ロングアイアンよりはやさしいという理由でショートウッドやユーティリティをキャディバッグに入れてはいるものの、実はそれらウッド類が苦手なゴルファーは多い。ギアライター高梨祥明はその理由は「深重心にやられているのかもしれない」という。一体どういうこと?

いつの時代もキャディバッグに入っている
“ロフト”の組み合わせは同じ!?

10、15、18、21、24、28、32、36、40、44、50、53、56、4。ゴルファーがラウンドに携行するキャディバッグには、昔も今もだいたいこの数字(前後)のゴルフクラブが入っている。もちろん、この数字は“ロフト角”である。ロフト10度前後のドライバーとロフト4度前後のパターとの間を12本の異なるロフトのクラブで埋めていく。それがクラブセッティングの基本だ。ゴルフクラブがいかに進化しても、このロフトの組み合わせは100年以上変わっていない。変わったのは、ロフト18度〜50度のクラブが“何”であるかである。

わかりやすくいうと、18度〜32度がフェアウェイウッドなのか、ウッド型ユーティリティなのか、アイアン型ユーティリティなのか、ロングアイアンなのか。あるいはロフト21度が3番アイアンなのか、5番アイアンなのか? ということである。

画像: ティアップせずに地面から打てるロフトは果たして何度までか?(写真/三木宗徳)

ティアップせずに地面から打てるロフトは果たして何度までか?(写真/三木宗徳)

キャディバッグに入っているロフトのバリエーションは変わっていないが、そのロフトがどんなカテゴリーのクラブに割り当てられているか。あるいは何番とされているかが、昔と今ではだいぶ違ってきているわけである。

とくにロフト18度〜28度のいわゆるロングショット系クラブの選び方は、年々選択肢が広がり、ありがたくも悩ましいものになっている。誰もが必ず入れるドライバーとアイアンの最小ロフト番手(ロンゲストアイアン)との間をどういう基準で埋めていくのかが、一つの課題であるわけだ。

試しに、マイセットの18度から28度のクラブが現在どのような組み合わせになっているのかを書き出していただきたい。想定されるのは、次のようなものだろうか。

【1】18度 5W/21度 7w/24度 4UT/28度 5番アイアン
【2】18度 5W /21度 3UT/24度 4UT/28度 6番アイアン
【3】18度 2UT /21度 5番アイアン/24度 6番アイアン/28度 8番アイアン

選択肢が多様な現代ならば、このほかにも多くのセッティングパターンがあるだろう。では次に、その領域でフェアウェイから直接打てる! と思うロフトのクラブはどれだろうか? とくに18度の5Wや21度のユーティリティは、果たして下(地面)から打てているだろうか。ここの見極めがクラブセッティングでは最も重要なのである。

FWやUTは何ヤード飛ぶかではなく、何度なら上がるか? に関心を

打てているかいないかを見極める、一番わかりやすい例として3W(スプーン)のことをイメージしていただきたい。「地面からはちょっと厳しいが、ティアップすれば打てる!」という人もいれば、「地面からでも余裕で打てる!」 あるいは「ティアップしても打てる気がしない!」 など、意外にはっきりとそれぞれの打てる・打てないのジャッジができるのではないかと思う。これと同じように、18度から28度のクラブの打てる・打てないを個別に行っていただきたいのだ。

とくにティアップすれば打てそうだけど、地面からだと厳しい(上がらない/トップする)。そう感じるロフト帯のクラブに注目していただきたい。こう感じるクラブは、正しいキャリーを稼ぐための打ち出し角度が足りているか、足りていないかの分岐点にある場合が多いからだ。

ティアップすればなぜ打てる(上がる)のか。それはボールを宙に浮かしたことによってクラブをボールの下から打てるようになったからだ。簡単にいえばインパクトでロフトを増やして当てることが可能になる。これがティアップをする意味だ。お気に入りのドライバーもティアップなしの“直ドラ”では全然上がらず飛ばないのも、ロフトを増やしてインパクトできないから。ボールの手前にヘッドが下から入る空間がなければ、少ないロフトのクラブで高い打ち出し角度を得ることは難しいのである。

ゴルフクラブには“深重心”という設計的なお馴染みワードがあるが、これもお尻(ヘッド後部)を重たくすることでインパクトロフトを増やす効果を狙ったものだ。同じロフト角ならフェアウェイウッドが形状的に最も深重心にしやすく、続いてウッド型ユーティリティ、アイアン型ユーティリティ、ロングアイアンとソール幅が狭いものになるごとに重心は浅くなっていく。つまり、インパクトでロフトが増える効果がこの順で小さくなるということになるのだ。

画像: ロフト表記が同じでもFW、UT、アイアン型UTでは重心深度は異なる(写真/有原裕晶)

ロフト表記が同じでもFW、UT、アイアン型UTでは重心深度は異なる(写真/有原裕晶)

そこで、マイセットの“見極め”である。ティアップすれば打てそうだけど、地面からだと厳しい(上がらない/トップする)と感じるロフトのクラブは、どんな形状のものだろうか? 

お使いのクラブがショートウッドであれば、二通りのケースが考えられる。

【1】 正しく当たっているのにロフトが足りないために打ち出しが低くなっている。
→ この場合はパワー的にそのロフト領域で想定弾道を描くための初速が不足しているケースが考えられる。地面から打つならばひと番手ロフトを大きくしたい。

【2】 ヘッドがボールの手前に落ちやすい(大きくダフることが多い)。
→ この場合は、“深重心”にやられているケースが多い。ティアップしていない地面からのショットの場合、インパクトロフトが大きくなるようにアッパーに振ってしまうと、自動的に手前をダフることになる。同じロフトでもウッド型UTなど少し重心が浅いモデルの方が、ダフらずに打てる可能性が高い。

今回のポイントは、FWやUTなどの地面からティアップなしで打つクラブの場合、ドライバーでは有効な“深重心”設計がアダになる場合もある、ということだ。素直に深重心効果を発揮させるように振ってしまうと、ダフリ気味に入ってしまうことが多く、肝心の打ち出しアップに繋がらなくなるケースが多い。世の中にはショートウッドが苦手! ユーティリティが苦手!というゴルファーは多いが、その理由がどうもダフリやすい、トップしやすいという場合は、深重心にやられている可能性が高いといえるだろう。

10、15、18、21、24、28、32、36、40、44、50、53、56、4。今も昔から変わらないロフトの組み合わせだが、15、18、21については、深重心という進化が使いにくいゆえに、いまだ地面から打つには難しい番手のままだといえる。地面から打つクラブは、ロフトと初速が打ち出し角度を決める。個人的にはロフト23度からが地面から打つクラブのスタートではないかと考えるが、いかがだろうか。

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