振り返れば24人の歴代ナンバー1のうち20人にインタビューさせてもらった。頂点に立つ人間は近寄り難い、あるいは傲慢と思われがちだが実際は違う。
「自分こそ世界のルール」とばかりエキセントリックに周囲を振り回すグレッグ・ノーマンと、ナンバー1になったあと極度のスランプに陥り神経が過敏になっていたデビッド・デュバルを除いて残りの人々は皆素晴らしい人柄だった。取材を重ねるたび一流はやはりひと味違うと感心させられたもの。「ゴルフは人間性を映す鏡」というのも頷ける。
なかでもいい人代表はニック・プライスだ。最強の名を欲しいままにしていたキャリアの頂点で来日したプライスは連続写真を撮影するためティーングエリアに集結していた50人近いカメラマンを前に神対応。
「準備はいいかい?」とひとりひとりの目を見て声をかけ撮影者のタイミングに合わせて3発ショットを打ってくれた。
当時はいまと違い連続写真を撮るとまるで射撃をしているような音がした。それをイヤがる選手も多かったがプラスは50台近いカメラの爆音を涼しい顔で受け流し、しかも3球打った球はすべてフェアウェイの半径1メートル以内に収めたのだからさすが。
「いい人? 人として当然のことをしているだけだよ。たとえばトイレで掃除をしているご婦人がいたら声を出して挨拶する。自分の母親がもしそういう立場だったらどうして欲しいかを考えて行動している」とプライスは語っていた。
ほかにもアーニー・エルスやアダム・スコットには心がとろけそうなやさしさがある。
1986年にスタートしたランキングで最長ナンバー1はいわずと知れたタイガー・ウッズで通算683週間トップの座に君臨した。最短はタイガーがマスターズに初優勝した直後の97年4月20日のランキングで1位になったトム・リーマンで、わずか1週天下に終わっている。
初代ナンバー1のベルンハルト・ランガーとセベ・バレステロスは同じ57年生まれで欧州旋風を巻き起こした同志でもある。2人の友情秘話は語りきれないがそれは次回機会があったらご紹介しよう。
※一部訂正致しました(2020.07.24)