チャリティマッチで3位タイ
稲垣那奈子(いながき・ななこ)さんは埼玉県出身、2000年8月24日生まれの19歳。共立女子第二高校2年時の2017年にゴルフダイジェスト・ジャパンジュニアカップで優勝。2019年には日本女子学生ゴルフ選手権競技で4位タイ、全日本女子アマチュアゴルファーズ選手権で2位と直近でも好成績を収めている。
アマチュア競技にとどまらず、8月3、4日に開催されたチャリティ競技「ISPS HANDA 医療従事者応援!! チャリティレディーストーナメント」では、原英莉花らシード選手を含むプロを相手に堂々の3位タイと好成績でフィニッシュ。たしかな実力を示している。
そんな彼女と同世代の安田祐香や吉田優利らは2019年にプロテストを受験したが、稲垣さんはプロテストを受験をせずに大学進学を決意。その理由をこのように話す。
「(2019年の)プロテストはプラチナ世代と呼ばれる同期の強い選手たちに加えて、ひとつ下の学年の上手い子たちも挑戦するので、正直受かるのは難しいと思ったんです。それと、(高校卒業後)すぐにプロゴルファーになるのではなく、将来ゴルフのために役立つことを勉強したかったので、進学することを決心しました」
プラチナ世代に加えて、JLPGA(日本女子プロゴルフ協会)が受験可能年齢を18歳から17歳以上と引き下げたことを受け、昨年のプロテストは当時高校生だった西郷真央、山下美夢有、笹生優花らプラチナ世代のひとつ下の世代の強豪たちも受験(いずれも合格)。例年より大混戦のプロテストとなったのだ。
両親からは「プロテストを受けなくていいの?」と何度も言われたそうだが、稲垣さん自身はすぐにプロゴルファーとして戦うのではなく、大学でゴルフに役立つことを学びたいという強い思いがあった。
「私は怪我が多かったので、体のことや栄養学などを学びたいと思って早稲田大学のスポーツ学部を選びました。中学3年生のとき腰椎分離症になって、今も腰痛と付き合いながらゴルフをしているので、それを改善しつつ、しっかりと体のことを学んで今後のゴルフ人生に活かしたいと考えています」
同世代の安田祐香も大学(大手前大学)に在籍しつつプロゴルファーとして戦っているが、そもそも早稲田大学では在学中にプロ転向を認めてもらうことは出来ないため、プロテストを受験できるのは大学4年時。2年後のこととなるが、もちろん受験予定だ。そして、その先の展望をこう語る。
「プロになったら2年以内に優勝したいです。そしてシード権を獲るため、常に20位内にいられるような選手になって、5~6年で賞金女王になりたいと考えています。鈴木愛選手や渋野(日向子)選手をみていると、日本で活躍したら海外で戦えるチャンスがくる。なので、日本できちんと力をつけて海外でも活躍できるような選手になりたいです」
プロテストを受験せずに大学で学ぶことを選んだ稲垣さん。今後の大学生活で、多くのことを学び、沢山のことを吸収した彼女は今より大きく成長しているに違いない。
さて、この稲垣さん、164センチと長身もあいまってドライバー飛距離がかなり出る。その秘密はなにかと問うと、こんな話を聞かせてくれた。
「実は大学入学前に(笹生)優花が住むフィリピンで2~3週間ほど一緒に合宿したんです。とても勉強になりました。とくに圧倒的な飛距離をみて『もっと飛距離を伸ばしていかないとだめだな』と思って、日本に帰ってきて練習に燃えたんです(笑)」
結果、2年ほど前までは平均飛距離230ヤードだったが、今や250ヤードは飛ばしているという。クラブを見直したり、練習の質が上がったというのもひとつの理由ではあるが「私が頑張れば、海外でも日本でもいつか(優花と)一緒にプレーできる」という一心で高いモチベーションを保ちながら練習をできたことが大きいという。
高い意識と学び続ける姿勢、そして魅力十分の飛距離を武器に、近い将来、女子ゴルフ界を盛り上げるであろう逸材のひとり・稲垣那奈子さんの今後に注目したい。
撮影/姉崎正