ギネス記録270.949メートル(296.313ヤード)でギネス記録樹立
ひざ立ちで300ヤードも飛ばせるものだろうか? しかもキャリーでだ。やったことがある人ならわかると思うが、最初はボールに当てることも難しく、コツをつかんで当てられるようになっても真っすぐに遠くへ飛ばすのは至難の業。
ギネスの記録員の目の前で、それをやってのけたのが今回取材した侍伊織。年齢・性別・その他、すべてが謎の、本当に謎のゴルファーだ。
ギネス認定だから間違いはないだろうが、やはり実際に見てみたい。というわけで、実際にひざ立ちで打ってもらったところ、シャープなスウィングから放たれた弾道は曲がらずに飛んでいき、軽く279ヤードを記録した。ウォーミングアップ代わりの一打でこの数字……!
続いて見せてくれたのは、普通にスタンスをとってのピッチングウェッジでのショット。軽く打っているのにも関わらず、飛距離は180ヤードとPGAツアー級。もちろん、昨今流行りの超飛び系アイアンを使っているわけでもない。この飛距離、いったいどういうことなのか?
「以前はドラコンにも出場していたのですが、飛距離は出ても実際のゴルフとのつながりが難しかったので一度それ(ドラコン専用のスウィング)を捨てて研究を続けた結果、老若男女すべての人に同じことを伝えても同じように結果が出て上達するようなスウィングにたどり着きました。このスウィングは体への負担が少ないので、身長や体の大きさや筋肉量に関わらず誰でもできます」(侍伊織)
というわけで、やはり独自のスウィングメソッドがあるようだ。
侍いわく、飛ばしの秘訣は、「少しでも長い時間フェースにボールを吸着させるように乗せる技術」にあるという。結果、「ゆっくり振っても飛ばせる球質にするのが”侍スウィング”なんです」と、独自の表現が続く。
「44インチのレディスドライバーでシャフトのしなりを使ってゆっくり振って初速を上げる練習をしてきました。速く振るとボールが潰れすぎてエネルギーが伝わらない。穏やかに潰すことで、初速は91m/s以上で、低回転の弾道が打てるようになりました」(侍伊織)
聞けば聞くほど謎が深まる侍スウィング。実際に体験してみたいと教えを乞うと、「まずは『一の型』から習得していただきます」と侍。古武術や居合の技術からヒントを得て編み出した技術を、「一の型」「小太刀」「横なぎ」といった具合に体系化しているが、「『一の型』だけでも習得すれば十分に飛距離は出ます」と侍は言う。
前提として、侍は非常にやわらかいシャフトを使用しており、それが飛ばしの大きなポイントとなっている。それを踏まえて、実際のスウィングのやり方を詳しく教えてもらった。
「『一の型』だけでも習得すれば十分に飛距離は出せます、スクェアグリップで握り、ややかかと体重で構えます。テークバックの始動は右の股関節に軸をとり、フェースを開かずにシャフトの重さ、しなりを感じ続けながらバックスウィングに向かいます」(侍)
「ダウンスウィングでも右の股関節に軸を取り、フェースを開かずにインパクトまで体を回転させて引き下ろしてきます。右の腕は体の前ではなく、わきに添えインパクトでは上体は開きながら回転を止めずにスウィングします」(侍)
このようにスウィングすると、柔らかくしなりやすいシャフトの力を生かしてボールを長くフェース面に乗せることができ、ボールにエネルギーを伝えて飛ばすことができるという。
たしかに、侍のスウィングを見ているとフェースに乗ったボールが運ばれるようにゆっくり飛んでいくように見えるから不思議だ。それでいてPWで180ヤードも飛ぶからそのギャップに戸惑ってしまう。
実際に筆者も試してみると、普段は80~90ヤードのサンドウェッジの飛距離が、数球打つうちに115ヤードに伸びてしまった。マン振りしているわけでもなく、力感を増したわけでも、ましてやトップを打ったわけでもない。これは不思議な体験だった。しかも、ボールは糸を引いたように真っすぐ飛んでいく。
年齢も性別さえも不詳の謎のゴルファー・侍伊織。謎だらけではあるものの、ギネス世界記録保持者であるのは紛れもない事実。今後さらに注目を集めることは必至だ。