置きに行く用、ドロー用、フェード用の3本ドライバーで攻める
“やす”氏のキャディバッグを見せてもらうと、バッグの中にドライバーが3本入っている。そのうちどれが実際にコースで使うドライバーなのか訊ねると、驚きの答えが返ってきた。3本すべてを使うだというのだ。
「僕はドライバーを3本入れていますが、ドライバー1本の時代は終わると考えているんです。ホールによってティショットを置きにいきたいときと、振りにいきたいときがあると思いますが、1本のクラブでそれを打ち分けるのは難しいですよね。だからこそ、最低限2本は必要なんです」
2006年のマスターズで、フィル・ミケルソンがドロー用、フェード用の2本のドライバーをバッグに入れて戦ったのは当時大きな話題となった。やす氏の発想はそれに近い。ただ、言わんとしていることはわからないではないものの、それならフェアウェイウッドやユーティリティでティショットを打てばいいのでは? という素朴な疑問も湧いてくる。
「セオリーではそうですが、YouTube上で『フェアウェイウッドでティショットしたときの成功率」をアンケート調査したとき、『成功した試しがない』っていう人がほとんどでした。だからこそ、短尺シャフトにして置きにいけるドライバー、1.5番ウッドのほうがいいと思うんです」
やす氏のセッティングを見ると、1.5番ウッド的な安定して飛ばせる44.5インチにカットしたドライバーをエースに、ドローとフェード、それぞれが打ちやすい“振りに行く”ドライバーを2本追加し、3本でセッティングしているという。ヘッドは安定型がつかまりのいいG410プラス。振りに行く用の2本は、G410LSTで統一している。
シャフトは自身が開発した「BACHEAT(バチート)」というモデルで、3本それぞれの目的に合わせた特性を持つシャフトを組み合わせている。つまり、多ドライバーセッティングを実現するためにシャフトまで作ってしまったとも言えるわけで、“本気度”が伝わってくる。
やす氏の腕前は、平均で90台と、プロでもなければ上級者というわけでもない、いわばアベレージゴルファー。プロや上級者のように置きに行ったりドローやフェードを打ち分けたりできないからこそ、クラブに頼るということだろう。スコアにおけるティショットの重要性が高いアベレージゴルファーだからこその悩みから生まれた発想だ。
こうなると気になるのは「何を抜くのか?」だが、3本のドライバーの下は5番ウッド。その下は、コースによってユーティリティ、または5番アイアンを使い分けるという。ドライバー、ドライバー、ドライバー、5番ウッド、5番アイアン……という、かなり極端なセッティング。
ゴルフをしていれば、どうにも構えにくいホール。失敗しそうなイメージばかりが湧いてくるホールは必ずあるもの。そんなモヤモヤを抱えたまま打つティショットは大抵失敗するものだが、3本入れればその不安も解消されそう。
3本は極端だが、ためしに短尺シャフトで“置きにいく用ドライバー”を作るのはアリ……かも。