PGAツアー「メモリアルトーナメント」の最終日は、4打差の首位でスタートしたジョン・ラームがツアー通算4勝目を挙げmセベ・バレステロスに次いでスペインとしては2人目の世界ランク1位プレーヤーとなった。25歳の世界NO.1スウィングをプロゴルファー・中村修が解説。

フェースは閉じたまま、回転力で飛ばす

強い雨風で中断もあり難しいコンディションになった最終日。以前のラームはミスやコンディションの悪化から感情的になり、自滅することもありましたが、結婚して子を持ちメンタル面も成長してきた25歳は崩れることなく最終ホールまで粘って優勝を手にしました。

メンタルのみならず、ショット、そしてショートゲームやパッティングも着実に成長しているように見えました。188センチ、100キロと恵まれた体形から今週は平均で293.4ヤードの飛距離を出していましたが、アイアン、アプローチまでスウィングの流れはいいようです。

グリップを見ると左手のナックルがひとつ見えるくらいのウィークで右手は親指と人差し指で作るしわが、あごと右肩の中間を指すスクェアに握っています。両腕は体のわきではなく前にセットし下半身をどっしりと構えています。フェースをボールに向けたまま始動していることからフェースを開かずに使う使い方をしていることが見て取れます。

画像: 写真A:左手はウィーク、右手はスクェアに握るグリップでフェースをボールに向けたまま始動する(写真は2019年の「全米プロゴルフ選手権」写真/姉崎正)

写真A:左手はウィーク、右手はスクェアに握るグリップでフェースをボールに向けたまま始動する(写真は2019年の「全米プロゴルフ選手権」写真/姉崎正)

画像Bではどっしりした下半身に目を奪われます。手元を体の前にキープしたまま、手元が体から遠く離れて行くようなワイドなテークバックは、トップでも曲がったままの右ひざが支えています。ワイドにテークバックすることで腕と体の運動量が同調し手打ちになりにくい効果が期待できます。

もうひとつ、左手首の向きに注目してみると、左手首と左腕に角度がついていないことから、テークバックからトップに至るまでフェースを開かない使い方をしていることがわかります。

画像: 写真B:腕を体の前にキープしたまま遠くに上げるようにテークバックし、コンパクトなトップの位置から切り返す(写真は2019年の「全米プロゴルフ選手権」写真/姉崎正)

写真B:腕を体の前にキープしたまま遠くに上げるようにテークバックし、コンパクトなトップの位置から切り返す(写真は2019年の「全米プロゴルフ選手権」写真/姉崎正)

画像Bの右は切り返しの瞬間ですが、左のトップの画像と腰の位置を比べてみると左への加重とともにターゲット方向に移動していることが確認できます。そこから、今度は画像Cの足元に注目してみてください。インパクトの瞬間に、左足のつま先がめくれ上がるほど足裏で地面を踏ん張り、強烈な回転力を得ていることがわかると思います。

ダウンからインパクトにかけても、腕と手首が平らになった左腕の形はキープされ、体の回転によってボールを押し込むように使うことで方向性を安定させています。フェースを閉じたまま、体の回転を止めずに下ろしてくるので、インパクトでは上体が開いていますが、これでフェースはスクェア。

基本的にはアイアンでもウェッジでもこの左手首の使い方で方向性を確保しながら下半身を使う度合いによって距離を打ち分けています。同じスウィングをすることで、ドライバーからウェッジまで安定感のあるショットにつながっています。

画像: 画像C:切り返しで踏み込んだ左足から強い回転力を得ようと左足のかかとに負荷がかかりつま先がめくれ上がっている(写真は2019年の「全米プロゴルフ選手権」写真/姉崎正)

画像C:切り返しで踏み込んだ左足から強い回転力を得ようと左足のかかとに負荷がかかりつま先がめくれ上がっている(写真は2019年の「全米プロゴルフ選手権」写真/姉崎正)

もともと飛距離と爆発力には定評がありました。2017年の全米オープンの予選ラウンドで松山英樹と同組になった際に取材をしましたが、握手をするとまるで野球のグローブと握手しているような分厚さを感じました。

その当時は腰の高さほどもあるラフにつかまり、イライラした様子で自滅したのが印象的でしたが、それからわずか3年、今回のような悪天候の難しいコンディションでも優勝を勝ち取り世界ランク1位にふさわしい選手に成長しました。

世界のトップにまで上り詰めたラームの次のターゲットはメジャー制覇、秋のメジャー大会がますます楽しみになってきました。

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