昨年ツアールーキーながら全英女子オープン制覇という快挙を成し遂げ、賞金女王争いも繰り広げた渋野日向子。そんな彼女をサポートし、渋野を“しぶこ”と呼ぶコーチ・青木翔はレッスン中の失敗を大事にしているが、それを引き出すためには選手との信頼関係を築くべきだという。自身の著書「打ち方は教えない」から青木流・信頼関係の作り方を教えてもらおう!

信頼関係はどう作る?

選手に自分自身のことを話してもらうためには、信頼関係を築く必要があります。それがないと、どんなにすばらしい言葉も技術も、彼らに届くことはありません。

信頼関係を築くうえで大前提にあるのは、コーチと選手の立場は対等だということです。

コーチは知識があるからエライわけでもないし、年上だから絶対というわけでもない。コーチと選手は、同じ目標に向かっていくパートナーだという意識を持ってください。これがなければ、どんなことをしても信頼関係を築くことはできないでしょう。

画像: 選手との信頼関係を築くには「選手から得たい情報を自分から話す」と青木はいう(写真は2019年のNEC軽井沢72ゴルフトーナメント 撮影/大澤進二)

選手との信頼関係を築くには「選手から得たい情報を自分から話す」と青木はいう(写真は2019年のNEC軽井沢72ゴルフトーナメント 撮影/大澤進二)

そのうえで僕は選手に信頼をしてもらうため、まず自分の話をするようにしています。内客はどんなことでもいいのですが、僕が選手から得たい情報を、まずは自分から話すのです。

例えば、相手の気持ちの部分を引き出したいのなら「今はこんなことな考えているよ」とか、「今日はどんな気分」だとか、そんなことを伝えます。

そのうち「僕はね」という具合で、乗ってきてくれるでしょう。

信頼関係ができ、ゴルフの話を密にするようになったとき、僕が知りたいのは彼らの失敗です。どんな失敗をなぜやってしまったのか。その時、自分はどう思ったのかを知ることで、成長のきっかけを見つけることができます。

失敗の話が信頼関係を強くする

でも、「失敗してもいいよ」と言っても、選手からはなかなか言い出しにくいもの。だから事あるごとに、僕は自分の失敗を話すようにしています。

「聞いてよ。今朝さ、ボーっとしてたらスマホ落として画面バキバキ!」

こんな日常の失敗談を、ちょっと楽しそうにひょうきんに話すのです。

するとこの人も失敗をするのかと、関係性の壁が取り払われ、さらに失敗は人に話してもいいんだということまで伝えられます。ポイントは努めて明るく伝えること。

大人になるほど、失敗を披露するのは難しいものです。尊敬をされたいと思っている上司や親御さんほど、なかなか言い出しにくいかもしれません。

でも信頼関係を築き、かつ失敗をしやすくする環境を作るにはこれが一番。まずは子どもや部下の前で、「こんなことをやっちゃってさ」と、小さな失敗から話をしてみてください。

その失敗を笑ってくれれば、近いうちに彼らからも失敗の話が出てくるようになるでしょう。

「打ち方は教えない。」(ゴルフダイジェスト社)より

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