チーピンってどんなミスのこと?
チーピンとは、打ち出したボールが極端に左方向へ曲がってしまうミスのこと。俗語なので定義はないが、基本的にはターゲットラインよりも左に打ち出し、さらに左に曲がる球のことを指す。引っかけ、ダグフック、などという言い方もある球筋だ。
チーピンは弾道が低い場合がほとんどで、スピンも少ないため、ランが出やすい。左に打ち出し左に曲がり、なおかつランが出ることで、とにかく左OBに行きやすいため、多くのゴルファーが忌み嫌うミスだ。
ちなみにチーピンという呼び名は、麻雀で用いられる麻雀牌のひとつである七筒(チーピン)の図柄の3つの黒点が、極端に左へ曲がるミス弾道に似ていることに由来する。
初心者のミスショットとして代表的なスライスが右方向へのミスであるのに対し、チーピンはボールをつかまえてドローボールを打とうとした場合などに起きやすいことから、初心者を脱した中・上級者にありがちなミスの一種と言えるが、スライサーがスライスをさせじと無理やりフェースを返した場合にも出る。
チーピンはなぜ起きる?
弾道が曲がる仕組みは、1999年に提唱された「新飛球法則(Dプレーン理論)」で詳しく説明されている。
これによれば、ボールの打ち出し方向の約80%(ドライバーの場合)はインパクト時のフェース向きに影響され、ボールの曲がり方を決めるボールの回転軸は、クラブの軌道とインパクト時のフェース向きのズレによって変わるとされ、この考え方は今日のスウィング理論の根幹となっている、
同理論に則って考えれば、チーピンが起こるのはインパクトでクラブ軌道に対してフェース向きが大きく閉じてしまっている(左を向いている)場合。これにより、打ったボールの回転軸が大きく左に傾き、結果打ち出されたボールは大きく左へと曲がってしまうわけだ。
チーピンには2つのタイプがある
チーピンはターゲット方向に対して左に打ち出て左に曲がる弾道がほとんどだが、真っすぐか、あるいはやや右方向に打ち出して左に曲がってしまうタイプもある。
左に打ち出して左に曲がるタイプ
前者は「引っかけ」とも呼ばれ、とくにスライスを嫌がるビギナーゴルファーによく見られるミスショット。
ボールをつかまえようとして上体がかぶることで、ターゲットに対してクラブ軌道がアウトサイドインになってしまい、その軌道に対してフェースがかぶった状態でインパクトを迎えると、左に出て左に曲がるミスが起きる。
真っすぐか、やや右方向に打ち出して左に曲がるタイプ
一方、後者は中・上級者が陥りがちなチーピンのミス。ドロー系の弾道をイメージしてインサイドアウト軌道でスウィングするものの、インパクト直前に開いて入ってきたヘッドを急激に返してしまうことで、クラブ軌道に対してフェースがかぶるパターンだ。
チーピン改善のためのチェックポイント
左に打ち出すタイプは下半身リードを心がけよう
まず左に出て左に曲がるタイプのチーピンは、前述したようにスライスを恐れるあまりに上体がかぶり、意図せずアウトサイドイン軌道になってしまうことが主な原因。
このタイプのチーピンに悩むゴルファーは、まずは上体のかぶりを防ぐためにスタンスの向きに気を付けたい。
ターゲットに対して両肩・腰・ひざのラインが平行となるスクェアスタンスで構えるのが基本。右へのミスを嫌がるあまり、左を向いて(スタンスだけオープンに)構えてしまうとアウトサイドイン軌道になりやすく、かえってチーピン、スライスの危険が高まってしまう。
さらにもう一点、下半身の動きが腕・クラブよりも先行する「下半身リード」のスウィングを身につけてみよう。
スウィング中に足・腰→胸→腕→クラブの順序で動いていくようなスウィングが下半身リードの理想的な動き。この順番で動くことで、スウィングのエネルギーが下半身から上半身、そしてクラブへと効率良く伝わり飛距離を出せるし、クラブが自然と正しい軌道を通るため、上体がかぶるなどのミスもなくなる。
と言っても、これらの動きを頭で考えながらスウィングするのは至難の業。まずは下半身リードの感覚をつかむために「イチ・ニイ・サン」と一定のリズムに合わせてスウィングする練習ドリルを行ってみよう。
やり方は簡単。イチで右足へ体重を移動し、それに引っ張られるようにバックスウィング。クラブがトップに上がり切る直前にニイで左足を踏み込み、サンでフィッシュまで振り抜く。クラブより先に体を動かすことを意識しながら、一定のリズムでスウィングすることで、自然と下半身リードを身につけることができる。
また、ゴルフクラブよりも重量のある野球のバットやバット型の練習グッズなどで素振りをするのも、下半身リードを身につけるのには効果的。重さがあるぶんゴルフクラブと違って手打ちになりにくく、下半身を使ったスウィングを体感しやすいだろう。
真っすぐ、あるいはやや右に打ち出すタイプはアドレス時のグリップに注意
インサイドアウト軌道のスウィングでチーピンが出てしまう原因としてとくに多いのは、アドレスの段階でフェースがかぶった状態で構えてしまっているということ。単純なことのように思えるが、正しいグリップの握り方ができていないためにチーピンが多発する、なんてことは意外と多い。
正しいグリップの握り方は、手元とクラブシャフトが体の正面にある状態で、ターゲットに対してフェースがスクェアになるようにグリップするのが正解。なのだが、アマチュアのなかには、ハンドファースト、あるいはハンドレートの手元のポジションを作ったあとでグリップしてしまうゴルファーが多いのだ。
間違ったグリップの仕方をするとどうなるのかは、試しに手元のポジションを作ってからフェースをスクェアに合わせてグリップし、そのまま体の正面に手元とクラブを戻してみるとわかりやすい。
たとえばハンドファーストのポジションでグリップすると、ソールしたときにフェースは開き気味に見えるが、そのまま体の正面に手元とクラブを戻してみると、実際はターゲット方向に対してフェース面が閉じた状態になってしまっていることがわかるだろう。
「ハンドファーストで構えたときにはフェースが開いて見える」というのがさらに厄介で、この間違った認識を持ったままグリップを作っていると、チーピンが出た際にフェースがかぶらないようさらに開いて構えようとするのだが、実際にはよりチーピンの出やすいフェースが大きく閉じた状態を作ってしまう、なんてことになってしまう。
グリップする際は、両足を閉じた状態で、手元とクラブが体の正面に位置するように置いて握ることを普段から心がけよう。
また、スウィング中のフェースローテーションの度合いが強くなり過ぎるのも、インサイドアウト軌道のゴルファーがチーピンのミスをする原因のひとつ。
とくに左手を内側にひねった状態で握るストロンググリップ(フックグリップとも)は、いわばフェースがかぶった状態を作るグリップ。
ストロンググリップで握ってなおかつフェースローテーションを積極的に行ってしまうと、元々閉じていたフェースがさらに閉じることになり、チーピンにつながりやすい。チーピンに悩むゴルファーは自分のグリップを今一度見直してみよう(ただし、スクェアグリップに握ればチーピンが出ないというわけではない)。
ボール位置
ボールを適切な位置に置いているかどうかも、弾道に大きく影響を及ぼすポイントだ。ドライバーの場合適正なボール位置は左足かかと線上となるが、これよりも左寄りに置きすぎると、フェース面はスクェアな状態を通り過ぎて左を向いた(閉じた)状態でインパクトすることになってしまう。
逆に、右寄りに置いた場合は、フェースが開いた状態でインパクトすることになる。ただし、フェースが開いた状態でインパクトするのを嫌がって無理やりフェースを返してしまうと、チーピンの原因となる場合もある。まずは、極端に左寄り、右寄りになっていないかを確認しよう。
コースでの応急処置
上記の点に注意しても、コースで突発的にチーピンが出てしまうことはあるだろう。とくに左サイドがOBのホールでのドライバーショットなど、左へのミスを絶対に防ぎたい場面では、応急処置的な手段として普段よりもボール位置を適正位置より右側に置き、低くティアップするのもひとつの手だ。
絶対にボールを左に飛ばしたくないのであれば、スウィングを変えるのではなくボール位置を調整することで、フェースがかぶる前の開いた状態でインパクトすれば良い、というわけだ。こうすることで、チーピンは(出ないとは断言できないが)出にくくはなる。いずれにしても、根本的な解決法ではないので、スタンスの向き、グリップ、ボール位置といった基本を確認することをお忘れなく。