WGC「フェデックスセントジュード招待」を2位タイでフィニッシュした50歳のフィル・ミケルソン。今週の平均飛距離302.6ヤードと衰えを知らないスウィングをプロゴルファー・中村修が解説する。

メジャー5勝 PGAツアー44勝を誇るレジェンドゴルファー

フィル・ミケルソンはアリゾナ州立大在学中の20歳のときにPGAツアー「ノーザンテレコムオープン」でアマチュアとして優勝を挙げ、卒業後の92年にプロ転向。翌93年にはPGAツアーで初優勝を挙げ華々しくスター街道を進みました。

メジャーではなかなか勝てませんでしたが、マスターズ3勝、全英オープン、全米プロゴルフ選手権も制しています。全米オープンではタイも含めると2位が6回もありますが、4大メジャーのすべてを制するグランドスラムにはまだ手が届いていません。1996年の国内ツアー「サントリーオープン」に出場したミケルソンを間近に見ましたが、ボールとターゲットを結んだ後方線上に立ち、ターゲットを狙うときの集中力に、ものすごいものを感じたことを今でも覚えています。

レフティーのミケルソンですが利き腕は右で、お父さんと向かい合って練習していたことから左打ちになったというエピソードは有名です。2年ほど前から肉体改造に取り組みヘッドスピードが落ちないように素振り用の練習器具を振ったりしていましたが、300ヤードを越える平均飛距離をみるとその効果は明らかです。スウィングを見てみると左手をややウィークに握り、”ホバー”と呼ばれるクラブヘッドを浮かせて構えるタイプです。右腕とクラブが一本になるようなアドレスからひざ、腰、上半身を柔らかく使って深いトップまでスムーズにテークバックします。トップでのフェースの向きはオープンであることも特徴的です。

画像: 画像A 右腕とクラブが一本になりややウィークで握ったグリップからひざ、腰、上半身を柔らかく使って深いテークバックをとる(写真は2019年シュライナーズホスピタル 写真/姉崎正)

画像A 右腕とクラブが一本になりややウィークで握ったグリップからひざ、腰、上半身を柔らかく使って深いテークバックをとる(写真は2019年シュライナーズホスピタル 写真/姉崎正)

切り返しでは、ターゲット方向の右足に加重したあと右の股関節を開くように回転運動に移ります。脱力した腕とシャフトが体に巻き付くように下りて来ますが、タメが強くクラブが立って下りてくるのもミケルソンらしいクラブ軌道です。この時点でもフェースは正面を向いていますので、まだ開いた状態で切り返しています。

画像: 画像B ターゲット方向に加重し切り返し、タメが強くシャフトが立って下りてくる。フェースの向きも開いて下りてきている(写真は2019年シュライナーズホスピタル 写真/姉崎正)

画像B ターゲット方向に加重し切り返し、タメが強くシャフトが立って下りてくる。フェースの向きも開いて下りてきている(写真は2019年シュライナーズホスピタル 写真/姉崎正)

インパクト前を後方からの画像で見てみると、クラブが左肩と首の間から下りてきていることから流行りのシャロ―ではなく立って下りてきていることが見て取れます。フェースの向きもインパクト直前でも少しオープンですが、しっかりとフェースを閉じる動作を入れながらややアウトサイドインの軌道でボールをつかまえて打っています。

画像: 画像C 左肩と首の間からクラブが立って下りてきて、インパクトでフェースを閉じながら打つ(写真は2019年全米プロゴルフ選手権 写真/姉崎正)

画像C 左肩と首の間からクラブが立って下りてきて、インパクトでフェースを閉じながら打つ(写真は2019年全米プロゴルフ選手権 写真/姉崎正)

この開いて閉じるタイプのスウィングがミケルソンの大きな特徴でもあり、その動きを極めたからこそできるロブショットがミケルソンの大きな武器になっています。ロフトの寝たウェッジをさらに開いて寝かせインパクトでフェースを閉じる動きを遅らせてボールをフェースに乗せ、絶体絶命のピンチからピンそばに寄せる起死回生の”フロップショット”は見ていて思わず歓声を上げてしまうほどです。

タイガーやミケルソンのようにフェースの開閉を自在に操ることで弾道をコントロールする高い技術は、近年のギアの進化によって必要とされなくなりつつあるかもしれませんが、球を自在に操るプロゴルファーの技術として残して欲しいものです。

画像: 画像D 開いて下りてきたクラブフェースをインパクトでしっかり閉じながら打つことでボールをつかまえ自在に弾道を操る(写真は2019年全米プロゴルフ選手権 写真/姉崎正)

画像D 開いて下りてきたクラブフェースをインパクトでしっかり閉じながら打つことでボールをつかまえ自在に弾道を操る(写真は2019年全米プロゴルフ選手権 写真/姉崎正)

個人的には、ロリー・マキロイ、ジャスティン・トーマス、ダスティン・ジョンソン、ブルックス、ケプカなど強大な世界ランカーたちに立ち向かい、全米オープンで優勝しタイガー以来のグランドスラム達成の瞬間を見てみたいと思います。そういう期待を持たせるのもミケルソンのよさではないでしょうか。

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