信頼関係はどう作る?
選手に自分自身のことを話してもらうためには、信頼関係を築く必要があります。それがないと、どんなにすばらしい言葉も技術も、彼らに届くことはありません。
信頼関係を築くうえで大前提にあるのは、コーチと選手の立場は対等だということです。
コーチは知識があるからエライわけでもないし、年上だから絶対というわけでもない。コーチと選手は、同じ目標に向かっていくパートナーだという意識を持ってください。これがなければ、どんなことをしても信頼関係を築くことはできないでしょう。
そのうえで僕は選手に信頼をしてもらうため、まず自分の話をするようにしています。内客はどんなことでもいいのですが、僕が選手から得たい情報を、まずは自分から話すのです。
例えば、相手の気持ちの部分を引き出したいのなら「今はこんなことな考えているよ」とか、「今日はどんな気分」だとか、そんなことを伝えます。
そのうち「僕はね」という具合で、乗ってきてくれるでしょう。
信頼関係ができ、ゴルフの話を密にするようになったとき、僕が知りたいのは彼らの失敗です。どんな失敗をなぜやってしまったのか。その時、自分はどう思ったのかを知ることで、成長のきっかけを見つけることができます。
失敗の話が信頼関係を強くする
でも、「失敗してもいいよ」と言っても、選手からはなかなか言い出しにくいもの。だから事あるごとに、僕は自分の失敗を話すようにしています。
「聞いてよ。今朝さ、ボーっとしてたらスマホ落として画面バキバキ!」
こんな日常の失敗談を、ちょっと楽しそうにひょうきんに話すのです。
するとこの人も失敗をするのかと、関係性の壁が取り払われ、さらに失敗は人に話してもいいんだということまで伝えられます。ポイントは努めて明るく伝えること。
大人になるほど、失敗を披露するのは難しいものです。尊敬をされたいと思っている上司や親御さんほど、なかなか言い出しにくいかもしれません。
でも信頼関係を築き、かつ失敗をしやすくする環境を作るにはこれが一番。まずは子どもや部下の前で、「こんなことをやっちゃってさ」と、小さな失敗から話をしてみてください。
その失敗を笑ってくれれば、近いうちに彼らからも失敗の話が出てくるようになるでしょう。
「打ち方は教えない。」(ゴルフダイジェスト社)より