのアプリをダウンロードして自分に適したパターヘッドのテンポをマスターするのが大事だということです。 ツアープロの標準は80-84BPM(ビート・パー・ミニット。1分間の拍数)が基本リズム。

慣れた心地良いリズムだとグリッププレッシャーの握りも強くなりすぎず一定にキープしやすいそうです。自宅のパターマットでもできるので試してみる価値はありそうです。

ウエダ氏がシャウフェレを大学3年生で教え始めたときは、「パッティングだけ見たらハンデ18のボギーゴルファーだった」そうです。このことからも、正しい方向で練習を重ねればPGAツアーで活躍できるまでに成長することを示しています。

実は日本となじみが深く、好きな日本食は納豆というシャウフェレ。メジャータイトルを持っていない選手の中で松山英樹と並び、もっともメジャー優勝が期待される選手の一人です。今シーズン活躍が期待されるシャウフェレのパッティングに注目してください。

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