プロとアマが同じ舞台で戦う9ホールのトーナメント、MMT9を主催したり、自身で新発想のクラブを開発したりと、いつも面白い活動をしているクラブアナリスト、マーク金井氏が、日本チッパー協会なる組織を立ち上げたという。
チッパーとは御存知の通り、グリーン周りで転がして寄せるためのクラブだ。なんとなく初心者用の印象があるためか、あまりポピュラーな存在ではないが、現在もプロギアやキャスコ、オデッセイなどがチッパーをラインナップしている。
サンドウェッジでは、ボールの高さや距離、スピン量を安定してコントロールするのが難しい。パターのように打てて、球質の再現性が高く、ミスが少ないのが、チッパーの利点だ。さらに言えば、転がして寄せることで、グリーンの傾斜をより把握することが出来る。プロや上級者は、ボールをあげるよりも転がしたほうが簡単と言うが、その転がしに特化したクラブがチッパーだ。
マーク氏は「チッパーはお助けクラブではなく、チップインが狙える攻撃的なクラブ」だと言う。そのコンセプトがとても魅力的だったので、筆者もマーク氏推奨のチッパー、リンクス「ステップオーバー25」を購入してみた。
このクラブは、ピン型パターながらロフト角が25度あるのが特徴で、本当にパターと同じように打つことが出来るのがメリットだ。もっとも、パターのロフト角は10度以下とルールで定まっているので、このクラブはルール不適合となる。現在、マーク氏は同じコンセプトでルールに適合するクラブを開発中だという。
早速、このクラブを持ってマーク氏のホームコースだという赤羽ゴルフ倶楽部でプレーしてみた。ここは高麗グリーンで、硬くきつい傾斜と砲台グリーンが特徴の河川敷コースだ。あえて短めの番手で打って距離を残し、手前から何度もチッパーを使ってアプローチしてみた。
この記事は、ここでチッパーを使ったアプローチがビシビシ寄って、可能ならチップインもして、チッパーはいいですね、読者の方もぜひ! と勧める予定だったのだが、面目ないことに筆者のアプローチがどうも寄り切らない。思ったように打っているつもりだが、ロフト角25度というインフォメーションのわりに前にいかず、大きくショートするのだ。
プレーを重ねるうちに、少しずつ距離感を掴んできて、砲台グリーンの下からピンが手前という難しい状況でも、手前からゴロゴロ転がして砲台を登ってピンに寄せたりすることも出来た。筆者は一応シングルハンディ(JGA2.2)なので、やさしい局面のアプローチなら、ウェッジで1ピン以内に寄せる確率は低くない。現状ではウェッジのアプローチのほうが寄るかなという感想だった。
とはいえ、このままではせっかく買ったチッパーが無駄になる。このクラブを使って魔法のように寄せているマーク氏に打ち方を聞いてみた。氏いわく、「打ち方は良いので、もっと強めに打ってみるといい」とのこと。パターでもなく、ウェッジでもなく、このクラブ用の距離感を掴むことがカギになるようだ。もっとも、それはどのクラブでアプローチする場合にも言えることだろう。
日本チッパー協会を作った理由も聞いてみた。「チッパーはこれまで、初心者向け、お助けクラブと思われすぎてきました。チッパー使ってまでスコアを出したくないとまで言う人もいるんです(笑)。しかし、このクラブはゴルフにとって最も大切な、フェースにボールを乗せる感覚と、目標方向に打ち出して、思ったところに止めるという基本が学べます。それだけ優れた道具であるチッパーに、スポットライトを当てたいと思いました」。
マーク氏はアプローチもパターもこのクラブ一本でプレーしているという。筆者は、ゴルフをはじめる際、初心者が使うと良いのではないかと思った。パターと同じように打てるので、空振りもしないし、距離感も出しやすい。ショートコースなどに行けば、ゴルフのゲーム性に早くから触れることが出来、その面白さを体感出来る。
10年20年やってもスライスに悩むゴルファーも少なくない。いきなりフルスウィングからはじめてしまうと、ゴルフというスポーツのハードルはとても高いものになってしまう。「ステップオーバー25」はとても打ちやすいので、再現性を考えるとメリットはありそうだ。筆者も距離感を養ってみようと思う。日本チッパー協会は、フェイスブックページがあるようなので、興味のある方は検索してみてもらいたい。