プレーファストに縛られ過ぎてゴルフの楽しみの一つが失われていないか
複数人のゴルファーと組を作ってラウンドするのが基本的なゴルフのプレーの仕方。そのため同伴競技者とのコミュニケーションもゴルフの楽しみの一つ……なのだが、「最近、他人のプレーに関心を持たないゴルファーが多い気がします」というのは日本と名のつく試合にも複数回出場経験のある関東在住のトップアマA氏。
「同伴競技者のプレーであったりボールの行方を追う、といったことは大切なことだと思っています。もちろん、全ショットそうするのは難しいと思いますが、(同伴競技者の)スウィングやショットに対して『〇〇だったね』『××だったね』と語り合って、プレーを共有するのが“一緒に回る”っていうことなんじゃないかなと考えているんです」(トップアマA氏、以下同)
とくにA氏は、同じ組に異なるティからプレーするゴルファーがいた場合に、“プレーヤーズディスタンス”が遠くなり過ぎていて、コミュニケーションの機会が失われがちだと感じるという。
「たとえばレギュラーティより50ヤード前のレディースティからプレーする女性ゴルファーがいたとしましょう。そんなとき、女性ゴルファーが一人でレディースティまで歩き、待機している、というケースをよく見かけます。するとレギュラーティでプレーするほかのゴルファーたちとのやりとりが少なくなってしまいますよね」
もちろん、プレーファストのためにそういった対応を取る、またはそうするように先輩ゴルファーから教えられた、指示されたという人も少なくないだろう。ただ、一人になってしまった人はほかのゴルファーとの時間も共有できなくなってしまうし、こういった行為がプレー時間の短縮につながるのかにも疑問が残るとA氏。
「レディースティの場合なら、まず歩いて先に行かせること自体おかしいですし、万が一があってはいけないから安全な場所に着くまでティショットが打てませんよね。だから結局待ちの時間が発生します。また、同伴競技者のショットや弾道をしっかりと見届けることによってロストボールの可能性を低くできますが、前方からでは弾道を追うのも難しいですしね。結果的にプレー時間短縮にはつながっていないんじゃないかなと思います」
そして、レギュラーティから打ち終わったゴルファーたちがカートに乗ってレディースティに着いたころにはその女性はもう打ち終わっていて、「『今どこに打ったの?』だったり、打ったらすぐ『はい乗って!』みたいな対応。これって寂しいことです」とA氏。
もちろん、A氏もプレーファストの精神を軽視しているわけでは当然ない。
「前の組との間隔が空いちゃった、とか僕以外3人初心者です、みたいな状況であれば、前後の組のスムーズな進行のためにも早く打とう、となります。でもそうそうプレーが遅くならない、ある程度プレーの腕があるゴルファーでも、前述のような対応をしてしまう。プレーファストという概念にとらわれ過ぎて、コースで同じ時間を共有するというゴルフの楽しみの一つが失われているんじゃないでしょうか」
A氏がこのような内容をSNS上に投稿したところ、とくに女性ゴルファーから多くの共感が得られたという。
「男性からは『気を付けます』というようなコメントが届いて、女性からは『そうなんですよ。よくぞ言ってくれました』という感じで反響が思いのほか多くて。みなさん思うところがあるんだなと」
ソーシャルディスタンスを保つことが一般的となっているが、広々とした屋外のゴルフ場ではそれを保つことはさほど難しいことではない。だからこそ何十ヤードも“プレーヤーズディスタンス”を離すことなく、遠すぎず近すぎない、適度な距離感をキープしてプレーしてみてはどうだろう。
仲間と過ごす時間、それ自体を楽しむというゴルフの良さを、もう一度認識できるかもしれない。