女性ゴルファーのSNSにコメントしたくなったら「励ます」程度にしておこう
筆者が初心者の頃なので、もう四半世紀も前の話だ。一人、練習場でボールを打っていると、そばで練習していた中年男性に話しかけられた。「兄ちゃんは、山にはよう行くんかい?」と聞かれたが、それが、ゴルフコースでもよくプレーするのか? と聞かれていることがわかるのには、時間がかかった。コース=山という呼び方は、その地方では一般的なものだったのだろうか。
彼はそのうち、筆者のスウィングに口を出しはじめ、腕の位置やカラダの使い方などをアドバイスしはじめた。私は言われたとおりにやってみて、彼に礼を言った。帰り際に、彼が練習しているのを見たが、お世辞にも上手そうには見えなかった。これが、あの悪名高い「教え魔」なのだということは、後で気づいた。
女性ゴルファーが、一人でゴルフ練習場に行くとき、もっとも頭を悩ませるのが、この教え魔問題だ。何しろ、とにかく多い。色んなオジサンが話しかけてきて、アドバイスをしはじめるのだ。断ればいいのにと、簡単に思ってしまうのだが、冷たい態度をとると不機嫌になる教え魔もいるらしく、彼らとコミュニケーションを取るのが、ひどく苦痛なのだという。教え魔が憂鬱すぎて、練習から遠ざかる女性ゴルファーも少なくない。
最大限、善意で解釈するなら、教え魔も悪気はなく、本当に良かれと思ってやっているのかもしれない。筆者にもオールナイトの練習場で、深夜に練習していた際、一人練習している女性を見た経験がある。自己流で頑張っているのは良いのだが、正直、「これでは厳しいな」と思った。なんとか上手くいって、これからも続けて欲しいと願いつつ、さすがに声をかけたりはしなかったが、そんなシーンに出くわして、思わず口を挟みたくなるベテランゴルファーもいるのかもしれない。
教え魔の面白いところは、アドバイスしていることが、自分が目下、関心があることだったりすることだ。ボディターンだったり、体重移動だったり、ハンドファーストだったりと、自分がモノにしたい、あるいは大事にしているポイントを強調することが多い。教え魔のアドバイスは、実は心の鏡なのだ。
最近は、SNS上でスイングやプレーをアップしている女性ゴルファーに、コメント欄で技術的なアドバイスをしたり、ガラの悪い連中になると、ダメ出ししたり、飛距離が出ないことを揶揄したりするらしい。なんとも品のない行為だが、彼らにしてみれば、言わずにはいられないらしい。
ネット上では、教え魔をはじめ、ベテランゴルファーからの嫌がらせで傷ついたビギナーや女性ゴルファーの話が毎日のように上がっている。後ろから打ち込んできたとか、「うるさい」と怒鳴られたとか、「コースに出るのが早い」と言われたとか、信じられない話を聞くことも少なくない。そんな人に限って、マナーを声高に主張したりするので、始末に悪い。
どうしても、ビギナーに声をかけたり、SNSにコメントを入れたくなったら、せめて励ます程度にするべきで、技術の話など論外だ。ひょっとしたら、そのアドバイスは正しいものなのかもしれないが、ゴルファー自身に受け入れ体制が出来ていないと、どんな素晴らしいアドバイスも身にならないものなのだ。
だから、技術的なアドバイスは、努めてしないほうが良さそうだ。そんなアドバイスで簡単に上手くいくほど、ゴルフが甘くないことは、ベテランゴルファーならよく知っているはずだ。まずは、ビギナーが気持ち良くゴルフできるように配慮するのが、ベテランゴルファーとしての勤めではないだろうか。教え魔をやる前に、好ましい立ち振舞があるはずだ。