イ・ボミの2年連続賞金女王をサポートするなど、“優勝請負人”として知られるプロキャディの代表格・清水重憲。アース・モンダミンカップでは、昨年の賞金女王・鈴木愛とタッグを組み、プレーオフで渡邉彩香に敗れたものの、見事なプレーを披露した。百戦錬磨のベテランキャディをして「勉強になった」と言わしめた、鈴木愛との1週間を振り返ってもらった。

――「アース・モンダミンカップ」を振り返ってみていかがでしたか?

清水重憲キャディ(以下、清水):こういう(コロナ禍の)情勢で試合を開催していただいた、アース製薬、JLPGA(日本女子プロゴルフ協会)、関係者の方々に感謝しかないです。本当にありがとうございました。

――バッグを担いだ鈴木愛プロは惜しくも2位でしたが「さすが」というプレーでした。

清水:鈴木愛選手は、7カ月ぶりの試合でしたが、4月、5月はゴルフをまったくやっていなかったらしいんです。2月は開幕に向けてがっつりと(練習を)やって頑張っていたらしいんですけど、(開幕戦の)ダイキン(オーキッドレディス)の中止が決まって、3月はまだいつ再開するかわからないということで、ぼちぼち練習はしていた。でも4月頃から緊急事態宣言が出て、練習場も閉鎖されていたりして、ホントに練習していなかったたらしいんです。

なので、練習ラウンドではアイアンでダフったりしてトッププロらしくないミスをしていました。7カ月ぶりのツアーというのと、4月5月に練習をしていなかったという状況で、そう上手くいくこともないだろうという話をしながら、ミスを承知でやっていました。

――それでも2位。

清水:改めて感じたのは、ゴルフ脳がすごく優れていることです。ドライバーショットがそれほど良くなかったのですが、パー4、パー5でピンを狙えないというところから(セカンドショットを)打つことはなかったんです。強いていうと(2日目、3日目と入れた)9番の池だけはダメでしたが、ラフからでも、「こっちのラフだったら(入っても)しょうがない」という風に打っていってました。マネジメントというか、そこにコントロールする技術は本当に優れていると思います。

画像: 2020-21シーズンの開幕戦「アース・モンダミンカップ」でプレーオフの末2位になった鈴木愛(右)と清水重憲キャディ(左)(Getty Images/JLPGA提供)

2020-21シーズンの開幕戦「アース・モンダミンカップ」でプレーオフの末2位になった鈴木愛(右)と清水重憲キャディ(左)(Getty Images/JLPGA提供)

――無観客でギャラリースタンドもないことは影響がありましたか?

清水:スタンドがないと、(グリーンが)少し遠く見えるんです。2日目の(池に入れた9番ホールの)場合は、1クラブ上げて打ったのにアゲンストが思ったより強くて池に入ってしまいました。スタンドがあれば(スタンドにさえぎられて)そこまで吹かないし、見え方も違うのは感じましたね。

——調子が悪い中でも、プレーオフまで残れた要因はどういったものだったのでしょうか。

清水:彼女のすごいところは、すごく準備をするところなんです。準備をめちゃくちゃして、万全にして試合に臨むから上手くいかなかった場合に自分に腹を立てるんですよね。「こんなに準備してきているのに、なんでまだうまくいかないの」という感じがある。ですが、今回は準備不足だと自分でも認めているので、上手くいかなくて当たり前というくらいの感じで(プレーして)いました。それで少し笑顔があったりとか、リラックスしてやってるようには見えたのかなと思います。愛ちゃん、今回笑顔が多かったねと周りからも言われました。

中止(最終ラウンドが月曜日に順延)になった日曜日も、クラブを握ってないらしいです。土曜日の終盤に疲れが見えたので、本人もそれを感じていたらしく、まず優先するのは体を休めること。賞金女王のゴルフを勉強させてもらおうと思っていましたが、本当にすごく勉強になりました。

画像: ドライバーショットが本調子ではなくラフに入れてもピンを狙えるサイドにしか外さないのが鈴木のゴルフ脳の高さだと清水は言う(Getty Images/JLPGA提供)

ドライバーショットが本調子ではなくラフに入れてもピンを狙えるサイドにしか外さないのが鈴木のゴルフ脳の高さだと清水は言う(Getty Images/JLPGA提供)

——清水さんをして「勉強になった」と言わしめるのはすごい。ほかにはどのあたりが勉強になったのでしょうか?

清水:本調子でなくてもスコアメイクできるんだ、ちゃんと頭を使っていけば。そういうところを改めて感じました。

野球でいうそのチームのエースって、本調子じゃなくても6回、7回を3失点以内でおさえてゲームを作るというか、序盤に大量失点でノックアウトされないじゃないですか。そんな感じでしたね。ゲームをしっかり作ってくるなという。このまま普通にやれば愛ちゃんは賞金女王争いをしてくるんだろうなと思いますし。若手もそういうところを見習ってもらって。上手いだけじゃないというのはありましたね。

——具体的には?

清水:たとえば食事もしっかり摂ります。3ホールに一回とか。今回はギャラリーだけでなくマネジャーやコーチも(コース内に)入れなかったじゃないですか。なので、キャディバッグに食事関係も入れて行くのですが、「何番ホールで食べる」というのが決まっているんですよね。(イ・)ボミもそうだったのですが、3ホールに一度少し口に入れるというのは同じでした。普段はマネジャーさんが持っていて、(口にするべきタイミングで)出してくれるので、あんまり気にしていなかったのですが、そういうのもきっちりルーティンがありました。やっぱり、トップの選手は食べるんだな、と。若手で食べない選手もいるのですが、エネルギー補給をするのは大事なんだと思いました。

ただ単に「鈴木愛は上手い」という印象だと思いますが、本当にそれだけじゃないんですよね。本当に考えられている。ゴルフって調子の波があるじゃないですか、今回は高いほうの波じゃなかったですが、マネジメントであったり考え方であったりでここまで来られるというのは、私もすごく勉強になりました。

(インタビュー:みんなのゴルフダイジェスト編集部)

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