昨年ツアールーキーながら全英女子オープン制覇という快挙を成し遂げ、賞金女王争いも繰り広げた渋野日向子。そんな彼女をサポートしているコーチ・青木翔がレッスンの中で大事にしているひとつが「失敗をたくさんさせること」。だが、そこにデメリットはないのだろうか? 自身の著書「打ち方は教えない」から教えてもらおう。
負け癖メンタルの回避方法
教える立場の人に、失敗をたくさんさせてくださいと伝えると、失敗が続くと負け癖がついたり、「どうせやっても上手くならない」と卑屈になったりしないのか、と聞かれることがあります。
ずばり、失敗が続いて負け癖がつく人はいます。
では失敗して負け癖がつかない人との差はなにか。それは準備してきた時間や練習量の差です。
練習を熱心にやっている選手は、失敗が続いても「このぉ、クッソォ!!!」と激しく悔しがるものの、それが失敗の原因分析や次への取り組みにつながるため、モチベーションが低くなることはありません。
卑屈になってしまう選手は、そこまで本気になれてはいません。「悔しい」と口にするかもしれませんが、言っているだけの場合がほとんどです。言葉に出しているほど、気持ちはやられていないでしょう。
そんなときに、練習するよう促したり上達するよう技術的な答えを与えても、成長にはつながりません。
負け癖くんは、放っておくに限ります。どこかでスイッチが入るのを待つんです。
それが遅いか早いかは個人差があります。遅いと親や上司は焦ってしまい、手を差し伸べたり、叱責したりしますが、それではスイッチは入りません。
上達したい気持ちがあれば負け癖はつかない
遅くてもそれはタイミング次第。その子の人生で、どこでスイッチが入るかはコントロールできません。
プロを目指している選手が、スイッチが入るのが遅くてプロゴルファーになれなかったとしても、次にどこかで「あの時スイッチが入らなかったからダメだったんだ」と思ってアクセルを踏めるようになる。
その経験が大事なのです。
周りがあの手この手でサポートして、たとえプロゴルファーになれたとしても、スイッチを入れられない状態では、その道で活躍するのは難しいでしょう。
ゴルフをやっているからといって、プロゴルファーとして成功することが絶対の幸せではないし、もしプロゴルファーになれたとしてもモチベーションの維持は難しく、悲壮感に満ちた人生になってしまいます。
少し放っておいたときスイッチが入る予兆がなけれは、ちよと頑張ればすぐにクリアできる課題を出すのもよいでしょう。
そうして小さな成功体験で負け癖を徐々に上書きしていくと、意外とは訳スイッチが入ることもあります。
「打ち方は教えない。」(ゴルフダイジェスト社)より