先週開催されたJGTO共催「ゴルフパートナー エキシビショントーナメント」。同大会はインターネット放送されていたが、他の試合ではない特徴的な放送となった。その中身とは!?

待ちに待った試合に若手プロが躍動した

JGTO(日本ゴルフツアー機構)が共催する大会、「ゴルフパートナー エキシビショントーナメント」が、7月9〜10日に茨城県の取手国際ゴルフクラブで行われた。もともと、プロとアマチュアが一緒に回るプロ・アマ競技「ゴルフパートナー PRO-AMトーナメント」としてツアー日程に組み込まれていた大会だが、こちらは新型コロナウィルスの影響で断念。外国籍のツアーメンバーの参加が難しいため、国内プレーヤーによるツアー外の非公式トーナメントとして、2日間の日程で開催されたものだ。

すでにアマチュア予選会が各地で行われていたこともあり、プロ・アマトーナメントが行われなかったこと自体は残念だった。過酷な予選を突破した選手にとっては、なおさらだろう。PGAツアーでは、「AT&T ペブルビーチ プロ・アマ」が有名だが、日本でのプロ・アマトーナメントがどのようなものになるか、興味が湧くファンは少なくないのではないだろうか。今年は仕方なかったが、来年開催できることを楽しみにしたい。

画像: 選手や関係者274人全員がPCR検査を実施。結果は全員が陰性で安心して開催することができた「ゴルフパートナー エキシビショントーナメント」(写真/JGTO images)

選手や関係者274人全員がPCR検査を実施。結果は全員が陰性で安心して開催することができた「ゴルフパートナー エキシビショントーナメント」(写真/JGTO images)

1月にはシンガポールオープンが開催されたが、その後のトーナメントは中止が相次ぎ、この大会は非公式とはいえ、事実上の国内男子ツアー開幕戦と呼べるものだ。昨今の事情もあり、この大会では選手はもちろん、関係者274人全員がPCR検査を実施。全員が陰性ということで、まずは安心して開催することが出来た。よく言われることだが、ゴルフ自体の感染リスクは小さいのだ。

コロナウイルス感染への対策のため、試合は無観客で行われ、さらにキャディを同伴しないというプレースタイルだった。そのため選手たちは、自身でカートを引いたり、バッグを担いだりしてプレーした。その姿が新鮮で良かったという声も多かったようだ。多くの選手が電動手引きカートを使用するなか、自らバッグを担いだ石川遼は、さすがにスターの風格を漂わせていた。

画像: キャディなしのプレースタイルだったため、自身でカートを引く選手の姿は新鮮だった。ちなみに石川遼は担いでプレーしていた(写真/JGTO images)

キャディなしのプレースタイルだったため、自身でカートを引く選手の姿は新鮮だった。ちなみに石川遼は担いでプレーしていた(写真/JGTO images)

特筆されるのは、インターネット中継だろう。先だって行われた国内女子ツアー「アース・モンダミンカップ」の4ch放送ほどではないが、それでも第1組から完全インターネット放送を実現していた。面白いのは、「アース」の放送とは異なり、協賛企業のCMが矢継ぎ早に流れていたこと。Youtubeなどで流れる動画広告は嫌がれることが少なくないが、今回はゴルフメーカーばかりで、ゴルフファンなら興味深いCMが多かったのではないだろうか。

なにかと前例のない大会となったこの「エキシビショントーナメント」だが、個人的に驚いたのは、実況のギアへの言及が非常に多かったことだ。一般的な地上波放送では、スポンサーとの兼ね合いもあり、個別でクラブなどの名前が出ることは珍しい。ところが、今回はゴルフショップチェーンのゴルフパートナーが主催ということで、各選手の使用ドライバー、そして使用ボールが紹介されていた。

画像: 今大会で勝利を掴んだのは関藤直熙。インターネット放送の解説では選手らのギア情報を多く紹介していた(写真/JGTO images)

今大会で勝利を掴んだのは関藤直熙。インターネット放送の解説では選手らのギア情報を多く紹介していた(写真/JGTO images)

さらに、普段から選手のクラブをサポートするツアーレップやメーカーの担当が放送席にきて、かなり突っ込んだギア情報が紹介されていた。例えば、テーラーメイドなら「SIM」と「SIM MAX」の2機種をどのような基準でプロが選んでいるかなど、アマチュアにも参考になりそうな話が多く、とても興味深かった。これだけギア寄りの放送を行った大会は、過去にも例がないだろう。非常に新鮮だった。

もっとも、一般視聴者からのコメントでは、「ギアの話に寄りすぎて、もう少し試合の話をしてほしい」といったものもあった。たしかに、ギアに寄りすぎた分、スウィングなどの技術面、青木功監修によって改造されたコースの特徴、そしてコースマネージメントなどの情報は、少なかった印象だ。

一般的な地上波ゴルフ中継の解説では、「ここは入れたいですね」、「もったいないですね」といった解説者の情緒的な発言が多く、ファンが欲しい情報が少ないことがある。今回はスポンサーが小売店チェーンということもあり、ギア寄りの情報が豊富だったのは良かったと思う。他の大会では、選手やコースの情報など、専門性の高い情報を解説の方には求めたいところだ。プロにはわかりきっているようなことであっても、視聴者には案外あやふやなことが多いのだ。

海外選手が出場できなかった影響もあってか、若手選手が多く出場したのも良かったことのひとつだろう。昨年、チャン・キムと肩を並べるほどのドライビングディスタンスを叩き出した幡地隆寛はすでにファンには有名だが、今回上位に入った選手の中でも、池村寛世、竹内廉、坂本雄介など、飛ばしに自信のある魅力的な選手が多かった。

画像: 「試合が楽しみすぎて眠れなかった」と2位に入った和田章太郎はいう(写真/JGTO images)

「試合が楽しみすぎて眠れなかった」と2位に入った和田章太郎はいう(写真/JGTO images)

コースレコードの「61」で優勝した関藤直熙も爽やかで魅力的だったが、2位に入った和田章太郎も印象に残った選手だ。初日が終わって放送席に呼ばれた和田は、いの一番に、大会が開催されたことへの感謝を口にした。そして、前の日は試合が楽しみすぎて眠れなかったのだという。毎日のようにゴルフに接しているプロゴルファーが、そんなにも試合を渇望していたのかと、胸が熱くなった。

大会運営に携わったJGTO理事の田島創志プロにも話を聞いてみた。「PCR検査を行って、選手の陰性を証明してから、安全の中でトーナメントを開催出来たこと、完全インターネット中継を実現出来たことは、良かったです。そして、セルフカートを使うことで、ゴルフの原点をファンに見せることが出来んじゃないかと思います。一方、いつも大会に携わってくれていたプロキャディさんを使うことが出来ず、結果として、彼らの職場を奪ってしまったことは、本当に申し訳ない気持ちしかありません」。

国内男子ツアーの状況は厳しい。しかし、これだけ難しい状況の中で、開催にこぎつけることが出来たのは、風穴を開ける意味もあったのではないだろうか。関係者には改めて敬意を表したい。Youtubeでは、アーカイブ放送も行っているので、見逃した人には改めて見てもらいたい大会だ。

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