ロフトによって、ソールグラインドが1種類だったり5種類だったりするのは、なぜか?

現在、ブランド各社のウェッジラインナップを見ていると、同じロフト帯でも異なるバウンス角やソール形状(グラインド)のものが多数存在していることに気づく。アイアンではいちいちロフトごとのバウンスやソール形状などを気にしたりしないのに、なぜウェッジになるとこうも多くのバリエーションが必要になってくるのか? タイトリストでボーケイデザインウェッジのフィッティングを担当している、三瓶大輔氏に話を聞いた。

「ボーケイデザインウェッジのラインナップをよく見ていただくとわかるのですが、ソールグラインドのバリエーションがあるのはロフト54度以上のモデルからになります。ピッチングウェッジ領域の46度、48 度。ギャップウェッジと呼ばれる50度、52度には“Fグラインド”しかないんですよ。ここになぜグラインドが必要なのか?のヒントが隠されています」(三瓶氏)

画像: ロフト54度以上になるとソールグラインドのバリエーションが増えてくる、ボーケイデザインウェッジ

ロフト54度以上になるとソールグラインドのバリエーションが増えてくる、ボーケイデザインウェッジ

そう言われて最新のボーケイデザインウェッジ『SM8』のラインナップを確認すると、たしかにサンドウェッジ領域のロフト54度では、Sグラインド、Dグラインド、Fグラインドの3種。56度ではこれにMグラインドが増えて4種。ロブウェッジの58度はM、S、D、Kの4種。60度になると、L、M、S、D、Kと全ロフトで最大の5 種が用意されているのだ。ロフトが多いほどソールグラインドの選択肢が増える。これはなぜなのか?

「答えを先に言ってしまうと、SW、LWなどのロフトの大きいモデルは、グリーンサイドなどからコントロールショットをするからなのです。ピッチングやギャップウェッジはフルショット主体。フェースを開いてふわっとしたボールを打ちたいとはあまり考えませんよね。だから、フルショットで思い切り打ち込んでもソール前面でバウンス効果が発揮されるF(フル)ソールのみを採用しているのです。逆にグリーン周りでのコントロールショットが主体となるSW、LWではスクェアに打つ人もいれば、フェースを開く人もいます。場合によってはバンカーやラフからの脱出に特化したウェッジを探す人も出てきます。つまり、グリーンに近づくほど、使い方(ニーズ)が一気に多様化するわけです。だからこそ54度以上のモデルには複数のソールバリエーションが必要になる、ということなのです」(三瓶氏)

豊富なラインナップを背景に、PGAツアーで一試合平均50%を超える絶大な人気を誇るボーケイデザインウェッジだが、最初からこのような多彩なソールバリエーションを備えていたわけではなかった。今回はそのきっかけについても紹介してみたいと思う。

“フェースを開くとソールが邪魔”それがソールグラインドを始めた出発点

ボーケイデザインウェッジのマスタークラフトマン、ボブ・ボーケイ氏がPGAツアーで精力的な活動を始めた2000年代初め、ツアー用ウェッジには“T”、“E”、“L”という3種類のソールグラインドがあった。04年当時、取材に応えてボーケイ氏は「アルファベットはそれぞれのソール形状を一緒に作っていったプレーヤーの頭文字を取っているんだ。Tはトム・パニースJr.、Eはアーニー・エルス(当時は契約選手)、Lはレフト・ハンド(当時契約のフィル・ミケルソンのこと)のこと。モデル名というよりも識別のための単なる記号なんだよね」と明かしてくれた。

もともと初期のボーケイデザインウェッジには『260・04』というワイドソールの60度ウェッジがあり、トム・パニースJr.の「これをフェースを開いた時にソールの後方(トレーリングエッジ)が出過ぎないようにして欲しい」という要望を受けて、ソールの後方からトゥヒールを大きくグラインドしたのが、いわゆるグラインドソールの始まりだったという。

「パニースの要望を受けて、Tグラインドはトレーリングエッジをグラインドして、リーディングエッジ側も平面的にバウンス効果が大きくなるように削ったんだ。Lはさらにフェースを大きく開けるようにトレーリングエッジを削った。ロブショットというよりも、フロップショットを打ちやすくということだね。つまり、フィルの得意技がやりやすい仕様にしたのさ。Eは削るというよりもソール中央がしっかり効くようにキャンバー気味にした。フェースを開かなくてもバウンス効果が得られやすい形状なんだ」(ボーケイ氏/当時談)

画像: ソールグラインドのきっかけとなった初期のボーケイウェッジ260・04(左)と、ソール後方を大きく削ったTグラインド(右)

ソールグラインドのきっかけとなった初期のボーケイウェッジ260・04(左)と、ソール後方を大きく削ったTグラインド(右)

フルショット領域では表れない、プレーヤーごとのアプローチテクニックとスタイル。ボーケイデザインウェッジのソールグラインドバリエーションは、この時から60度のロブウェッジを主体として多くのパターンが試され、その時々のスタープレーヤーのフィードバックを受けながら今日まで進化を続けてきたという。

「ツアープレーヤーとのやり取りの中で複数のプレーヤーに高い評価を得たモデルが『TVD(Tour Van Design)60M』というモデルになります。このモデルはトレーリングエッジ側を大きくグラインドしながら、ソールの中間から前側にかけては丸み(キャンバー)をつけたソールデザインが特徴でした。これが現在『SM8』Mグラインドの原型となっています。Mグラインドよりもさらに大きくフェースを開きやすく、ソール前面をややフラットに仕上げたモデルが、現在のLグラインド(前出のLグラインドとは別仕様)、Mグラインドの“キャンバー”効果をさらに大きくし、フルショット時やバンカーなどからも高いバウンス効果を発揮するのがDグラインドになっています」(三瓶氏)

最も新しい“Dグラインド”は、ボブ・ボーケイ氏も一般ゴルファーに強く推奨しているモデルだ。

「Dグラインドはソール前方部にしっかりとバウンスを施しているので、フルショットでもとても使いやすい。深いラフでもしっかり打ち込むことでボールの下をヘッドが潜ってしまう不安なく振り抜くいていくことができます。ロブウェッジを選択するアマチュアゴルファーは多くありませんが、機会があればラフやバンカーからロフト60度のDグラインドを試して欲しい。しっかりバウンスと友達になれるはずです」(ボーケイ氏)

プレーヤーの多彩なテクニックを支えてきた60度のロブウェッジとソールグラインド。フェースを開くアプローチをしたいゴルファーは、ぜひ様々なグラインドに挑戦してみてはいかがだろうか。

写真/高梨祥明

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