国内女子ツアー「アース・モンダミンカップ」を制したのは、5年ぶりの復活優勝となった渡邉彩香。激闘の最終日の模様を、ライブ配信を介してスタート時から通しで観戦したプロゴルファー・中村修がレポート!

約5年ぶりの復活優勝

国内女子ツアー「アース・モンダミンカップ」の最終日は、誰が優勝してもおかしくないほどの接戦でしたね。そんななか、鈴木愛とのプレーオフを制して勝利を収めたのは渡邉彩香。2015年シーズンの「樋口久子Pontaレディス」以来、約5年ぶりとなる復活優勝です。

試合全体を振り返ってみると、ターニングポイントとなったのは16番ホール、382ヤードのパー4でしょう。トータル11アンダーで首位スタートした黄金世代の田中瑞希ですが、前半でスコアを伸ばせず、16番ホール開始時点でスコアを1つ落としてトータル10アンダー。

一方、渡邉はここまで3バーディ1ボギーでトータル9アンダー。鈴木もここまでで4バーディ1ボギーとスコアを伸ばしトータル10アンダーでした。ここで、なかなかスコアを伸ばせず苦しい展開が続いていた田中のドライバーショットが大きく右に曲がり、このホールをボギーとしてしまいます。

一方の渡邉・鈴木はこのホールでバーディを奪取。最終日開始時点で首位に立っていた田中でしたが、「最終日・最終組・首位スタート」のプレッシャーからか、3日目までのスウィングと比べて体が動いていないように見受けられ、3打差の有利を活かすことができませんでした。続く17番ホールでバーディを奪取し、望みをつなぎますが18番のバーディパットを決めきれず、プレーオフには残れませんでした。

ただ、同組でプレーした2001年生まれの西郷真央、西郷と同学年の笹生優花らとともに、開幕戦からたしかな実力を見せてくれました。今後に大いに期待したいと思います。

画像: 5年ぶりの復活優勝を果たした渡邉彩香(Getty Images/JLPGA提供)

5年ぶりの復活優勝を果たした渡邉彩香(Getty Images/JLPGA提供)

トップの田中瑞希を1打差の追う立場から16番、17番と連続でバーディを奪取して、トータル11アンダーで鈴木とのプレーオフに突入すると、両者ティショットをフェアウェイ左のラフに入れ、4打目のパット勝負という展開に。

上りの6、7メートルのパットをわずかに右に外しパーとした鈴木に対し、渡邉は下り2メートル強のバーディパットを見事沈め、優勝を決めました。ライン通りにきっちりボールが転がってくれたのか、カップインする前に勝利を確信し、左手を高く掲げていましたね。

画像: プレーオフのバーディパットは、カップイン前に勝利を確信しガッツポーズ(Getty Images/JLPGA提供)

プレーオフのバーディパットは、カップイン前に勝利を確信しガッツポーズ(Getty Images/JLPGA提供)

プレーオフ後のインタビューでは「(この1勝まで)長かったですね。ここ2、3年は結構苦しかったので……。川口キャディも含めて、自分以上にみんなが私のことを信じてくれたので、それがすごくうれしかったし、それに応えられて良かったです」(渡邉)と涙ながらに語っていました。

優勝を決めた瞬間、長年渡邉を支えてきた川口淳キャディの瞳にも光るものがありました。苦しい時期もありましたが、それを乗り越えて、二十歳前後の若い世代が躍進するなかで、見事勝ち切りました。

優勝の要因として大きいのは、やはりショットでしょう。プレーを見ていても調子が非常に良く、「(4日間で)今日が一番良かったので、欲が出そうなところをうまく抑えて自分のプレーに集中できました」(渡邉)と語っていました。

技術的には、それまでに見られたフォローで左に上体が突っ込んでいくクセがもなくなっていて、ドライバーを気持ちよく振り切れていました。フォローで突っ込まなくなったことで、フェースが返りすぎたり、入射角が鋭角になりすぎたりすることが防げるようになり、安定したフェードが打てるようになったと思います。苦しい時期に、コツコツ努力を続けてきたことが、スウィングに表れていました。

途中難しいコンディションの日もあった4日間を通じての渡邉のパーオン率は80.5%。ショットメーカーの復活は、数字にもよく表れています。

ベテラン選手の復活優勝に若い世代の躍進と、ワクワクする展開が続いた開幕戦となりました。続く2戦目のスケジュールはまだ不透明ですが、最短で8月開催の「NEC軽井沢72ゴルフトーナメント」となります。

またしばらくお休みとはなりますが、その休止期間が選手たちにどう働くのか。それも含めて、まだ見ぬ次戦が楽しみでなりません。

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