弾道計測器を使ったシャフトフィッティングの限界
「シャフトフィッティングは、フィッターによって勧められるシャフトが異なることを避けることが重要」だとする宮崎、奥嶋の両コーチ。屋内、屋外を問わず弾道計測器による数値を基にシャフトを選択する現状のフィッティングには限界を感じているという。
「弾道計測器や3Dモーションキャプチャーのギアーズを使ってのフィッティングを続けてきましたが、やはりコースに出ると結果が伴わないことが多々ありました。ツアープロの場合だと、練習ラウンドでは感触のよかったシャフトが、試合になるとダメだったりすることは多いです」(奥嶋コーチ)
アマチュアでいえば練習場とゴルフ場では合うシャフトが変わり、プロなら練習ラウンドと本戦で変わる。このギャップを埋める必要があるのだ。
そこで、目をつけたのが、弾道という結果ではなく、シャフトにかかる負荷。シャフトにかかる縦方向と横方向の負荷を装置を使って計測し、そのデータを基にシャフトを選択したところ、練習場だけでなくコースや試合でもマッチすることが多くなったという。その理由を宮崎コーチはこう語る。
「重心がシャフトの延長線上にない偏重心であるゴルフクラブをスウィングすると、シャフトにはトウ側が下がるトウダウンによる縦方向のしなりと、ターゲットラインに対して前後する横方向のしなりが発生します。この、2方向の負荷を計測できる装置を使うと、スウィング中のどのあたりでどれくらいシャフトに負荷をかけているかが確認できます。その波形からその人のスウィングタイプが確認でき、マッチするシャフトを選ぶことができるんです」(宮崎)
たとえばゴルファーの中には、徐々にシャフトに負荷をかけていくタイプもいれば、切り返し直前から一気に負荷をかけるタイプもいる。そして、スウィング中どのタイミングでどれくらいの負荷をシャフトにかけているかによって、その人にマッチするシャフトの調子を選ぶことができる。
「今まで研究してきた結果、スウィング中の負荷を示す波形は、スウィングの強弱を変えてもほとんど変わりません。そうすると、誰がフィッティングしても同じ処方がされるようになり、ゴルファーにとっての最大メリットである飛距離、方向性、安定性などが得られ、スコアアップにつながるフィッティングができるようになるんです」(宮崎コーチ)
残念ながら、その計測器は現在まだ開発段階。早期完成を祈るばかりだが、開発の過程では新たな発見もあったようだ。
「横方向のしなり量1に対して縦方向のしなり量が2という1対2の割合になると弾道の数値はよくなり、打った本人のフィーリングもいい反応になることがわかりました。その中でも横方向のしなり量はできるだけ小さいほうがエネルギーのロスが少なく、ボールにエネルギーをしっかりと伝えていることもわかっています」(宮崎)
しなりすぎないほうが弾道のデータは良くなる。にも関わらず、最近のシャフトはフレックス表記よりもひと昔前に比べ柔らかくなっていることで、アンダースペックになっているゴルファーが多いと宮崎は指摘する。
「アメリカでは柔らかいシャフトをヌードル(麺)のようだと表現しますが、日本モデルのドライバーのシャフトを計測するとSの表記でもR相当の柔らかさになっていることも少なくありません。そうするとしなり量が増えて逆にボールにエネルギーを伝えられていない場合も多く見られました」(宮崎)
純正シャフトを選ぶ際は、その点にも注意が必要になりそうだ。最後に、計測器がなくても簡単にスウィングタイプを判別する方法を教えてもらった。
「切り返しですごく力む人は手元の剛性が強いシャフト、切り返しがスムーズだけどインパクトが強い人(テニスをやっている人に多い)は先端の剛性が強いシャフトが良いと言えるのではと思います」(宮崎コーチ)
ゴルファーを悩ませる「どのシャフトが合っているか問題」に終止符を打てる日は来るのか……?