フェース向き「4.6度左」クラブ軌道「5.1度左」がフェードを打てる理由
「僕が指導する際には、データも取らないしスウィング画像の撮影もしないのでこういったデータを見るのは初めてなんですが、目指していたことがきちんとデータに表れていて安心というか、納得しました。一番のポイントは『-4.6度』のフェースアングルと『-5.1度』のクラブパスですね。彩香ちゃんは、もともとすごく左を向いて構えて、スタンスに対して右に打ち出し、そこからさらに右に曲がるというプッシュスライスを打っていたんです。僕との取り組みは、それを『左に打ち出して右に曲がる』フェードに変えることだったので、パスはターゲットよりも左を向いたアウトサイドインでフェースアングルはパスよりもわずかに右を向いているというこの数値は狙いどおりのスウィングが身についたことを証明してくれています」(中島規雅コーチ)
ボールの打ち出し方向はインパクト時のフェースの向きに左右されるが、フェースアングルがマイナスの数値ということは、フェースが左を向いてインパクトし、ボールを左に打ち出せていることを示す。またクラブパスの値がマイナスであることはアウトサイド・イン軌道であることを示している。その結果スピンアクシス(軸の傾き)がプラスの値となり、右に曲がるフェードが出るのだ。
クラブパスを修正するために、中島は「バックスウィングを外に上げる」意識を持つように指導したという。細かな形を気にするよりも、動きのきっかけだけを意識させあとは感覚に任せることで、感性を殺さずにスウィングを変えることを目指したという。
その結果肩がタテ回転するようになり、オーバースウィングも修正されて振り遅れも解消された。あとは上体の突っ込みを防ぎ、フェースを返さずに左に振り抜くことで、狙いどおりのフェードが出るようになった。
「もう1つ注目したいのは、『+3.2度』のアタックアングルですね。アッパーにボールをとらえることができると、スピン量が減りやすいですしインパクト効率が上がってボールスピードも上がりやすい。ボール初速が『68.8m/s』と極めて高いのは、このアタックアングルあってのことだと思います」
このスウィングを身につけるために中島が指導したのは、ダウンスウィングでクラブのリリースを早めることだという。
「彩香ちゃんはダウンスウィングでタメすぎてアタックアングルが鋭角になったり振り遅れたりする傾向があったので、タメずに早くリリースすることを勧めました。これによって入射角がシャロー(ゆるやか)になりアッパーにボールをとらえられます」
アウトサイド・インながらアッパーにボールをとらえられる選手は少なく、これは渡邊の大きなアドバンテージになっているという。
「もともとクラブを速く振るセンスはずば抜けていましたから、その感覚を殺さないように、話し合いながらスウィング改造に取り組みました。その結果がこんなに早く出て本当にうれしいですね」
「アース・モンダミンカップ」のプレーオフでは、ボールスピード70m/s超えのショットもあり、最近の練習ではキャリーが270ヤードを超えることもあるという渡邊。新スウィングでの活躍が楽しみだ。