父の日に、亡き父への思い出をSNSに投稿
敬虔なクリスチャンの家庭に育ったシンプソンは父の手ほどきで幼い頃にクラブを握りアマチュア時代から将来を嘱望される存在だった。
父が息子に紹介したのはゴルフだけではない。ウェイクフォレスト大在学中に将来の妻・ドゥードさんを引き合わせたのもサムさん。夫婦は1男4女をもうけ父と同じように絵に描いたような幸せな家
庭を築いている。
パーキンソン病を患ったサムさんが他界したのは17年。危篤の知らせを受け息子は出場していたRSMクラシックを棄権し病床に駆けつけた。享年74歳。若すぎる死だった。しかし息をひきとる5年前には全米オープンで優勝に立ち会い「自慢の息子を持った」と目を細め至福の瞬間を味わった。
そして今年の父の日、シンプソンはインスタグラムに思い出の写真を投稿し「父がここにいてくれたらどんなにうれしいか。今思うのはお父さんがどれだけ特別な存在だったのか、ということ、逢いたい。あなたが僕をゴルファーに、そして男にしてくれた」と綴っている。
延期になった今年のマスターズウィークには父にまつわるオーガスタの思い出の記述も。97年、11歳だったシンプソンは父とマスターズを観戦。といっても観たのは練習日だけでタイガー・ウッズが12打差で優勝したシーンはテレビでの観戦だった。
画面越しでもタイガーは輝いていた。特に彼のスコッティキャメロンのパター、トレリウムT22が「
カッコよくて欲しくてたまらなくなった」
その翌年12歳のシンプソン少年は再びオーガスタを訪れた。ホームコースのヘッドコーチの手はずで父とともにラウンドするチャンスを得たのだ。
プロショップを覗くとなんとあのスコッティキャメロントレリウム22が販売されているではないか! 当時どこを探しても手に入らない貴重な1本がここにある。思わず身を乗り出す息子に父はいった。「今日76より良いスコアだったらこれをお前にやろう」
喜び勇んでスタートしたものの17番までで8オーバー。パターは風前の灯だ。そこで少年は「お父さん、18番でバーディなら76で回ったことにしてくれる?」と尋ねると父はこっくりと頷いた。しかしバーディならず。12歳は目にいっぱい涙を溜めて父が運転する車の助手席に乗った。
「何時間かたってガソリンスタンドに寄ったとき父がトランクにあるものを取ってきてくれ、と僕にいったんです。で、車から出てハッチを開けるとそこには真新しいスコッティキャメロントレリウムが! 見ると父も車の外に出て、あのいつもの笑顔で僕を見ていた。厳しい人だから彼がノーといえば絶対ノー。でもそのときだけは違いました」
RBCヘリテイジでの優勝も真っ先に天国のサムさんに報告したことだろう。いや、父はいつもの笑顔で雲の上から息子の勇姿を見守っていたに違いない。