強風の予報を受けてグリーンは「8.1フィート」のセッティング
気温19度、風速は約10メートルから時おり18メートル吹くとの予報の通り、寒々しい鉛色の空に低い雲、スコットランドのリンクスらしい天候の初日になりました。
グリーンスピードは転圧ローラーをかけずに9.5フィート。しかし、初日は強風のためグリーンを刈らずにスピードは8.1フィートという現地からの情報が入っています。強風のため、グリーンを刈ってしまうと止まったボールが動いてしまうという判断でしょう。
フェアウェイの刈り高は10ミリ。幅3ヤードで刈り高35ミリのファーストカットの先に、75ミリのラフが3ヤード。その先にはさらに深いラフやブッシュが待っています。もう一つ注目すべきはグリーン周りの刈高が7ミリとかなり短くなっていること。それにより、グリーンを外れたボールが、弾かれてラフまで転がるシーンがかなり見受けられました。メジャーらしい、タフなセッティングです。
「ドライバーで215ヤードくらい」と上田桃子。強風が選手たちを苦しめた
そんなセッティングの中、日本勢の中ではもっとも早いスタートの7時14分(日本時間15時14分)に勝みなみ選手がコースに出ていきました。イギリスはロンドンのヒースロー空港経由で現地に到着するも、クラブがロストという不運。
初日の前日になんとかクラブが到着し、18ホールをプレーしたといいます。3バーディ6ボギー1ダブルボギーの5オーバー(71位タイ)と徐々に風の対応ができるようになったラウンドだったのではないでしょうか。
続いて畑岡奈紗選手は、アゲンストのホールが続く前半で4オーバーとペースをつかめずにスコアを落としましたが、後半はパーを並べ最終ホールでバーディを奪い3オーバー(33位タイ)で終えました。終了後の会見では「前半の2つのパー5でボギーが残念、右からのアゲンストホールで、風を想定して練習してきてはいましたが、持ち球のドロー系の弾道が低く打っても風に流されて左に外すことが多かった。100ヤードを9番アイアンでコントロールして打ったりもしました」と話しました。やはり海沿いのリンクスコースの風は予想以上に大きく影響したようです。
上田桃子選手は、ナイスパーセーブも見せてくれながら4オーバー(51位タイ)でフィニッシュ。この強風の中よくボールが止まっているなというくらいの風だったと話しました。
「4、50ヤードいつもの番手よりも飛ばない。縦の距離感を合わせるのが難しかったです。ドライバーで215(ヤード)くらい、6番でも125(ヤード)くらいしか飛びませんでした。アゲンストとフォローで力感のコントロールが難しかった」(上田)
このコメントを聞くと、想像を超えるような風の影響があり、かなり難しいコンディションだったのかが伺えます。となると、参謀役とのコミュニケーションも鍵となります。そこで、キャディを務める辻村明志コーチとのコンビネーションを質問してみました。
「自分一人だけだったらパニックになりそうなくらい難しかったので、二つの脳を足してちょうどになったくらい。イメージ力、決断力が難しかったです。ようやく二つで一つくらいのパワーだったかなと思います」(上田)
渋野日向子は5ホール消化で6オーバーと出だしで苦しんだが……
そして、渋野日向子選手は連続ボギーでのスタートから4番のパー5で2打目を左のバンカーに入れ、2度あごに当て5打目でやっと脱出、6オン2パットのトリプルボギーとしてしまいます。続く5番ホールもボギーとし、早くも6オーバー。暗雲が立ち込めます。
しかし、8番のポステージスタンプ(郵便切手)と呼ばれる小さいグリーンが特徴のパー3で、ピンを攻めるショットでバーディを奪い、ひとつ戻して5オーバーで前半をターンします。
風向きが変わり、10番、11番とフォローのホールは距離感を合わせるのが難しいところですが、上手くパーで切り抜けます。しかし、ホールの向きが変わって風がクロスする難しい12番でティショットでフェアウェイをキープするも2打目をグリーン右に外してしまいボギー。
続く13番から18番まではフォローの風が続くホールですから、少しでも戻したいところ。13番、14番パーのあと、15番で待ち望んだバーディがきて、5オーバーに戻します。その後、16番パーのあと17番でボギー。しかし、最終18番ではピン奥からのバーディパットを根性で沈め、5オーバー71位タイでフィニッシュしました。
率直に言って、渋野選手のゴルフは明らかに復調の方向に向かっているように感じました。練習ラウンドとは大きくコンディションの異なる状況でもいいショットの回数は確実に増えていましたし、大きく曲げるティショットもアイアンショットも見られませんでした。
先週のスコットランド女子オープンでの予選落ちから、短い時間でしっかりと調整してきています。やはり渋野選手は試合の中で成長する選手なのだと改めて感じます。
そんな渋野選手、ホールアウト後の記者会見では、スタート前に強風の影響を考えてすごく怖かったと話していました。
「案の定、不安なままスタートしたらボギー、ボギー、パー、トリプルで残念なことに。前半のアゲンストの中でもリズムに気をつけて振ることを意識したら曲がりが減ってきて、インに入ってからはほぼフェアウェイをキープできた。これだけ風が強かったら切れたら終わりだと思っていました」
私は、明日への課題を質問してみました。
「よくなってきたティショットからアイアンショットにつながらなかったところを修正したい。アイアンのリズムがなかなか合わなくてブレた。そこを練習して気をつけたい」
5ホールを終えて6オーバーから、18ホールを終えて5オーバーへ。ショットの調子を見ても、2日目に期待がつながる初日だったと思います。
河本結は「95点のゴルフ」を展開
稲見萌寧選手と河本結選手はしっかりとリンクスに対応し上々の滑り出し。稲見選手のキャディを務める奥嶋誠昭コーチからフェードヒッター向きのコースではないかと話がありましたので、フェードを持ち球にしている両選手には攻めやすかったのかもしれません。
河本選手は短いバーディパットを外しながらもパープレーを続け前半を折り返します。11番、14番でボギーを喫し、最終ホールでは右のラフから打った2打目がグリーンオーバーしOBに。ダブルボギーとし4オーバー(51位タイ)でフィニッシュしました。
ただ、会見では弾道のコントロールができて95点のゴルフができたと、話しました。渋野選手同様、先週の予選落ちをしっかりと糧にしてくるところが河本結の強さだな、と改めて感じます。
稲見萌寧選手はボギーが先行するも7、8番で連続バーディを奪い前半を2オーバーで折り返します。12番のティショットで右の深いラフにつかまりますがパーで切り抜けます。しかし13番でラフにつかまりダブルボギーとしてから流れが悪くなり、6オーバー(88位タイ)でフィニッシュしました。
「練習ラウンドとまったく別のコンディションの中、頑張れていた。後半はティショットを曲げてダボにしてしまって、その次のホールからショットは悪くなくても、どんなに手前に落としても奥にこぼれてしまい、耐えられなかったですね」(稲見萌寧)
リンクスが好きだという野村敏京選手は、前半1オーバーで折り返すと、3オーバー(33位タイ)でフィニッシュ。畑岡奈紗選手と同じ順位です。
予選通過のラインは65位タイ。初日は4オーバーで51位タイ、5オーバーだと71位タイなので、明日の強い風と雨の予報を考慮すると、8から10オーバーくらいが予選通過のラインになるのではないでしょうか。
カットライン上は一打差に20名が並ぶ混戦模様です。すべての日本勢に予選通過のチャンスがありますし、明日のスコア次第では上位にジャンプアップする可能性も多いにあります。最後まで耐えてアプローチを寄せ、パットを沈め続けて欲しいですね。