女子ツアー「アース・モンダミンカップ」で劇的な復活優勝を果たした渡邉彩香。そんな彼女が使用していたドライバーは2015年モデルのブリヂストン「J015」だった。5年も前のモデルだが、果たしてその性能は? ゴルフトレンドウォッチャーが打ってみた!

J015はブリヂストンのカスタム専用ドライバー

「アース・モンダミンカップ」で、5年ぶりの復活優勝をとげた渡邉彩香。インターネット中継では、彼女の使用するオレンジ色のドライバーが目立っていた。このモデルは、2015年9月に発売されたブリヂストンの「J015」というモデル。奇しくも5年前、最後に優勝した際に使用していたのが、この「J015」だった(※5年前は黒色ヘッド)。渡邉は昨年のQT直前にこのモデルにチェンジし、QTを19位で通過。そして今回の優勝へと結びつけた。

「J015」は、工房施設のあるブリヂストン認定のショップ限定のカスタム専用モデルで、フィッティングを受け、ヘッドに自分好みのシャフトを装着して購入するという意欲作だったが、専門性の高い販売手法のためか、一般ゴルファーの認知は低かった。5年ぶりの復活優勝に貢献したということで、ここへきて改めて注目されている。

画像: アース・モンダミンカップで5年ぶり優勝を掴んだ渡邉彩香(Getty Images/JLPGA提供)

アース・モンダミンカップで5年ぶり優勝を掴んだ渡邉彩香(Getty Images/JLPGA提供)

こうなると打ってみたくなるのが、人情だろう。筆者も早速ネットで物色し、程度の良い中古品を探してみた。5年前のモデルとはいえ、ヘッド単品で6万5千円、完成品は10万円以上する場合がほとんどという高額クラブなので、中古品も思ったほど安くなっていない。現在の相場は、1万5千円〜3万円といったところだ。その中で、ロフト角9.5度で、癖のない挙動の「ディアマナB 60S」が装着されたモデルを購入した。

「J015」の特徴は、ディープフェース&ディープバック。450ccだが、最近のクラブにはないヘッドの厚みがあるので、少し小ぶりに見える。ブリヂストンらしい丸顔で、かつての「ツアーステージ」のファンが好みそうな形状だ。

プロパーのモデルの中では、2009年12月に発売された「ツアーステージ Xドライブ703」に似ている。やはり、本格派の丸型形状とディープバックで人気を博したモデルだ。公表はされていないが、両モデルとも、ブリヂストンとタッグを組んで、かつて一斉を風靡した製造会社によるものだと言われている。

購入した「J015」を練習場で打ってみた。構えてみるとフェースはきもちオープン。同社の現行モデルに比べると、ライ角はかなりフラットだ。重心距離はそれほど長くないはずだが、ボールがつかまりやすいモデルではなく、自分でつかまえて弾道を作っていけるようなヘッドだ。

画像: 渡邉彩香が使用するドライバー、ブリヂストン「J015」を打ってみた

渡邉彩香が使用するドライバー、ブリヂストン「J015」を打ってみた

程よくつかまるものの、基本的には左をあまり気にすることなく、叩いていける。やや低めの打音で、フェースにくっつく時間が長く感じるが、これによってボールをコントロールする感覚が出やすいだろう。ディープバックらしく、球を押すような厚い当たりになると、強いライナー弾道で飛んでいく。低スピン性能はかなり高く、表示ロフトに近い、立ち気味のロフト角になっていると思われる。

実際に打ってみると、渡邉がわざわざ5年前のこのモデルに変えた理由も推測できる。昨年まで愛用していた「JGR」(※プロトタイプ)は、ボールのつかまりが良いヘッドだ。ライ角はアップライトで、ヘッド挙動はドローバイアスが強い。スライスで飛距離をロスしているようなゴルファーと親和性が高く、ハマるとドローボールで大いに飛距離を伸ばすことが出来る。

昨年、スイッチした女子プロたちが「JGR」で飛距離を伸ばしたのは記憶に新しい。彼女たちはスライスを打っているわけではないが、よりつかまったスピンレスの強い弾道になったことが、飛距離アップのひとつの要因だろう。平均的な女子プロと同じくらいのヘッドスピードであれば、恩恵を受けるアマチュアも多いはずだ。

一方、渡邉はヘッドスピードが50m/sに迫ろうかという、女子では屈指のパワーヒッターで、しかもフェードを持ち球にしている選手だ。不調時は、ドローを試したり、曲がりを抑えようとしたと伝え聞くので、そのときは「JGR」が良かったのかもしれない。しかし、彼女のようなハイスピードヒッターが、左に打ち出して、右に曲がるフェードを持ち球にするなら、「JGR」のつかまりやすい特性とは相性が悪いのではないだろうか。

高速ヘッドスピードのスウィングの中、わずかな差で、少しフェースがかぶったりしたら、左に打ち出して左に曲がり、しかも飛ぶという最悪の球筋になる。つかまり特性が強いクラブは、つま先上がりから打っているようなものなので、そんなリスクも自ずと高まる。不調時は、つかまって左、それを嫌がって右みたいな状態になっていたようだが、それはクラブの特性と無関係ではないだろう。

「J015」は操作性が高く、逃せば右にいきやすいクラブなので、渡邉の持ち球であるフェードが、より打ちやすいだろう。左にいかない安心感があれば、スイングも振り切りやすくなる。渡邉はシャフトを「JGR」の際の「ディアマナDF」から「ツアーAD PT」に変更しているが、(もともと装着されていたシャフトだろうが)先端剛性が高く、左にいかせたくないシャフト(ディアマナDF)から、素直で操作性の高いシャフト(PT)への変更は、そのままヘッドの特性の違いを表していると言えそうだ。

画像: 秋にはツアーBの最新モデルを発売する予定だ

秋にはツアーBの最新モデルを発売する予定だ

渡邉が、5年前のディープなフォルムのドライバーを復活させたのは、彼女のような女子のハードヒッターで、かつ持ち球がフェードという選手が使いやすいモデルが、現行製品にないという皮肉な現実も見え隠れする。この秋には、ブリヂストンは例年どおり「ツアーB」の最新モデルを発売するだろうから、それがハマればスペアなどの問題は解決するだろう。

いっそ、本数限定で「J015」の復刻版を出してみてはどうだろうか。ニーズはあまりなさそうだが、喜ぶゴルファーも存在しそうだ。

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