ティショットでは必ずボールとフェースを拭くべし
雨の日のゴルフでいいスコアが出ない原因の一つに、普段よりバックスピンが少なくなってしまうことが挙げられる。インパクトの瞬間にボールとクラブフェースの間に水滴が介在することでスリップ現象が起き、摩擦力が低下して極度のロースピン状態になってしまうのだ。
現在のゴルフクラブ、とくにドライバーはロフトが立っている上にドライ条件でもロースピンボールが打ちやすい重心設計になっている。ゴルフボールもロングショットほどスピンが減る設計であり、これに雨によるスリップ現象が加わればバックスピンが1000回転前後となることも珍しくはない。バックスピンが入らないことによって、コントロール不能のドロップボールになってしまうのだ。
だからこそ、ティショットを打つ前には必ずクラブフェースとボールをタオルでしっかりと拭き、晴天時と同じインパクト状態に近づけることがナイスショットの絶対条件となる。セカンドショット以降はボールにこそ触れられないが、クラブフェースを拭くことは可能。ロフトが大きく打ち出し角度が高いほどボールは予想以上に飛んでしまう(フライヤー現象)。ショートアイアン、ウェッジではとくに打つ前の水分除去、溝のクリーンアップに心を配りたい。
どうしてスピンがよく入る!? 彫刻溝の意外な役割を知ろう
ここでバックスピンのメカニズムについておさらいするが、基本的に強いバックスピンを発生させるのは、フェース面とボール表面の間に生まれる摩擦力だ。ボールの面とフェースの面が直接的にベタっと密着することで強いスピンが生まれるのである。このため現在のウェッジはフェース面を機械加工で削り、真っ平に仕上げているものが多い。フェース面が凸凹では密着性が悪くスピンがかかりにくいからだ。
スコアリングライン(溝)を彫刻で削って作ると「エッジがシャープになってカバーに食い込みスピンがかかる!」と言われるが、そもそもの発端はプレス(圧力)で溝を作る従来方式では、溝と溝の間のフェース面が盛り上がり、ボールとの接触面積が減ってしまっていたからだ。そこで機械加工でフェースを平らに削り、そこに彫刻で溝を切る。そうすることで平らなフェース面が保たれ、高い摩擦力(密着力)がキープできるということなのである。
フェースの溝の役割は、ボールとフェースの間に挟まった土や芝カスを中に取り込み、溝の左右に放出することにある。これは道路脇に作られた側溝と同じ。路面(フェース面)に水溜りやぬかるみを作らないための排水口の役割といえる。
スコアリングラインのシャープなエッジは、カッターの刃であり、シュレッターとも言われる。鋭い刃で挟まった芝の葉や茎を細切れにし、溝内に格納、あるいは空中に飛びやすくするのである。
二次的な効果としてボール表面に溝のエッジが食い込む!ということもあるかもしれないが、基本的にはシャープな溝は
【1】フェースの平滑性を保ち
【2】シュレッダーのように芝を切り刻み
【3】溝内にゴミを格納し
【4】ボールとフェース面の密着性を保って、摩擦力を上げるためにあるのだ。
鋭いバックスピンの正体はボールとフェースの密着性、そしてヘッドスピードの速さだ。いくら最新のフェース/スコアリングラインのウェッジを使っても、インパクトでスピードを減速してしまえばバックスピンはかかりにくい。アプローチのような小さい動きでもヘッドスピードを維持するためには、ソールのバウンス効果を利用してヘッド軌道を地中方向ではなく、振り抜き方向にスムーズに転換することがもっとも重要になる。そうすることでインパクトでヘッドが減速することを防ぐことができるのだ。
バックスピンをきちんとかけたければ、
・平らなフェース
・容積の大きい溝
・シャープな溝のエッジ
・地面に刺さらないソール
のウェッジを選ぶべき。そして雨の日は必ずフェースの水分やゴミを除去してから打つ。それが梅雨時でもコントロールの効いたいつも通りのゴルフをするためのコツである。
ちなみに、現在多くのツアープレーヤーがアイアンセットのピッチングウェッジではなく、ウェッジシリーズの46〜50度のウェッジを使うのかといえば、ウェッジシリーズの方がフェースが平らで溝もシャープに作られているからだ。アイアンとウェッジでは同じロフトでも“摩擦能力”が違うということも覚えておきたい。