今季海外メジャー2戦目「ANAインスピレーション」の初日、渋野日向子は4バーディ2ボギーの2アンダーでプレーし19位タイでホールアウト。今季初の予選通過、そして上位争いへ好スタートを切った。その要因はなんだったのか? プロゴルファー・中村修がレポート。

3番ホールで起こった「奇跡的」な出来事

「やっと今年アンダーが出た(笑)。パー5で3つバーディが取れたことだったり、3パットをしなかったり。パーオン率は上がったかわかりませんが微妙な距離が入っていくれたことも今までとは違いますし、ショットに関してもそうですし。少しづつ良くなってきているんじゃないのかなと、このラウンドで思いました」(渋野日向子)

ラウンド終了後の会見で今日のラウンドを終えて感想を聞くとこう答えてくれた渋野日向子選手。首位が6アンダーとそれほど伸ばしていないことを見ても2アンダー「70」でのプレーは上々の滑り出しと言えるのではないでしょうか。では、振り返ってみましょう。

画像: 今季海外メジャー2戦目「ANAインスピレーション」の初日を2アンダー19位タイで終えた渋野日向子(写真/getty images)

今季海外メジャー2戦目「ANAインスピレーション」の初日を2アンダー19位タイで終えた渋野日向子(写真/getty images)

今大会は、2サムで午前と午後に分かれてスタートするスタイルで現地時間8時36分にメジャー1勝のハンナ・グリーンと同組で10番からスタートしました。10番385ヤード、パー4の出だしのティショットは完璧なドライバーショットでフェアウェイをとらえ、2打目も1ピンにつける見事な滑り出し。それをしっかりと決めバーディ発進します。

と、パッティングする姿に違和感を覚えます。よく見るとグリップの握り方を、左手が下にくるクロスハンドに変えていました。ストロークもスムーズで慣れている感じを受けたので、昨日今日の付け焼刃ではない様子です。終了後の会見でそのことを聞かれると全英女子オープンに予選落ちした翌日にはすでに試していたそうですが、ジュニア時代を含めて遊び以外では今まで一度も18ホールプレーしたことはないようです。

「全英の土日からクロスハンドで練習していました。速いグリーンになると今までパンチが入る強気なパットだったのでこの速さのグリーンだとなかなかタッチを合わせにくいのかなと思って練習していました。やっぱり長い距離のパットが距離感が合っていて個人的にはマッチしているのかな、ラインも出しやすい印象もあったので良かったかなと思います」(渋野日向子)

そして、11番のパー5でも3打目を1メートル強に寄せて連続バーディとし、表情も自然と明るくなります。しかし12番でわずかにフェアウェイを左に外すと、ボールが見つかりません。ボールを探す時間のルールが5分から3分に変わっているので見ていてハラハラしましたが、同組のハンナ・グリーンが見つけてくれてホッとしました。

すっぽりと埋まっている状態からショートアイアンを選んで打ちますが、打った直後に本人も苦笑していましたが数ヤード先までしか飛ばせませんでした。その後の3打目はしっかりピン方向に打ち、少しオーバーはしましたがボギーで切り抜けました。ここをボギーで切り抜けたことが、出だしの流れを切らさずにプレーできたポイントだったと思います。

「まず見つかったことが奇跡なくらい埋まっていました。ハンナが見つけてくれたことに感謝しながら、これはなにで打っても抜けないと思い、思い切り振って脱出することに精一杯でした。それでも3打目がちゃんと乗ってくれたことがよかった。ボギーにはなりましたが最悪のダブルボギーを叩くことはなかったので、2打目は仕方ないですが3打目はよかったと思います」

ダブルボギーを叩いてしまえば、せっかくのバーディ・バーディ発進の貯金を一気に吐き出すところでした。見つからないのが当たり前というくらいの状況から、同伴者が親切に探してくれて見つかったこと。3打目を上手く打ってボギーで切り抜けたこと。これは非常に大きかったと思います。

結局そのあとは18番までパーを重ね前半は1アンダーでターン。後半はバーディとボギーがひとつずつで迎えた最終の9番パー5で3打目をベタピンにつけバーディフィニッシュ。久しぶりの「しぶこスマイル」でホールアウトしました。

自分で考えて「グリーンが速かろうが遅かろうがピンを攻める練習をした」

グリーンのスピードは12フィート、フェアウェイもグリーンも硬く、ティショットはランも出る印象です。フェアウェイバンカー、樹木、池の配置のせいもあり狙っていけるエリアは広くはないようです。ラフも短くは見えますが長さが揃っていてすっぽり埋まると脱出するのに苦労します。メジャーにふさわしい難しいセッティングです。

ただ、その中で今日の渋野選手は実に簡単そうにプレーしているように見えました。それだけショット、パットが復調してきたことなんだと思います。その初日のスタッツは以下のようなものでした。

フェアウェイキープ率:57.14%
ドライバー平均飛距離:251.00ヤード
パーオン率:66.66%
パット数:28

バンカーにも一度もつかまっていませんし、データからグリーンを外した際にパーを取り、チャンスについたホールでバーディを決めるという噛み合ったことがお分かりいただけるのではないでしょうか。全英女子オープンが終了後に渡米しどんなことを意識して練習していたのでしょうか。

「アメリカに来てからの2週間は、青木(翔)コーチが(全英終了後に)日本に帰国していたので自分で考えながら練習するという、スウィングに関しても自分で頭を使いながら自分の意識で練習するというのをやってきていました。その点がよかったのかわからないですが、自分の意識と同じように振れていた回数が増えていた。悪いショットが続くということがなかったので、全英までと違う所かなと思いました」

そして2週間の間にどんなところを意識していたのかを聞いてみると、

「攻めの気持ちを忘れていた部分があったのか、この2週間はグリーンが速かろうが遅かろうがピンを狙っていく練習をして、しっかり振り切ることを考えて。青木コーチに動画を送ったのも3回くらいしかないので、あとは自分で考えながら、キャディの(定由)早織さんと距離感を覚えて、攻めのゴルフの練習をしていました」(渋野日向子)

渋野日向子選手のプレースタイルであるピンを攻めるゴルフは、ショットの調子が悪ければスコアになりません。ただ、そのことで攻め方をセーフティに変えると、今度は本来の振り切るスウィングができなくなってしまう。

そこに自分で気がつき、ピンを攻める練習をしてきたことで、狙い方やアドレス、体の動きに変化が生まれてきたようです。やってきたことが試合で実践できたこと、結果を残せたことで自信もさらに深まったはず。

明日以降のプレーが楽しみですが、明日は現地時間午後スタートの酷暑の中でのプレーになります。体調に気をつけながら、渋野選手らしいプレーを期待します。

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